日高 久光 院長、福永 亮大 先生の独自取材記事
日高大腸肛門クリニック
(久留米市/西鉄久留米駅)
最終更新日:2025/06/13

黄色と白の建物が目印の「日高大腸肛門クリニック」。春になると満開の桜を楽しめる吹き抜けの中庭も人気という同院は、久留米大学病院や高野会 日高病院などで多くの消化器疾患と向き合ってきた日高久光院長が2001年に開院したクリニックだ。病床も備えた同院には、各専門分野を持つ医師、看護師、診療放射線技師、薬剤師、管理栄養士など、総勢41人のスタッフが在籍。消化器と肛門疾患を専門に、内視鏡検査をはじめ、超音波検査、ヘリカルCT、大腸肛門機能検査などの各種検査も実施している。また以前在籍していた血管外科を専門とする福永亮大(ふくなが・りょうた)先生が復職し、下肢静脈瘤の治療も再開した。そこで今回、日高院長と福永先生にクリニックの歴史を振り返ってもらいながら、診療内容についても詳しく聞いた。
(取材日2025年5月1日)
消化器・肛門疾患に特化した専門クリニック
2001年に消化器と肛門疾患専門のクリニックを開院された経緯からお聞かせいただけますか。

【日高院長】開院に至った背景には、胃・大腸と肛門を専門にキャリアを重ねてきたことが大きく影響しています。医師になって50年たちますので、これまで九州がんセンターや久留米大学病院の高度救命救急センターなど、さまざまな施設で多くの患者さんを担当しました。ただ、時代とともに日本の医療は以前よりも細分化が進み、大腸であれば消化器外科、胃腸科というように、診療科が細かく分かれています。そのような中、私は大腸と肛門疾患を数多く診てきましたので、消化器と肛門を専門に診ることができる医療機関をつくりたいと考え、2001年の開院に至りました。また、他の診療科に比べると肛門に特化したクリニックは少ないので、困っている方々のお役に立てればという想いが強かったですね。
病床も備えていることも地域の皆さんにとって安心感につながっているでしょうね。
【日高院長】やはり入院施設がないと提供できる医療が限られてきますからね。そこは念頭に置いて開院しました。今は有床診療所は非常に少なくなりましたが、当院は現在19床稼働。維持するにあたり大変なこともありますが、自分のやりたい医療、そして地域の皆さまにとって安心いただける環境を持続できるように日々取り組んでいます。肛門の症状だけ診て、大腸がんを見逃すといったことがないよう、関連性のある疾患も見逃さない環境をしっかり整えているのが当院の強み。そこは、患者さんの安心感にもつながっていると思います。
こちらにはどのような年代の方が多く来院されますか?

【日高院長】小児から高齢者まで幅広く、男女差もほとんどありません。例えば、小さなお子さんの場合は便秘で切れ痔になり、小児科の紹介で来られるケースも多いです。思春期になると、潰瘍性大腸炎、ストレスが原因の過敏性腸症候群で学校に通えないといったお悩みも少なくありません。成人になると健診で胃や大腸にポリープが見つかった方や胃痛や腹痛を訴えて来られる方、高齢者では便秘での来院が圧倒的に多く、それに伴う肛門疾患、高齢者に多い肛門から直腸が飛び出す直腸脱でお悩みの方も。いずれにしても、まずしっかりとお話を聞き、症状の改善や不安の軽減に努めます。
血管外科を専門とする医師が下肢静脈瘤の治療にも対応
福永先生は以前もこちらで診療されていたそうですね。

【福永先生】血管外科が専門でしたので、こちらで10年近く下肢静脈瘤などの治療も行っていました。日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医の資格も持っていますので、診療は肛門疾患と大腸など消化器疾患も行っています。今回の復職にあたり、以前行っていた下肢静脈瘤の治療も再開しました。この病気は女性のほうが多く、男性も調理師や美容師といった立ち仕事をしている方に多く見られます。手術は局所麻酔1ヵ所でできる低侵襲の処置になりますので、放置せずに早めの受診をお勧めしています。私が血管外科の分野を選択したのは、手術で改善が図れるという点です。かなり細かい作業になりますが、一刻を争うような状態の患者さんを救うことができたならその達成感は非常に大きく、患者さんやご家族の喜びが直接伝わってくるのです。他の症状で来られて、血管外科分野の疾患を見つけたケースもありますので、視野の広い診療が私の持ち味です。
病気の早期発見をめざす各種検査にも注力されているそうですね。
【日高院長】ええ、内視鏡検査にも力を入れています。胃の内視鏡では嘔吐反射が強い方のために鼻からの経鼻内視鏡検査も実施。口からの内視鏡検査は、「苦しい」「痛い」というネガティブなイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、以前に比べるとずいぶんと楽に受けられるようになりました。眠ったような状態で受けるために鎮静剤を用いますので、苦痛をほとんど感じずに受けていただけると思います。市町村の健診で便潜血検査に引っかかった方や疾患の疑いがある場合はもちろんですが、症状がなくとも40歳以上の方は大腸内視鏡検査を一度受けられることをお勧めしています。大腸ポリープが見つかったとしても、基本的にはその場で切除し日帰りが可能ですし、大腸がんの予防にもつながりますからね。内視鏡検査以外にも超音波検査、ヘリカルCT、大腸肛門機能検査など、症状に合わせて各検査を行っています。
痔にはいくつかタイプがあると伺いました。

【日高院長】いわゆる3大疾患として挙げられるのが、切れ痔、イボ痔、痔ろう。この3つが痔の大部分を占めますね。いずれの場合も便秘や下痢は大敵。そういった意味でも、肛門疾患だけでなく大腸にも特化した診療を行っているのはメリットが多いと思います。以前に比べると痔で手術を行うことはずいぶんと少なくなりました。しかし、デリケートな部位ですので受診へのハードルが高く、我慢に我慢を重ねての受診となると、どうしても手術が避けられません。状態によっては日帰り手術も可能ですし、入院の場合も3日ほどで退院できることが多く、今は入院期間も短くて済むようになりました。
子どもの便秘や過敏性腸症候群の症状も気軽に相談を
看護師、診療放射線技師、管理栄養士など、多くのスタッフとの連携はどのように?

【日高院長】事務長が取りまとめてくれている部分が大きいですが、月1回のミーティングの実施、そして円滑に業務を進められるよう意見を出し合い、密な情報交換に努めています。また、必ず医師が常駐する体制を維持するために、非常勤も含めると医師は6人体制。予約制は行っておらず、その時の状況を見ながら午前中は診療と内視鏡検査を分担して行い、午後は手術も実施。患者さんがいつ来院されてもすぐに対応できる体制を整えています。経験豊富な医師ばかりですので、難症例でも意見を持ち寄って診療方針を決められるのも特徴です。術後の経過についても複数の目で診ていきますので、その点も当院ならではと言えるでしょう。
【福永先生】患者さんが何を一番に求めているのかというのを知るためには、スタッフとの情報共有や連携が不可欠で、チーム医療を実践する上で特に重要です。今後もしっかり取り組んでいきたいと思います。
遠方から来られる患者さんも多いそうですね。
【福永先生】クリニックではありますが、その規模に対して遠方からお越しになる方が多く、佐賀や大分など県外から来られる方もいらっしゃいます。それは、これまでに築いてきたクリニックの歴史につながっているのだと思います。有床クリニックであるため、提供できる医療の幅が広いのも地域以外の方も来てくださる要因の一つになっているのかもしれませんね。もともとは外科の医師なので執刀数も多いですし、これまでの経験を生かせる環境が整っているのは、私自身ありがたいことだと思っています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

【福永先生】肛門疾患はどうしても受診をためらいがちというイメージがあると思いますが、早期であれば薬で改善を図れるものも多くあります。専門ならではの安心感と満足度を提供できる自信がありますので、ぜひ早めの受診を心がけてください。
【日高院長】大腸と肛門疾患の早期発見・早期治療に取り組む一方で、年齢を問わず便秘の治療にも注力しています。お子さんの便秘や過敏性腸症候群に関する親御さんからのご相談も多くなりました。症状が慢性化する前の受診が大切です。「このようなことくらいで」と躊躇せず、気になることがあれば些細なことであっても気軽にご相談にいらしてください。