中内 祥文 副院長の独自取材記事
中内眼科
(富田林市/富田林駅)
最終更新日:2025/01/08
近鉄長野阪線富田林駅および富田林西口駅から徒歩7分。伝統的な家屋が並ぶ住宅街にたたずむ「中内眼科」は、1976年に院長の中内正海先生が開業した歴史ある眼科医院だ。2023年6月より息子の中内祥文先生が副院長として加わった。祥文副院長は日本循環器学会循環器専門医および日本内科学会総合内科専門医の資格を持つ内科のエキスパートであることから、新たに内科の診療を始めるとともに、訪問診療にも力を入れる。「父が地域の人々を支えてきたように、私も専門領域を生かし、訪問診療で地域に貢献していきたいです」と話す祥文副院長に、訪問診療にかける思いなどをじっくりと聞いた。
(取材日2024年10月15日)
循環器専門医による患者に寄り添う訪問診療をスタート
院名は「中内眼科」ですが、現在は内科の診療も行っているそうですね。
当院は、中内正海院長が眼科として開業以来、約半世紀にわたり地域医療に貢献してまいりました。2023年6月に息子である私が副院長に就任しました。私は循環器専門医でもあるので、新たに内科を開設し、特に訪問診療に力を入れています。現在は、院長が引き続き眼科の診療を行っており、「中内眼科」という院名はそのまま残しています。
これまでの先生のご経歴を教えてください。
私は循環器専門医として、近畿大学病院を始めとしたさまざまな総合病院で心臓カテーテル手術やペースメーカーの植え込み手術、重症心不全治療といった急性期医療に携わってきました。そんな中で次第に、病院で行う先進の医療は素晴らしいけど、患者さんやご家族が本来望まれている医療とは違うのではないかという思いを抱くようになり、病院の現場を思いきって離れ、訪問診療に活動の場を変えました。前職の医療法人光輪会は、訪問診療を専門とするクリニックです。そこでは多くの施設患者さんと個人宅の患者さんを担当し、約7年間勤務しました。もともと全身を総合的に診られる医師になりたかったということもあり、循環器内科をめざしました。祖父が往診にも熱心に取り組み、患者さんに困り事があればすぐ駆けつける姿を見てきたので、その影響もあるのだと思います。
訪問診療へと舵を切るきっかけがあれば教えてください。
ある高齢の患者さんの終末期医療を担当した際、ご家族の希望もあり、ご本人にとってもつらい延命治療をやめる決断を下しました。患者さんは最期までごはんをおいしく食べることができ、笑ってご家族に看取られ、ご家族から「先生に診ていただいて良かったです」と、喜ばれたことが強く印象に残っています。ちょうど、患者さんやご家族にとって本当に良い医療とは何なのかを考えていた時だったので、その出来事が訪問診療を志す一つのきっかけになりました。患者さんやご家族のご希望をしっかりと聞き、一人ひとりに寄り添った医療を今後も提供していきたいですね。
訪問診療とは、医療面だけでなく生活全般を支えること
訪問診療や診療内容について教えてください。
当院の訪問診療を受けていただいている患者さんはご自宅を定期的に訪問し、診療や検査、薬の処方などを行います。患者さんに緊急事態が発生した際にも、お電話をいただけたら、その時々に応じて必要な指示や対応をさせていただきます。また、救急車を呼ぶ必要があるのかどうか、休診日や時間外でどこに相談をしたらいいかお困りの場合もぜひお電話ください。患者さんご自身はもちろん、ご家族も判断に困り不安になられた時、夜間や休日でも対応し、必要に応じて動ける体制になっていることが訪問診療の最大のメリットだと思います。また、超音波検査装置や心電計といった先進のポータブル検査機器も充実しているので、外来診療と遜色ない医療の提供が可能です。内科診療は完全予約制で、アレルギー性鼻炎や高血圧症、睡眠時無呼吸症候群といった比較的変化の少ない疾患に関してはオンライン診療でも対応できるようにしています。
どのような方が訪問診療を利用されていますか?
がんや心不全、肺気腫、認知症などさまざまな方が利用されており、看取りも含めて対応しています。訪問診療と聞くと、がんの末期など、かなり重症な人でないと受けられないイメージがあると思いますが、足腰が悪いなどの身体的な理由や認知症があり介助がないと通院が難しい方、心不全で息切れや呼吸困難がある方など、通院が困難な方もご利用いただいています。例えば、遠方の病院への通院回数を減らし、訪問診療を利用する方もいらっしゃいます。「病院に行く負担がなくなった」「もっとはやく訪問診療をお願いしたら良かった」というお声をいただくことも多いので、患者さんやご家族の負担を減らすために訪問診療を利用するのも一つの手段だと考えていたただきたいですね。「誰かが頑張りすぎないこと」そのために私たちがいるので、まずは気軽にご相談ください。
こちらの訪問診療の特徴は何ですか?
病院は専門が細分化されており、気になる症状がある場合は複数の診療科にまたがっての受診が余儀なくされることが多く、通院困難な患者さんやそのご家族の負担は大きいかと思います。当院は私が循環器と総合内科を専門とする医師であり、認知症や褥瘡などを含めた皮膚疾患まで対応して包括的に診察ができるので、患者さんの身体的負担が少ないかと思います。一人の医師がすべての症状を把握していますので、安心して診療を受けていただけるのではないでしょうか。また、退院時カンファレンスにも積極的に参加し、退院前にケアマネジャーとご家族に詳しく症状や自宅での過ごし方の希望を伺い、自宅に帰った際の不安が少しでも解消されるように努めています。現在入院中という方は、退院支援をしてくれる病院関係者の方や担当ケアマネジャーに相談されるのも良いかと思います。
患者さんと接する際に心がけられていることはありますか?
私は、訪問診療とは単に病気を診るだけではなく、患者さんやご家族の生活全般を診るものだと考えています。「毎日何を食べているのか」「トイレはどうしているのか」「今、困っていることはないか」といった普段の暮らしに少し踏み込んだお話もさせてもらいながら、何かあればケアマネジャーに連絡を取るなどして、患者さんたちが抱える不安やトラブルを軽減できるよう、一歩先回りしたケアや声かけを行うよう努めています。また、訪問時は必ず私と看護師がチームで伺うようにしています。医師には聞きにくいことでも、看護師なら気軽に話せる方もいらっしゃいますからね。帯同する看護師は親しみやすい人柄なので、医師とはまた違う視点で患者さんとご家族をサポートさせていただけると思います。
患者とその家族の心のケアも大切にしたい
患者さんだけでなく、ご家族のケアも大切にされているそうですね。
当院の訪問診療は在宅患者さんを中心に診ています。それは患者さんはもちろん、ご家族とのコミュニケーションも大切にしたいからなんです。ご自宅に伺うことで距離も近くなるのでご相談にも乗りやすく、何よりご家族も納得された上で治療を進めることができます。医師と患者とその家族の三者の考えにずれが生じず、同じ方向を見て協力し合える関係は、ご家族にとって大きな支えになると思います。また、ご家族にはできるだけこまめにこの先の見通しをご説明するようにしています。先の読めない不安感は精神的負担も身体的負担も大きいもの。今後はこういう流れになるだろうということをご家族が知ることで、不安が解消され、前向きに今後のことを考えていただけると思うのです。
訪問診療のやりがいを感じるのはどんな時ですか?
よく、「訪問診療は24時間365日の対応になり大変なのでは?」と聞かれますが、訪問診療はそれが当たり前ですし、その覚悟がなければできません。訪問診療に携わることは大変かもしれませんが、患者さんやご家族に「診ていただいて良かった」「ありがとうございました」とお手紙やお言葉を頂戴することもあり、それが何よりの労いで、励みになっています。そうした心のつながりをつくり、覚悟と誠意を持って診療することを理想に掲げ診療をしています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
住み慣れたご自宅での患者さんの療養生活をサポートしたい。その思いで訪問診療を行っています。患者さんやご家族に寄り添った医療の提供を一番に考えながら、スタッフや医療機関とも連携して、安心して自宅で過ごしていただけるお手伝いをしていきたいと思っています。今では訪問診療は一般化しつつありますが、まだまだ不安なことも多いと思います。まずは気軽にお問い合わせください。