武井 駿 院長の独自取材記事
武井医院
(世田谷区/千歳船橋駅)
最終更新日:2024/10/15
小田急線の千歳船橋駅からバスで約10分。住宅街にたたずむ「武井医院」は、内科や小児科、アレルギー科などの総合的な診療を行い約20年間近隣住民の健康を守ってきた。2023年7月に院長へ就任した武井駿先生は、前院長から引き継いだ「患者との心のつながり」を大切にした診療を心がけている。院内は患者からもらったという手紙や手製のおもちゃが飾られ、アットホームな雰囲気だ。穏やかで話しやすい雰囲気の武井院長は、休診日には講習会などに赴き、学びを日々の診療に生かせるよう研鑽を積んでいる。「特別なことはなにもしていない」と謙虚に語る武井院長だが、言葉の端々から患者への真摯な想いが垣間見えた。地域のファミリードクターとして、患者目線での診療を行うクリニックの等身大の姿と今後の目標を武井院長に聞いた。
(取材日2024年7月17日)
前院長から引き継いだ「患者目線の診療」で地域に貢献
ご家族の代からのクリニックとのことですが、街の様子にも変化は感じますか?
だいぶ人が増えたのではないかと思います。僕が子どもの頃は駐車場や空き地が多かったのですが、今はマンションが随分増えました。住宅街にしては人の流れが激しい土地で、転出入など人の入れ替わりも頻繁です。ずっと通われていた患者さんが転勤で街を離れたり、最近引っ越してきたという方が来院されたりしますね。もちろん、ずっとこの辺りに住んでいて通い続けてくださる患者さんもいるのですが、比較的人の流動性は高いエリアではないかと思います。子どものいる働き盛りの世代が多い土地ではありますが、患者さんの年齢層は0歳から90歳代まで幅広いです。年代によって来院される患者さんの訴えもさまざまですので、患者さん一人ひとりと向き合って適切な治療が行えるよう心がけています。
「患者との心のつながりを大切にした診療」がモットーだと伺いました。
「患者さんとの心のつながりを大切にした診療」「患者さんの立場に立った診療」というのは、開業以来一貫して変わらない当院のモットーです。直接言葉にして伝えられてきたわけではありませんが、親である前院長の診療に対する姿勢や想いを間近で見てきて、僕自身にも自然と備わった感覚だと思っています。患者さんは体に不調を抱えて、不安な気持ちで来院するわけですから、温かく迎えて接するよう心がけています。不快な気持ちや不安を感じてほしくありませんし、体調だけでなく心も満たされた状態で帰っていただきたいです。「武井医院に来て良かった」と思っていただけたらうれしいですね。
先生が医師を志したのには、やはり前院長の影響が大きいのでしょうか。
前院長は仕事としてだけでなく、ライフワークとしても診療に携わっていました。患者さんと向き合い真剣に診療を行うと同時に、一人ひとりとの会話を楽しみ地域の方々を大切する人でした。そんな親の姿を見て育ってきたのは大きかったと思います。具体的に進路を決めたのは高校生になってからでしたが、幼い頃から医師になりいずれ当院を継ごうとは考えていました。人に何かを直接的に与えられて、相手に喜んでもらえる仕事はすてきだなと思っていましたね。他の道に進もうと迷ったことはありませんでした。
患者との丁寧な対話を通して、必要な医療を届けたい
診療する上で心がけていることを教えてください。
患者さんとのコミュニケーションになるべく時間をかけるよう心がけています。例えば診療の際は、可能な限り自分で待合室まで患者さんを呼びに行くようにしています。呼びに行った際に患者さんが歩いている姿を見て、いつもどおりか、いつもと違いがあればどういったところが違うか、推察するところから始めるようにしていますね。当院は、問診表を使っていません。問診表は効率的かもしれませんが、書き忘れが出てしまう恐れがありますし、問診の段階から直接顔を見て進めたほうが言い忘れのリスクが少なくなると考えています。ですので、患者さん一人ひとりから直接話を聞き、それに対して堀り下げていく診療方法を取っています。その分1人あたりの診療時間は長くなってしまうのですが、機械的になりたくない、患者さんが発する些細なサインも見逃したくないという気持ちが大きいです。
先生が院長に就任されて変化したことはありますか?
発熱者専用の待合スペースをつくったり、電子カルテを導入したり、細かな変化はありますね。大きなところでいうと、予約制度を導入したことでしょうか。当院はもともと予約制ではありませんでした。病気は突然なるものですから、「いつでも来て大丈夫ですよ」というメッセージを患者さんに発信したいという理由があったんです。しかし待ち時間が長くなりすぎるという現実的な問題もあり、2023年から順番予約制を導入しました。予約制にすることで患者さんが来づらくなってしまうのではないかと迷った部分もあったのですが、順番予約制にすれば、ある程度は「いつ来ても大丈夫」という従来のメッセージを守りつつ、利便性も図れるのではと考えました。幸いなことに、多くの患者さんから好意的な声をいただいています。特にご高齢の患者さんですと機械が苦手なこともありますので、そういった場合はスタッフがサポートしています。
今後は訪問診療も行っていくと伺いました。
そうですね。ずっと通われていた患者さんが来院できなくなったとしても、責任を持って診療を続けることがクリニックの役割だと思っています。訪問診療を行うにはさまざまな手続きが必要なため、実際の導入までは一定の時間がかかってしまうのですが、早々に行いたいと考えています。現在のところ、2024年7月末より開始予定です。訪問診療だけに限らず、今後も患者さんが求めていることを提供していきたいですね。何を求めているかを知るには、やはり普段から患者さんと話して、患者さんの目線に立って診療を行うことが大切です。当院は総合的に診療していますから、患者さんの症状ごとに他の診療科につなげることもできるのですが、僕自身が対応できる範囲を増やしていけば、それが最終的に患者さんのためになるのではと考えています。地域のファミリードクターでありたいので、専門領域にとらわれず診療していきたいです。
初心を忘れず、患者のために行動できるクリニックへ
温かな雰囲気のある内装ですね。患者さんからのお手紙が飾られているなど、親しみやすい印象を受けます。
内装は前院長の時からほとんど変えていません。お子さん連れの来院も多いので、キャラクターグッズや絵本を置いたり、内装に明るい色を使ったり、通いやすい雰囲気になるよう配慮しています。患者さんとの距離は比較的近いのではないかと思います。畑をされている患者さんから、野菜のお裾分けをいただいたりするんですよ。そういった交流はすてきだと思いますし、患者さんの気持ちがうれしいですね。当院には4人のスタッフがいるのですが、全員前院長の時から働いてくれている人たちですので、患者さんとの仲も良好で、きめ細かなサポートをしてくれます。温かみのあるクリニックにしたいと考えているので、これからも地域の皆さんとの交流を続けていきたいです。
お忙しい毎日ですが、休日は何をしてリフレッシュされていますか。
実は、休診日は他の医療機関で訪問診療や救急科外来で勤務したり、講習会に参加したりしているんです。最近は産業医学について学んでいます。保育園の嘱託医としても勤務しているのですが、子どもの無邪気さに癒やされていますね。まだまだ学ぶことがたくさんありますし、学んだことを当院の診療に生かしたいと考えています。1日オフというのは月に2日ほどですが、趣味のゴルフや楽器演奏を楽しんだり、何もない日はお酒が好きなので、飲みながらのんびり過ごしています。
今後の目標と読者へのメッセージをお願いします。
これから先も初心を忘れず、患者さんのことを考え患者さんのために行動できるクリニックでありたいです。そのためにも、患者さんのお話を丁寧に聞き、症状の改善や病気の早期発見に役立てるよう努めたいと考えています。とにかく当たり前のことを当たり前に行っていき、「武井医院があれば安心」という患者さんの声を増やしていけるよう頑張りたいですね。これまでは基幹病院の総合診療科で働いており、救急医療から終末期医療に携わりつつ、さまざまな病気を診てきました。今後は地域医療に少しでも貢献したいので、不安な症状があった時や身体の調子が悪い時は、いつでも何でも相談していただけたらと思います。