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芳賀 勝 院長の独自取材記事

医療法人勝心会 芳賀クリニック

(豊橋市/高師駅)

最終更新日:2024/11/08

芳賀勝院長 医療法人勝心会 芳賀クリニック main

県道405号のそばに広がる昔ながらの住宅地。その一角に位置するのが「芳賀クリニック」だ。芳賀勝院長は、勤務医時代は循環器内科を専門とし、患者の命を助けるための医療に長年従事してきた。開業後は、これまでの経験を生かした医療提供に加え、看取りを含めた在宅医療にも取り組み始めた。一見対極に位置すると思われる「助けるための医療」と「看取る医療」。この両者をどのように捉え、日々患者と向き合っているのかを芳賀院長に詳しく聞くとともに、その内容からこれからのかかりつけ医の一つの姿を垣間見ることができた。

(取材日2023年12月26日)

外来診療と在宅医療に取り組む町のかかりつけ医

医師を志したきっかけと、開業までの経緯を教えてください。

芳賀勝院長 医療法人勝心会 芳賀クリニック1

昔から漠然と医師に対して憧れがあって、小学生の時には「医者になりたい」と言っていましたね。小さい頃お世話になった先生がとても優しい方で、その姿を見てかっこいいなと思い、めざすのなら先生と同じ町医者になりたいと考えていました。大学卒業後は循環器内科を専門に研鑽を積み、「助けるための医療」に注力しました。でもクリニック開業後からは、それまでとは反対の在宅医療、いわゆる「看取る医療」に取り組み始めました。開業前に勤務していた病院で、開業医として在宅医療に取り組む2人の先輩医師と出会い連携する中で、今後必ず求められる分野だと実感し、開業と同時に在宅医療に取り組むことを決めました。

患者さんと接する時、心がけることは何ですか?

最も大切なのは、患者さんやそのご家族としっかりとした信頼関係を築くこと。そのためには、何でも話してもらうことが重要です。誰に対してもお話ししやすいよう、同じ目線に立つことを心がけています。在宅医療では患者さん本人が意思表示できない場合もあるため、ご本人の意思を第一としつつ、状況に応じてご家族のご意向にも耳を傾けて応えられるようにしています。ただ現代においては、人が亡くなるところを目にした経験のない方がほとんどで、たとえご本人の希望に沿う形で看取ることができたとしても、残されたご家族の心のケアが求められる場面も少なくありません。これは現在も課題の多い点です。豊橋市では訪問看護ステーションが看取り後の心のケアに注力する動きもあり、今後うまく対応できるのではと感じているところです。

「私のカルテ」というものを導入されているとか。

芳賀勝院長 医療法人勝心会 芳賀クリニック2

「私のカルテ」は、患者さんの診療内容や検査数値を記録して、患者さんにお渡しするノートのことです。これも開業時から導入していますね。ご自身で毎日の血圧の数値を書き込んだり、お母さんが子育ての記録を取ったりと、暮らしの中で活用していただけたらと思い始めました。これを見れば、他の病院の診察を受けることになっても、日頃受けている治療内容を把握した上で受診できます。お薬手帳を兼ねて活用すれば、例えば薬の服用後にその日の体調の異変などを記録すると、「薬の副作用かも?」なんて気づける可能性があります。通院し始めの頃はまだ幼くて親御さんが保管していた「私のカルテ」を、年齢を重ねて患者さん本人が持ってきてくれるくらい大きくなるまで、大事に使ってほしいと思っています。

スタッフや地域と協力し、チームで取り組む

在宅医療のスタッフさんが増え、チーム医療で取り組まれているとか。

芳賀勝院長 医療法人勝心会 芳賀クリニック3

はい。開院当初は看護師と2人で往診に行き、書類の記入も私自身がしていました。ですが、在宅医療は診療だけでなく、事前準備や診療後の指示書、報告書の記入など、事務的な仕事もたくさんあります。患者さんが増えてきて2人では難しいと考えていた時、看護師と事務のスタッフが新しく仲間に加わってくれることになりました。現在は在宅医療専任の看護師3人と事務スタッフ1人を含め、チームで取り組んでいます。頼りになるスタッフたちのおかげで私も診療に専念でき、助かっています。チームの中に人工呼吸器や人工透析の機材を扱うことができる臨床工学技士の資格を持つ看護師もおり、人工呼吸器をつけた患者さんのサポートもスムーズに行えています。

在宅医療は地域連携も欠かせないと思いますが、院外で取り組んでいることはありますか?

豊橋市では地域包括ケアシステムの取り組みの一つとして、豊橋市医師会の中に「在宅医療サポートセンター」を設立しており、私は医師会の一員として、2016年より同センターの取り組みに携わってきました。そこで勉強会や講習会を積極的に開催してきた結果、訪問看護師や訪問薬剤師、ケアマネジャーといった、横のつながりが出てきたと感じています。また、一般の方に向けて、「人生の終末期をどこでどう過ごし、どんな医療を受けたいのかをご家族で話し合いましょう」という考え方であるACP(アドバンス・ケア・プランニング)を啓発する機会を、豊橋市民病院と医師会で連携してつくっています。他にも、豊橋市内で在宅医療に取り組む医療機関の一覧表を作成し、介護保険事業者に配布する活動も行いました。

感染症対策にも注力されていらっしゃるんですね。

芳賀勝院長 医療法人勝心会 芳賀クリニック4

10年ほど前に新型インフルエンザが流行した頃から、感染症対策に取り組んでいます。発熱した患者さんを診療する外来用に別の入り口を設け、普段処置室として使っている部屋を発熱した患者さん専用の待合室にして、動線を分ける工夫をしています。新型コロナウイルス感染症は感染力が強いといわれていたので、待合室の入り口はビニールカーテンで覆い、待合室の中にはクリーンパーティションを設置するなど、患者さん同士の接触を極力避けるための対応も行いました。新型コロナウイルス感染症流行初期は、病院が満床で入院が難しかったり、訪問看護ステーションでは新型コロナウイルス陽性者の患者さん宅への訪問が中止されたりと、在宅医療も大変な状態でした。それでも、当院では保健所と連携し感染症対策をしながら、スタッフとともに積極的に訪問診療を続けてきました。

死を自然なものとして受け入れ、患者を孤独にさせない

院長の熱意を支えるものは何でしょうか?

芳賀勝院長 医療法人勝心会 芳賀クリニック5

熱意なんて大それたものはではなく、死という自然の流れに寄り添っているだけです。循環器内科を専門としていたので終末期の患者さんの心臓への処置の判断もでき、これまでの経験が生かされる場面も多いです。患者さんを「助ける」ために専門とした循環器内科が、「看取る」ためにも役立っています。助けることも看取ることも医療だといえ、私は看取る医療の道を選んだまでのことです。患者さんのお顔を見て「お変わりないですね」と手を握る、これも医療だと考えます。誰かが普段から手を握っていれば、たとえ臨終の瞬間に一人だったとしても、尊厳のある死を迎えられたといえるのではないでしょうか。地域が協力し患者さんを孤独にさせないことが、在宅医療や地域包括ケアシステムのゴールの一つではないかと思います。ご家族から感謝の言葉をいただけるような、ご家族も納得して患者さんをお見送りできるような「看取る医療」を提供したいと思います。

今後の展望をお聞かせください。

2025年に本格的に直面する超高齢社会では、豊橋市でも年間に亡くなる方が現在の1.2倍になると予想されます。多くの死に寄り添い支えるのは、私たちのような在宅医療に取り組む医師ですが、現状、まだその数は十分ではないと思います。ぜひ多くの先生に仲間になってほしいですね。1人では難しいことも、クリニック同士が連携することでできることも増えますし、医療従事者にかかるストレスを減らすこともできると思います。実際に、私たちも研究会などで留守にする時は、在宅医療仲間の先生たちと協力し合える体制を整えています。今後も一医師として、体力の続く限り在宅医療に取り組んでいくと同時に、看取りが自然に社会に受け入れられるような啓発も進めたいです。

最後に読者へのメッセージをお願いいたします。

芳賀勝院長 医療法人勝心会 芳賀クリニック6

最近よく話題になりますが、最期の時を家族とともに家で過ごしたいと考える人は多いのではないでしょうか。そんな患者さんの希望に沿えるような在宅医療を進めていきたいですね。在宅医療は看取りがゴールになりますが、それは決して悲しいことばかりではないと思います。最期までなるべく少ない苦痛で、できる限り楽に過ごせること、そしてご家族に囲まれて最期が迎えられること。それは、亡くなる方にとって幸せなことではないかと思います。今後、そんな最期を望む人が、それを選択できる社会にしていけるよう、われわれも努力し続けたいと思います。

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