野呂 林太郎 副院長の独自取材記事
とがさきクリニック
(三郷市/八潮駅)
最終更新日:2026/07/13
半世紀を超えて三郷市の地域医療を支えてきた「とがさきクリニック」。1971年に耳鼻咽喉科として開業した同院は、2022年に内科・呼吸器内科・アレルギー科を加えてリニューアルオープンした。副院長の野呂林太郎先生は、日本医科大学卒業後、救命救急センターやがん専門病院など多様な現場で研鑽を積んだ呼吸器内科を専門とする医師だ。「私は呼吸器内科医である前に、内科医でありたい」と語るように、高度な専門性を持ちながら何でも相談できる医師としての懐の広さを兼ね備えている。白と木目を基調としたバリアフリーの院内には、穏やかで誠実な先生の人柄を映すような温かな空気が流れる。父の代から貫く対話中心の診療哲学や、耳鼻咽喉科と呼吸器内科の融合が生む独自の強みについて話を聞いた。
(取材日2026年6月17日)
耳鼻咽喉科医と呼吸器内科医が地域の健康を守る
まずは、クリニックの成り立ちについてお聞かせください。

1971年、父がこの三郷の地で耳鼻咽喉科を開業しました。三郷でも歴史あるクリニックの一つだと思います。自宅と扉一枚でつながるクリニックだったのですが、当時この地域には医師が少なかったようで、夜遅くまで急患対応をする父の姿を毎日のように見ていました。大変な仕事だなぁ……と子どもながらに感じていましたね。その父から「耳鼻咽喉科は耳と鼻と喉しか診られない。全身を診られる医者になってほしい」と言われたことが、内科の道へ進む大きなきっかけになりました。2022年にリニューアルし、父の耳鼻咽喉科に内科・呼吸器内科・アレルギー科を加えた現在の体制に。90歳の父は今も院長として、一人ひとりの患者さんと向き合う対話中心の診療を大切にしています。
現在の診療の土台となったご経験について教えてください。
1997年に日本医科大学を卒業後、大学の呼吸器内科に入局しました。父の耳鼻咽喉科と自然につながる領域として選んだ道です。まず救命救急センターや集中治療室で呼吸管理の重要性を実感し、続いて一般病院で「エックス線1枚でどこまでわかるか」という読影の指導を徹底的に受けました。この経験は今も生きていますね。同時に「呼吸器内科医はまず内科医であるべきだ」という教えのもと、幅広い内科診断学を身につけました。さらにがん専門病院では消化器がんを含む横断的な治療と緩和ケアを、呼吸器・感染症の専門病院では結核や良性肺疾患について学びました。自分で「画像オタク」と自認するほどCTやエックス線の読影が好きで、現在も週に1回大学病院で外来と研究を続けながら、当院での早期診断に力を注いでいます。
耳鼻咽喉科と呼吸器内科を一つのクリニックで診られることには、どのような強みがあるのでしょうか。

耳鼻咽喉科と呼吸器内科は「One Airway, One Disease」、つまり、一つの気道に沿って生じる疾患という考え方で深くつながっています。例えば咳一つ取っても、原因の半分以上は副鼻腔炎など鼻や喉の上気道にあり、残りは喘息をはじめとする気管支や肺の問題です。当院では父から学んだ鼻咽喉内視鏡の技術と、私自身のエックス線・CT読影の専門性を組み合わせ、鼻から肺まで一貫して原因を追究できる体制を取っています。大学病院では耳鼻咽喉科と呼吸器内科が別の科になるため「どちらが担当するか」という課題が生じがちですが、当院では一人の医師が通して診られるのが強みです。近隣の耳鼻咽喉科から咳の改善しない方をご紹介いただくこともあり、互いに連携しながら対応しています。
一般内科も呼吸器内科もどんな悩みも傾聴の姿勢で
呼吸器内科では、どのような疾患に対応されていますか。

喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、間質性肺炎といった慢性の呼吸器疾患を中心に幅広く対応しています。健診で胸部に異常な影を指摘された方の精密検査やがん検診にも注力しており、当院のCTを活用した早期発見をめざしています。睡眠時無呼吸症候群の患者さんも多く、睡眠時に装着する呼吸補助装置であるCPAPの管理も大切な診療の一つです。新型コロナウイルス感染症罹患後に続く諸症状についても専門の外来を設けており、周囲に理解されにくい症状だからこそ対話を大切にしながら診ています。息苦しさや胸の痛みといった症状は呼吸器だけでなく心臓の問題でも起こり得るため、循環器系も視野に入れた診察を心がけています。一般内科は地域の方が中心ですが、呼吸器内科には遠方から足を運んでくださる方もいらっしゃいます。
呼吸器疾患以外では、どのような相談が寄せられますか。
来院される年齢層はとても幅広く、父の耳鼻咽喉科では0歳のお子さんから対応しており、各種ワクチン接種も行っていて、90歳の方まで診ています。高血圧症や糖尿病、高脂血症といった生活習慣病の管理も大きな柱で、独自に作成したしおりを活用しながら生活習慣の改善についてもお伝えしています。また心療内科を受診することに抵抗を感じる方が、更年期障害やPMSなどの不調を抱えて相談に来られることも少なくありません。地域の心療内科と連携体制を整えつつ、内科の立場からお力になれるよう努めています。そのほか花粉症やアレルギー疾患、消化器の不調にも対応しており、必要に応じて連携病院での精密検査につなげています。
日々の診療で特に大切にされていることを教えてください。

一番大切にしているのは「傾聴」です。ただひたすら聞く。がんの医療に携わる中で学んだ姿勢でもあります。アドバイスを求められれば応えますが、まずは患者さんの気持ちに寄り添うことが大切だと考えています。認知行動療法の考え方も取り入れており、今の思いや暮らしのことを紙に書いて持参していただくこともあります。言葉にして吐き出すことで気持ちが楽になることもあると思います。睡眠障害に対しても生活リズムの見直しなど、薬に頼らないアプローチをまず提案しています。必要な場合は漢方も含めて適切に処方しますが、薬は必要最低限にとどめたいのが基本方針です。こうした対話中心の姿勢は、父が長年貫いてきた信念でもあり、私も受け継いでいきたいと思っています。
途切れない連携で届ける、かかりつけ医の安心を
専門的な検査や入院が必要になった場合はどのように対応されますか。

私自身が大学病院や地域の中核病院でも外来を持っており、いわば「二人主治医制」のような形で患者さんを支えています。クリニックでは行えない検査や入院が必要になった場合でも、私が勤務先の病院で引き続き主治医として関わりますので、担当医が変わる不安なく専門的な医療を受けていただけます。地域の中核病院とは、10年近い信頼関係を築いてきました。一人で抱え込まず、地域全体で患者さんを支えるという意識を大切にしており、紹介や逆紹介を活用しながら途切れのない医療の実現をめざしています。また当院では、外来診療と精緻な診断に特化し、訪問診療が必要な方には信頼できる専門の医師とシームレスに連携する体制を取っています。どの段階でも安心して治療を受けていただけるよう、この体制を続けていきます。
今後の展望をお聞かせいただけますか。
対話を大切にしたかかりつけ医として、シームレスな地域連携で皆さんの健康を支え続けていく、ということは大きな目標です。そのためにも、呼吸器内科の専門性を追求しながら、内科医として間口の広い診療を続けていきます。また、当院の日々の診療だけに閉じこもらないようにしないといけませんね。外部の医療機関で診療や研究を続けることで常に新しい知見にふれられますし、そこで得たものを当院の患者さんに還元できるのは大きなメリットだと感じています。
最後に、読者へメッセージをお願いいたします。

私は呼吸器内科を専門としていますが、その前にまず内科医だと思っています。咳や息苦しさはもちろん、生活習慣病やちょっとした体調の変化、気持ちの面で気になることまで、何か困ったことがあればまず相談していただきたいですね。対話を大切にしながらお話をしっかり伺い、不安を少しでも和らげられるよう努めています。当院は初診の方の予約は不要ですので、体調が優れないと感じたときに気軽に足を運んでください。必要があれば私が関わる大学病院や連携先の病院での検査・治療につなげることも可能です。父の代から50年以上にわたりこの地域を見守ってきたクリニックとして、これからも皆さんの健康のお役に立っていきたいと考えています。

