菅又 徳孝 院長の独自取材記事
マンモエクサス菅又クリニック
(さいたま市北区/宮原駅)
最終更新日:2023/09/15

JR高崎線の宮原駅から徒歩約10分。「医療法人三徳会 マンモエクサス菅又クリニック」の菅又徳孝院長は、開業以前は埼玉県立がんセンターで乳がんの手術を数多く執刀していた外科医師。これまで術後経過の長い乳がん患者と接する中で「こうなる前にもっと早く見つけてあげられないか」という患者にも出会ってきた。院名の「マンモエクサス」は、乳腺の疾患に関し一人の医師としてできることを表した造語で、ここに検査・診断できる場所があるということを患者にアピールし、早めに来院してほしいという願いを込めたもの。また、診断の精度・管理に対して、自分を含めたスタッフ全員の意識を高めたいという思いも含んでいるという。今年、開業20周年を迎える菅又院長にさまざまな話を聞いた。
(取材日2021年9月9日)
早期発見のため気軽に検査できる場所をつくるべく開業
院名の「マンモエクサス」とはどのような意味ですか?

「マンモエクサス」とは私が考えた造語で、ラテン語で「乳房」を意味する「マンモ」と、乳腺疾患の発見、診断プロセスである触診・エックス線・超音波といった検査、説明、切除を表す「エクサス」を組み合わせた言葉です。開院当初は「乳腺外科」を標榜できませんでした。でも院名からなんとか乳腺の外来であることを伝えたかった。それで、開業医が一人でできることは何かと考えた末にたどり着いたのが「エクサス」の言葉に込めた正確で早い検査・診断プロセスです。実は院名に乳腺にまつわる言葉を入れるべきかどうか、ある院長に聞いてみたんです。すると「絶対そうすべき。普段から医師やスタッフの意識や検査に対する精度や管理が違ってくるから」というアドバイスをいただきました。
「乳腺の外来」であることをアピールしたクリニックを開業したかったのは、なぜですか?
開業前に埼玉県立がんセンターの乳腺外科に勤務していた時、不安を抱いてやってくる患者さんに正確な診断をもっと早くしてあげることはできないか、気軽に乳がん検診の医療機関にたどり着けるようにできないか、進行がんになる前に早期発見をしてあげることはできないか、こんな思いを持っていました。大学病院では検査を数日に分けたり、結果が出るまでに時間がかかったりします。ですから、検査からある程度の結論までを1日で完了できるようなスピーディーな診断と発見に特化したクリニックをつくり、院名にしっかり入れてアピールすることで来院してもらいたいと思ったのです。今では、検査から説明までのプロセスを約1時間で行えるよう努めています。この場所に開業したのはがんセンターが近いためです。紹介や、検査技師のアドバイスも受けやすいですから。超音波やマンモグラフィは検査技師の力が必要不可欠なんです。
今年で開業20周年ですね。

まず20年間やってこられたことに感謝しています。特に看護職員は開業当時からずっと一緒に働いてくれている方ばかり。みんなのおかげで20周年を迎えることができました。開業当時、患者さんが来院しやすい環境、スタッフが働きやすくここで働いて良かったと思える環境、自分がここで一生懸命やってきて良かったと思えるようにしようと思い、ここまできました。勤務する上で気をつけたのは、他人同士で働くのだから感情的に怒らず話し合うこと。患者さんに対しては、今日来院してくださった動機を推し量り、期待に応えたいと思いました。今後もこのスタンスを変えず、丁寧に取り組んでいきたいと思います。
患者負担を少なく、検査と説明をスピーディーに
乳がん検診で気をつけていることはありますか?

検査に何時間もかかったり、何回も来院する必要があると、足が遠のくことにつながってしまいます。当院では問診・触診・マンモグラフィから結果の説明まで、すべてを1時間程度で終えられるように体制を整えています。時折、他院で検診を受けられた方が、説明がよく理解できなかったという理由で当院をあらためて受診される方がいらっしゃいます。でもそれだと、時間も医療費ももったいないですよね。当院ではそういったことがないよう、モニター画面を見ながら、患者さんのペースに合わせてわかりやすく説明することを心がけています。また、日本人は大規模な病院を好む傾向があるせいか、クリニックで追加の検査を受けるなら大規模な病院で受診しようと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、当院では患者さんとの信頼関係を構築し、引き続き精密検査を受けていただけるよう促しています。
どんな患者さんが来院されていますか?
自治体や会社の乳がん検診で要精密検査と診断された方や、自分で症状に気づいた方が多いです。年代は20代〜70代までと幅広く来院されています。乳がんは閉経を迎える40歳〜50歳の方の罹患が多く、一番検査を受けてほしい年齢ですが、子育てや親の介護、家族の世話などで忙しい時期。自分のことなど考えていられなかったり、何となく自覚しても「今は病気になっていられない」という思いから、検査を避ける方もいらっしゃいます。50代になると周りの環境が落ち着くせいか、ゆっくり検査を受ける意識が高まるようです。お友達と午前中に検査を受け、そのままランチに出かけるという計画を立てる主婦の方もいます。そういったお楽しみと一緒に来ていただくのもいいですよね。以前、幅広い女性に人気のタレントさんが乳がんを告白されましたが、その頃からお若い方の検診への関心が高まりました。今では若い方の来院も増えており、うれしく思っています。
患者さんとの印象深いやりとりはありますか?

がんセンター勤務の頃、40代前半の患者さんが大きなしこりに気づき来院されました。がんセンターでは手術の前日にしこりの場所に丸をつけるのですが、患者さんの胸に大きな丸が3個つきました。それを見た私は、人気のネズミのキャラクターの名前を挙げて「かわいい」と申し上げたのです。すると、その患者さんはにこっと笑い「吹っ切れた」とおっしゃって、その後の治療も前向きに受けてくださいました。考え方は人それぞれですから今後も同じ対応で同じ結果になるとは思いませんが、小さなことが励みになることもあると思いました。
地域と協力し受診率の向上をめざす
先生が医師をめざした理由をお聞かせください。

病気の人たちの役に立ちたいと思ったからです。家族が生まれつき心臓病を患っており入退院を繰り返し、自宅では往診の先生に診てもらう、そんな姿を見ていたことが大きいですね。外科へ進んだのは大学で学ぶうち、いざというときに命を救うのに役立つのは外科と思ったからです。乳がんにかかると約10年間は補助療法が必要で、3人に1人は再発するともいわれています。術後の経過観察の期間が長いので、当然患者さんとのお付き合いも長くなります。私にとっては、この長いお付き合いもやりがいの一つです。
ゴルフと盆栽と囲碁がお好きだとか。
そうですね。ゴルフでは一度、ホールインワンを出したことがあります。とてもうれしかったのですが、ホールインワンを出すといろいろとお祝いをしなくてはなりません。幸いホールインワン保険に入っていまして、病気でもケガでも事故でもなく保険を使うなんて面白いね、とみんなで笑いましたよ。盆栽は夏の猛暑で弱ってしまい、今は必死にリカバリー中です。囲碁は、石に生き死にがあり、先を見通して準備・計画するというところが手術にも通じるところがあると感じています。最近は新型コロナウイルスの影響で大会が中止になったりして対戦ができないので、もっぱらAI囲碁です。これがまた難しいんですよ。
最後に今後の展望とメッセージをお願いします。

乳がん検診の受診率を上げたいですね。痛み、しこりなど症状がないからと検診を受けない人は多いのですが、しこりがなければがんの可能性がないということではありません。一般の方や医師が触れて見つけられるしこりは2センチ以上。一方で早期発見のためには1センチ以下で見つける必要があります。そのためにも、触診とマンモグラフィを併用した検査を受けてもらえるよう、大宮地区の保健師や医師らと協力して情報発信を強化していきます。とりわけ出産の高齢化は乳がんリスクを上げるともいわれているので、40歳を過ぎたら乳がん検診を受けてください。検診に痛いイメージを持っていらっしゃる方、緊張していると痛みを感じる方もいらっしゃるようですが、そういった患者さんの気持ちを検査技師はよく心得ています。きちんと説明しリラックスできるよう努めていますから、胸の痛みや違和感に気づいたらぜひ来院してください。
自由診療費用の目安
自由診療とは問診+超音波検査(US):7020円、問診+マンモグラフィ(MG):9350円、問診+MG+US:1万3200円
※上記、場合により保険診療も対応可能です。詳しくはクリニックにお問い合わせください。
※さいたま市乳がん検診(問診+MG)では、負担金1000円で受診が可能。