鈴村 栄久 院長の独自取材記事
鈴村耳鼻咽喉科
(四日市市/近鉄四日市駅)
最終更新日:2026/08/31
四日市駅から徒歩7分。先代院長が開業し、半世紀以上にわたり地域の耳・鼻・喉の健康を見守ってきた「鈴村耳鼻咽喉科」。1999年に義父である先代からクリニックを継承した鈴村栄久院長は、倉庫だったスペースも含めて院内を全面改修し、明るく開放的な空間へと一新させた。「患者さんに少しでも明るい気持ちにほしい」と穏やかに語るその言葉に、優しい人柄がにじむ。先代から受け継いだ丁寧に診るという姿勢を礎に、一人ひとりと納得いくまで向き合う診療を長年貫いてきた鈴村院長に、対話を重視する診療スタイルや疾患の早期発見への思いなどについて聞いた。
(取材日2026年7月28日)
幼い頃からの夢を胸に、半世紀続く医院を継承
まずはクリニックのこれまでの歩みについてお聞かせください。

当院はもともと、妻の父である先代院長が昭和40年代にこの地で開業した耳鼻咽喉科です。先代とは約10年間一緒に診療にあたり、1999年9月に私が継承しました。手術が好きだったので、開業医になるとそれができなくなるという葛藤はありましたが、先代が築いてきた歴史と患者さんをしっかり受け継ごうと覚悟を決めました。診療は、最初から最後まですべて院長である自分の責任ですから、その重みは常に感じています。継承にあたっては、倉庫だったスペースも含めて院内を改修し、広々とした空間に生まれ変わらせました。待合室にパステルカラーのソファーを取り入れたのは、暗い気分でいらっしゃる患者さんに少しでも明るい気持ちになってほしいという思いからです。
先生が耳鼻咽喉科の医師になられた経緯を教えてください。
医師を志した背景には、幼少期に体験した2つの出来事がありました。1つは小学校低学年の時に高熱を出して、近所の内科にかかった時のことです。診察の際、先生の聴診する手が温かくて、すごく安心したのを覚えています。もう1つは、工作のために割り箸を削っていたら、カミソリで左手中指を深く切ってしまった時のことです。大量に出血し、母とタクシーで病院へ向かう道中は不安でいっぱいでした。ですが、夜間に縫合してくれた先生がとても優しくて、丁寧に処置してくださったのです。あの時の安心感が、自分が医師をめざすようになったきっかけですね。また、子どもの頃から工作など手先を使う作業が好きで、将来は手術ができる外科系の分野に進みたいと考えていました。耳鼻咽喉科を選んだのは、風邪のような身近な症状から重大な疾患まで守備範囲がとても広く、耳・鼻・喉・甲状腺とそれぞれに奥深さがある点に惹かれたからです。
この地域や来院される患者さんについて教えてください。

この辺りは昔からお住まいの方が多い一方で、転勤による人の入れ替わりも多い地域です。患者さんは健康や医療に対する知識が豊富な方が多く、「どうしてこうなったのか」と詳しい原因を知りたいとおみえになることもしばしばです。来院される年齢層は幅広く、午前中はご高齢の方が中心で、午後は働き盛りの世代やお子さんが増えます。ご家族ぐるみで通ってくださる方もいらっしゃいますね。ご高齢の患者さんの場合は、受診されたご病気以外にも健康全般のことやご家族のことなどをお話しされることもありますので、そうしたことにもしっかり耳を傾けるようにしています。
「必ず原因がある」。問診と検査で見過ごさない診療
診療にあたって大切にされていることは何でしょうか。

先代院長から学んだことで今も一番大切にしているのは、「徹底して丁寧に患者さんを診る」という姿勢です。自分では丁寧にやっているつもりでも、先代はもっと丁寧でした。その背中を見てきたからこそ、時間をかけてでも丁寧にやらなければという思いが根づいています。中でも意識しているのは、私と患者さんのお互いが納得いくまで話し、説明することです。開業医の場合、病院のように診断がついた状態で患者さんが来られるわけではなく、最初からさまざまな情報を集めて一から診ていく必要がありますので、どうしてもお話をじっくり伺うことになります。一人ひとりの患者さんと真摯に向き合い、納得のいく医療を届けたいという思いが私の診療の根幹にあります。
患者さんからのお話を深掘りすることで、気づくこともあるのでしょうか。
はい。たいへん多いです。お話をじっくり伺っていると、ご本人が関係ないと思っていたことが実は症状の原因であることはよくあります。例えば、どこに行っても治らない長引く咳でお悩みの方に生活習慣を丁寧にお聞きすると、食べてすぐ横になる習慣や暴飲暴食が続いていることから、逆流性食道炎が咳の原因とわかるケースもあります。風邪だろうと思い込んでいても、背景に別の原因が隠れていることがあるのです。検査ももちろん大切ですが、やはり問診でしっかりお話を聞くことが欠かせません。症状には必ず原因がありますから、諦めずに探っていく姿勢を大事にしています。
問診に加えて、検査の面で力を入れていることはありますか。

検査の面では、超音波検査と内視鏡検査に力を入れています。超音波検査は、甲状腺の疾患などを見つける上で欠かせない検査です。内視鏡も近頃新しい機種に更新しました。喉の奥を詳しく確認できるので、がんをはじめとする重大な疾患をクリニックの段階で発見できることが望めます。私が常に意識しているのは、がんを見落とさないこと。喉の違和感や長引く咳の裏に、咽頭がんや甲状腺の病気が隠れている可能性はゼロではありません。風邪かなと思った段階でも耳鼻咽喉科を選択肢に入れていただきたいですし、最初に他の診療科を受診されて改善しない場合にも、気軽にご相談いただければと思います。
地域の安心を次の世代へ
スタッフの皆さんについてお聞かせください。

当院には、開業した当初から勤めてくれているスタッフをはじめ、長年働いてくれているベテランがそろっています。私のほうから細かく指示を出さなくても、それぞれが状況を見て自主的に動いてくれるので、本当によくやってくれているなと常々感謝しています。長年一緒に働いてきたぶん、私の考えを言葉にしなくても自然と伝わるところがありますし、患者さんへの対応も安心して任せることができます。私自身は一人ひとりの診察にじっくり時間をかけますので、その間にスタッフが周りの患者さんの様子に気を配ってくれていることは、とても大きな力になっています。頼もしいチームだと思っています。
これからのクリニックについてお聞かせください。
そろそろ次の世代へ継承していくことを視野に入れ始めています。今はまだその準備を進めている段階ですが、先代の時代から数えると半世紀以上、この場所で地域の方々と向き合い続けてきたクリニックです。私自身が先代から継承したときにも、長年かけて築いてきた患者さんとの関係をそのまま受け継ぐことができました。同じように、次の世代にもこの場所で積み重ねてきたものをしっかりとつないでいきたいと考えています。ここにクリニックがあり続けること自体が、地域の皆さんにとっての安心につながるのではないかと思いますので、「丁寧に診る」という診療の軸を守りながら、その日に向けて今できることを一つずつ進めていきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

耳・鼻・喉に気になる症状があれば、ぜひ耳鼻咽喉科も選択肢の一つに加えてみてください。「痛いことをされるのでは」と身構える方もいらっしゃるかもしれませんが、そのイメージだけで足が遠のいてしまうのはもったいないことです。専門の医師だからこそ気づけることがありますので、構えずにいらしていただければと思います。そしてもう一つお伝えしたいのは、診察の際には何でも話してほしいということです。直接は言いづらいと感じる方もいらっしゃるようですが、ご自身では関係ないと思っている何げない一言の中に、症状を読み解くヒントが隠れていることがあります。気になること、困っていること、どんな些細なことでも構いませんので、何でもお話しいただける場所でありたいと思っています。

