安藤 裕康 院長の独自取材記事
あ・ん・ど・うクリニック
(世田谷区/成城学園前駅)
最終更新日:2025/03/24

小田急線成城学園前駅から徒歩1分の場所にある「あ・ん・ど・うクリニック」。循環器内科を専門とし、生活習慣病の治療にも注力している安藤裕康院長は、大学病院などで培った質の高い診療で、2002年の開業以来、長く地域医療に貢献してきた。同院は働く世代の健康維持にも取り組んでおり、平日の診療受付は19時まで、土曜日も14時まで診療を行い、仕事帰りでも通院しやすい環境づくりに積極的だ。開業から20年以上がたち、患者との丁寧なコミュニケーションをより心がけるようになったという安藤院長に同院の診療方針などについて詳しく話を聞いた。
(取材日2024年9月5日)
働く世代でも通院しやすいクリニック
クリニックの名に込めた思いや、開業のいきさつについてお聞かせください。

ひらがなで「あ・ん・ど・う」と表記しているのは、当院にやわらかな印象を持ってもらえたらと思ったからなんです。どこか具合が悪いところがあっても、医療機関にかかるとなると尻込みしてしまう人は少なくありません。そんな患者さんの最初の一歩を後押しできる名前になればと、やわらかなイメージの表記にしてみました。内装についても、患者さんを緊張させることがないようリラックスできる色をベースにしています。僕は、大学病院などで心臓病の急性期医療に携わっておりましたが、そうした中で、再発を防ぐためには退院後の慢性期医療も大切だということを痛感していました。また、退院後の患者さんのケアにあたり、循環器内科の専門知識のある開業医の存在が欠かせないということもわかったんですね。知識があれば、症状を診ながら軌道修正していくことができますから。それで、そういうクリニックを自分で作ろうと思ったのが開業を決めたきっかけです。
循環器内科がご専門だそうですね。
当院は、循環器内科を中心に内科全般の疾患に対応しているので、風邪症状から、生活習慣病、片頭痛、花粉症などまで幅広く診療しています。循環器内科というのは、主に心臓や血管の病気を診る科で、例として不整脈などが挙げられます。胸に痛みなどがあってお越しになる方が多く、「これって心臓病ですか?」というご相談がありますね。循環器内科は僕の専門ですから、最も自信を持って診療している領域です。また、健診結果を持って相談にいらっしゃる方も多いです。診察の結果、詳しい検査や手術などが必要と考えられた場合には、速やかに高次医療機関と連携を取って対応しますので、その点についてもご安心ください。
どのような患者さんが多くいらしていますか。

仕事帰りに立ち寄りやすい立地だということもあり、働く世代の患者さんが多いことが当院の特徴かもしれません。見過ごされがちな現役世代の健康維持に何とか貢献したいという思いがある僕としては、大変やりがいを感じています。高齢者医療に力を入れる医療機関は近年増加傾向にありますが、今後の日本を支えていく現役世代の健康をしっかりとサポートしていかなければなりません。人生の先輩方をリスペクトするのは当然のこととして、働く世代のニーズに可能な限り応えていきたいというのが、開業以来変わらない僕の考えです。当院では、そのために診療受けつけを19時までとし、仕事帰りの方でも通院しやすいようにしています。
今できるベストを考えた診療を行う
生活習慣病にも注力していらっしゃるとお聞きしました。

はい。糖尿病や高血圧、高脂血症が生活習慣病としてよく知られていますが、ひとくちに高血圧と言っても、ホルモンの過剰産生による2次性高血圧というのもありますので、まずは診断をきちっと行う必要があります。糖尿病では新薬が次々に出ていますから、患者さんと相談しながらより適切な治療につなげていくようにしています。生活習慣病の治療に食生活などの改善が欠かせないことは皆さんよくご存知だと思いますが、ただ、この「生活習慣病」という言葉が最近一人歩きしているように感じるんですね。生活習慣が悪いからなってしまったとか、逆に生活習慣を改めれば必ず良くなると思っていらっしゃる方がとても多いのですが、生まれ持った体質によるところもありますし、加齢とともに数値が悪くなることはあります。ですから、そんなに自虐的にならず、長い目で治療に臨んでいただければと思っています。
診療において大切にしていることは何ですか。
同じ病気でも人によって病状は違いますし、同じ人でも診察日によって体調は異なります。だからこそ病名でひとくくりに診療するのではなく、お一人お一人からその都度お話を伺って、個別に対応していくということが重要だと思っているんですね。例えば、生活習慣病で在宅勤務の方がいらしたとして、在宅なら時間に余裕があって運動できるだろうと思いがちですが、実際は在宅会議が連日23時まであって、かえって時間に束縛されているという方もいらっしゃるわけです。そういうことも患者さんから聞かなければわからないことなので、しっかりと時間を取り、特に初診では一人につき30分かけ丁寧にヒアリングするようにしています。また、説明するときは一気に話さず、ある程度まで説明を進めたところで、「ここまででわからないところはありますか」とお尋ねするなどして、わかりやすい説明を心がけています。
患者さんとの対話を大切になさっているんですね。

医師と患者である前に人と人ですから、基本的には同じ目線でお話しさせてもらいます。一方で、医師として自分の専門知識をこの方の健康の役に立てないといけないと感じた時は、しっかりと注意を促す場面もあるかと思います。とはいえ100点満点であり続けることは難しいでしょうから、「できるだけ良い形で取り組み続けましょう」というスタンスでいますね。前の状態から少しでも良くなったことを喜ぶという姿勢を大切にしています。また、患者さんとのコミュニケーションは、診療のたびに違ってもいいんじゃないかなとも思うんです。患者さんの性格や、その日伝えなければいけない内容によって適切に言葉をかけることに関しては、昔よりも引き出しが増えたのではないかなと思いますね。
生活習慣の改善に向け、多角的にアプローチ
開業から20年以上がたちますが、大きく変わったことはありますか。

心臓の疾患や生活習慣病に対するアプローチは大きく変わっていませんが、新型コロナウイルスの流行を機に飛沫防止のパーティションを設置し、それは今も外していません。現在も、熱などの症状がある患者さんと、いつもの通院でいらっしゃる患者さんとの動線は必ず分けるようにしています。5類というのも決して軽いものではなく、全国的には亡くなる方も多くいらっしゃる病気ですから、僕にとっては今も「アフターコロナ」ではなく「ウィズコロナ」の気持ちで院内感染の防止に努めています。患者さんへの対応については、年齢を重ねたせいか、話すことよりも患者さんの話を聞き出そうという気持ちが強くなりましたね。そして、話すときにはより丁寧に伝えることを心がけるようになりました。
今後の展望をお聞かせください。
生活習慣病については、血圧であれ、コレステロールであれ、できるだけ良い結果を継続することが大切なんですね。そのために生活習慣で変えられるところは少しずつ変えていこうというのが治療の流れですが、その際に理想を提示しただけで終わるのではなく、この方の現実に対してどういう方向に導いていけるか、半年後、2年後、5年後を見据えてどう変えていけるか、そのために何をするかということを一人ひとりについてよく考えていかなければ意味がありません。縁があって管理栄養士さんとお話しする機会があるのですが、そうした医師以外の職種の方からトレ―ニングや食事の話を聞き、患者さんの生活習慣に生かすというアプローチも積極的にしていきたいと考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

SNSなどが発達して、いろいろな情報が手に入りやすい時代になりましたが、そうした情報の中には医学的に間違ったものもたくさんあるのが実情です。ですから、体調不良を感じた際は自己判断せずに専門家にご相談いただければと思います。「胸が何かおかしい」といったとき、心疾患でないものもたくさんありますが、命に関わるものもあります。不安を払拭するためにも、胸の不調を感じたら早めに受診してください。生活習慣病の治療は、将来のリスクを可能な限り減らすために、少しずつ一緒に取り組んでいきましょう。