長井 巌 院長の独自取材記事
長井医院 整形外科・内科
(松山市/松山市駅)
最終更新日:2021/10/12

松山市駅から車で約5分、12台分の駐車場を備える「長井医院 整形外科・内科」。約70年にわたり、地域に根差した診療を行ってきた同院で、3代目院長を務めるのは長井巌先生だ。自治医科大学を卒業後、へき地での医療や地域の中核病院での救急医療などを幅広く経験。医師としてのみならず、人として患者と真摯に向き合う姿勢を培ってきた。インタビューでは、診察時に心がけていることや印象に残る患者とのエピソード、同院での診療にかける思いについてなど、たっぷりと聞いた。
(取材日2019年8月21日)
患者の近くで医療を提供することが、自分自身の原点
開業から約70年という歴史ある医院ですね。

1950年に祖父が開業したのが始まりです。当時はこの辺りに医療機関がほとんどなく、お子さんからご年配の方まで、求めに応じてありとあらゆる診療を行っていたと聞いてます。私もこちらに里帰りした際、そんな祖父の様子を見ていたように思いますね。1984年に祖父から父に代替わりするのに伴い、当時小学生だった私も大阪からこちらにやって来ました。やがて私も医師になり、出身の自治医科大学が「医療の谷間に灯をともす」精神を大切にしていたこともあり、7年間へき地での診療を経験しました。その後、愛媛県立中央病院で救急診療に従事するなど、さまざまな経験を積みました。そして、自分の医療の原点ともいえる、患者さんのより近くで医療を提供したいという思いが募ってきました。当院がまさにそういった地域の医院ですし、父と一緒にやれる時間を大切にしたいと考えて2018年の秋に戻ってきました。
患者層や現在の診療内容について教えてください。
患者さんは近隣にお住まいのご年配の方が多いですね。また、小児の患者さんに対応していなかった時期もあったのですが、私が戻ってきてからは小児の整形外科診療にも対応していますので、少しずつお子さんも増えてきています。そのためご家族で通ってくださる方もいらっしゃいます。内科では風邪などの一般的な内科疾患や生活習慣病の診療など、さまざまな相談に対応しています。整形外科では手や足の痛みを訴えて来られる方や、私の専門分野である脊椎疾患の相談にいらっしゃる方も多いです。父が内科、私が整形外科として、二診制で診療を行っています。私はこれまで、どちらかというと整形外科を主体に研鑽を積んできましたが、内科的なこと、小児科的なことを父から学んで取り入れ、この地域の皆さんのお困りごとにはできる限りお応えしていきたいと思っています。
先生が整形外科の医師を志したのは、どういった思いからですか?

小学生の頃には祖父や父が医師であることを認識し、ぼんやりとではありますが、自分もそうなっていくのではないかと思っていました。父はいつも患者さんととても楽しそうに話をしていて、そんな姿がすてきだなと感じます。地域の皆さんに仲間のように受け入れていただいている感じがして、私もそのような医師をめざしています。整形外科を選択したのは、私自身大好きなスポーツに関連のある診療科だということです。また、研修医時代に出会った整形外科の恩師の存在も大きいですね。誰にでも分け隔てなく接する姿勢や、父のように患者さんとのコミュニケーションを大切にするところなどを尊敬していて、今でもお付き合いをさせていただいています。
へき地医療や救急医療の現場で多くのことを学ぶ
へき地医療など、これまでさまざまな経験を積まれてきたそうですね。

自然が豊かで人より動物が多いような田舎の診療所を7年ほど回りました。そんなところで「自分は整形外科の医師だから骨しか診ない」なんて言っていたら始まりません。医師としてどんなことにも対応していかなくてはなりませんから、本当にいろいろな経験をさせていただきました。印象深いのは、海のそばの伊方町瀬戸診療所で働いていた時のことです。高齢の患者さんから、朝5時に来いと言われたので行ってみると、「今から船に乗るぞ」と釣りに連れて行ってもらったのです。とても大きなハマチが釣れましたね。私が午前中の診療をしている間にその方がさばいてくださって、お昼ご飯においしくいただいたという思い出です(笑)。その後、2008年から約10年は愛媛県立中央病院に勤務。昼夜問わず救急車やヘリコプターで重症の患者さんが運ばれてくる中で、緊急患者さんの多数の整形外科手術にも携わりました。
こちらで患者さんと接する際に、大切にしていることや心がけていることはありますか?

患者さんが診察室に入ってくるときの歩き方や様子からよく見て、患者さんの状態を詳細に把握するようにしています。また、まずは自分からあいさつすることを心がけています。当院は私からすれば自分のフィールドですが、反対に知らない場所に入ってくる患者さんは不安だと思うからです。どうしていいかわからないのが当たり前ですので、まずはこちらからお声がけして、少しでも安心していただきたいと思っています。また、ある程度の診療行為が終わった後に「何か言い残したことはありますか?」と聞くようにしています。その際に患者さんの本音や言いたかったことなど、いろいろな話が出てくることもしばしばありますので、しっかり受け止めたいと思っています。
精度の高さにこだわった診断や患者の負担軽減に尽力
診療におけるこだわりや医師としてのやりがいを感じる瞬間はどのようなときですか?

病院に勤務していた頃は、MRIやCTなど、何かしらの検査機器で診断をつけていたわけですが、そういった環境とは異なる中で、いかに診断の精度を上げていくかということに力を注いでいます。そういった意味で、超音波検査をさまざまな場面で活用しています。手軽に検査ができ、患者さんと一緒に画像を見ながらお話しできることがメリットです。今後も診断の質は落としたくありませんので、超音波における精密な診断によりこだわっていきたいと考えています。それ以外でも、できる限り患者さんの負担が少なくなるような診療スタイルを追求していきたいです。やりがいとしては、患者さんから良いお言葉をいただくのがやはりうれしいです。また、患者さんが自分のご家族と受診してくれた時は、その方との関係が築けたと思え、よりうれしく感じます。
休日はどのように過ごされていますか?
昔からスポーツをするのも観戦するのも好きで、学生時代は中学・高校・大学とサッカーに打ち込んでいました。ここ7年は愛媛マラソンに連続出場していて、現在も来春の大会に向けて夜中に走りこんだりしています。私自身、スポーツによるけがで挫折を経験したこともありますので、同じ状況の患者さんのお気持ちがよくわかります。例えば目の前にある大会を優先するか、長期的なスポーツ人生を見据えるのかなど、ご本人の思いを尊重しながらご相談に乗らせていただきたいと思っています。また、釣りも好きです。田舎の診療所で働いていた時に、地元の皆さんに教えていただいてとても楽しかったので続けているのです。現在は小学生の子どもと一緒に釣りに行くことが多いですね。
今後の展望や読者へのメッセージをお願いいたします。

院内に居宅介護支援事業所を設置しているほか、デイケアによるリハビリテーションにもある程度対応できるようにしているのですが、今後はさらに対応の幅を広げることをめざしています。当院でできる限りリハビリを行えるような体制を整え、患者さんの居場所がなくならないようにしたいと考えています。当院に通ってくださっている患者さんには、あらためて感謝の気持ちをお伝えしたいですね。内科や整形外科といったことに関わらず、どんなご相談にも乗らせていただきたいと思っていますので、遠慮せずになんでもお話しいただけたらうれしいです。