中村 華 先生の独自取材記事
医療法人 天神総合クリニック
(福岡市中央区/天神南駅)
最終更新日:2025/12/23
2003年に中村賢二郎院長が開業した「天神総合クリニック」は、内科から外科まで幅広く専門的な診療に取り組んでいる。2025年には、賢二郎院長の娘である中村華先生が加わり、婦人科を新設した。華先生は福岡大学卒業後、東京で7年間産婦人科医として研鑽を積んだ日本産科婦人科学会産婦人科専門医。健康診断と婦人科検診を同日に受けられるため利便性が高く、また福岡市プレコンセプションケア推進事業の連携クリニックとして取り組んでいることも同院の特徴だ。「もっと気軽に婦人科に来てほしい」と、メディアを通じた発信にも力を注いでいる。「自分の体にもっと興味を持ってほしい」という女性への思いについて、華先生が穏やかに語ってくれた。
(取材日2025年11月14日)
父が開業した総合クリニックに新風吹き込む
こちらのクリニックで、新たに婦人科を立ち上げられたそうですね。

ええ。もともと私は東京で診療を行っていました。その頃に、家族で将来を話し合った際、消化器外科が専門の父が開業したクリニックの後継ぎの話が出てきたのです。父は年齢が上がってきたのでクリニックをどうするのか考える必要があり、私は産婦人科の専門性を習得して自分で診療ができるようになったタイミングでした。そうした点を踏まえながら話し合いを続けた結果、私は父が開業したクリニックに来て、2025年1月に新たに婦人科を立ち上げることに決まったのです。東京での豊富な臨床経験を生かし、当院に新たな風を吹き込んでいきたいです。
医師を志し、産婦人科を専門に選ばれた理由を教えてください。
小さい頃から医師として働く父の姿を見て育ち、クリニックにも遊びに行っていたので、医師という存在が身近でした。ですから、職業を考える時「私も医者にチャレンジしたい」と自然に思っていましたね。産婦人科を選んだのは、研修医として勤めた先の産婦人科が理想的な環境だと感じたからです。「若い方からお年寄りまで、全世代の女性を診れる」という包括的な診療スタイルに心惹かれました。学生時代はホルモンなどの領域が苦手でしたが、産婦人科医がかっこいいと思ったのでチャレンジすることに(笑)。それから産婦人科医として7年以上、東京で研鑽を積んできました。
内科や外科などに加えて婦人科があることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?

健康診断で婦人科がん検診を同日に受けられることがメリットでしょう。一般的な健診施設では別の医療施設を紹介されることが多く、患者さんにとっては手間になってしまいます。一方、当院なら1回の受診で全部の検査を受けていただけますね。また「おなかがなんとなく不調」という主訴で内科を受診した方から、婦人科疾患が見つかることも少なくありません。もしもCTで偶然卵巣の腫れが発見できた場合、すぐに院内で追加のエコー検査を実施できる体制は強みでしょう。さらに、外科領域に精通している父は乳腺の診療経験も豊富なため、乳腺エコーも含めたトータルな女性の健康管理につなげられるのです。総合病院まで行かなくても、気軽に来ることができる「何でも屋さん」として、天神の女性たちの健康を支えていきたいです。
安全性に配慮し妊娠前からの健康管理で出産をサポート
プレコンセプションケアを重視されているそうですね。

そうですね。福岡市のプレコンセプションケア推進事業の連携クリニックとしても活動しています。その一環として、30歳女性向けのAMH検査(卵巣予備能検査)にも対応していますね。さらに妊娠前からBMIや血圧、甲状腺ホルモンなどをチェックすることで、妊娠・出産の安全性に配慮しています。今後は質の高い骨密度検査機器を用いて、若い女性の骨折リスクのチェックもできるようにしたいですね。妊娠がわかって受診した際に、妊娠以外のことでいろいろと問題が出てくるよりは、事前に検診を受けてきちんと健康をコントロールし、より安全な妊娠・出産につなげてほしいという思いから、さまざまな取り組みに尽力しています。家族性高コレステロール血症の方など放置されがちな疾患も、妊娠前にしっかり管理することが大切でしょう。
子宮頸がん検診やワクチン接種の重要性についてお聞かせください。
子宮頸がんは20代でも発症するがんであり、勤務医時代に、この病気により若い方がつらい思いをしている姿をたくさん見てきました。だからこそ早期発見・治療の重要性を強く感じています。子宮頸がんの原因とされるHPVは90%の方がかかるウイルスで、そのうちの80%は自然免疫でどうにかなりやすいものの、10%の人は症状が悪化しやすいというものです。誰でもかかる可能性があるからこそ、ワクチン接種は必要だと考えています。そうして、子宮頸がんと戦わなくても良い環境に変えていきたいのです。当院では1年に1回の子宮頸がん検診とエコー検査を推奨していて、異形成が見つかれば3~4ヵ月に1回の検査でフォローをします。子宮頸がんの方でも、今は妊娠・出産をめざせる手術もありますので、まずは気軽に相談しに来てください。今後も検診で「子宮頸がん検診を受けませんか」とお声をかけるなど、地道な啓発活動を続けます。
診療の際に心がけていることや工夫されていることはありますか?

不必要に触らない、痛みを抑えて素早く、を徹底しています。腟を開く際は手ではなく機械を用いて、スムーズに入れるようにするなど、具体的な配慮を大事にしていますね。ほかにも、診察台に上がっている状態は患者さんにとって、担当医師が女性でも嫌なものでしょうから、なるべく顔を合わせないようにしつつ、声がけは安心してもらえるようにしています。さらに、わかりやすく説明したり、不安をあおらないようにしたりすることも大切にしています。説明の際はいろんな病気を診てきた経験を生かし、良性の卵巣腫瘍のこともよくあるという話をしつつ、なぜ検査をするかを丁寧にご説明するなど、知識を伝えながらも安心していただけるように心がけています。
婦人科受診のハードルを下げ、健康意識を高めていく
婦人科受診の啓発活動にも取り組まれているのですね。

メディアなどを活用して、婦人科受診の重要性の発信に注力しています。産婦人科を専門とする女性医師が表に出て啓発していくことが大事だと思い、活動していますね。婦人科はまだまだ話題に取り上げにくい分野でしょう。ですが、女性の健康意識向上のためには必要な活動です。東京で診療をしていた際に思ったのは、自身のことをしっかりと考えた上で積極的に婦人科を受診している女性が、東京は特に多いということ。福岡でも東京のように、もっと気軽に受診できる環境をつくれたらと思っていますね。そのためにも、受診ハードルを低くする啓発活動が重要だと思っています。
今後、どのような診療を展開していきたいとお考えですか?
婦人科の受診のハードルを低くして、一人でも多くの女性、特に若い女性にもっと来ていただきたいです。また、今後は骨粗しょう症検査など、妊娠前の健康チェックをさらに充実する予定です。カルシウム不足やビタミンD不足の現代人は骨折リスクが高いので、若い女性もチェックが必要ですからね。さらに、甲状腺ホルモンや家族性高コレステロール血症など、放置されがちな疾患も妊娠前からしっかり管理したいです。総合的な診療ができる「何でも屋さん」として、内科も外科も婦人科も、気軽に受診できる環境づくりを進めていきます。婦人科があることで内科受診のついでに相談できたり、逆に婦人科から内科へつなげたり。院内コンサルで各科が綿密に連携し、総合的に女性の健康を守れる体制を強化していきたいです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

自分の体にもっと興味を持っていただきたいです。恥ずかしいと思わずに、自分の体を大切に思って、ちゃんと検査を受けてください。何もなければ良いことですし、何かあった場合はきちんと治療につなげられます。一度受診すれば、次も来やすくなるでしょう。また、かかりつけ医を持つことも重要ですからね。ちょっとした異常、例えばおりもの異常や不正出血があったらすぐに相談することができますよ。他にも出血はやっぱり異常なこと、生理は痛いものではないということも浸透したらと思っています。かゆみも我慢するものではありません。ただ、婦人科のことを教えてもらう機会はほとんどありませんから、正しく理解している女性はほとんどいないでしょう。だからこそ、相談できる場所があることを知って、自分の健康に向き合っていただけたらうれしいです。

