がん診療をよく知る医師による訪問診療
専門的な緩和ケアも在宅で
おおまえホームケアクリニック
(尼崎市/塚口駅)
最終更新日:2024/02/15


- 保険診療
超高齢社会の到来とともに、ますますニーズが高まる「訪問診療」。最近は、注力する地域のクリニックも増えてきている。ただその一方で、まだ訪問診療が身近になったとは言いきれず、利用できる条件や手順について、よく知らない人もいるだろう。「外来に通う患者さんを診るように、医師が定期的にご自宅に訪問して診察する、在宅医療の『かかりつけ医』ともいえるのが訪問診療です」と話すのは、「おおまえホームケアクリニック」の大前隆仁院長だ。尼崎で数少ない緩和医療専門の医師として、在宅での緩和ケアにも力を入れている。そこで今回は、いざ訪問診療が必要となったときに慌てることがないよう、事前に知っておきたい基礎知識や、利用する際の流れなどについて、大前院長にわかりやすく解説してもらった。
(取材日2024年1月4日)
目次
最期までより良い生活が送れるよう、患者のそばで見守りながら、終末期医療や緩和医療、看取りなどに対応
- Q訪問診療の対象となるのはどういった方ですか?
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A
▲地域で数少ない緩和ケアを行っており、患者に寄り添う大前院長
基本的には、自力での通院が難しい方が対象です。加齢やがんなどの病気が進行したことによって、体を動かすのがつらいというように、何らかの理由により身体的な困難を抱えている方が多いですね。また、精神疾患で対人恐怖があるなど、なかなか家の外に出られないという方も、一定数いらっしゃいます。当院の場合、私が緩和医療専門の医師であり、もう一人の常勤医師である副院長は血液内科が専門で、ともにがん診療の経験が豊富なことから、がんの終末期の患者さんを中心に診ています。また、精神疾患がある高齢の方や終末期の方に対して、お薬の処方や緩和ケアといった、身体面で必要とされる処置を提供することも行っています。
- Q通院での外来診療と、訪問診療との違いについて教えてください。
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A
▲在宅看護の専門知識を持つ常勤看護師も在籍している
一般的に、通院で外来にお越しになる患者さんの場合、「この症状を相談したい」「この病気を治したい」というように、受診の目的がはっきりしています。そうした要望に応え、主訴を治すために医師が診るのが外来診療といえるでしょう。一方、訪問診療の患者さんは重症度が高く、生活に支障を来していることが多いです。がんの終末期の方であれば、病気を治すための治療より、病気とうまく付き合いながら、ご自宅でできるだけ良い暮らしを送るために何が必要かを医師が考え、対応していきます。看護師など他の医療従事者とチームでサポートを行うこともあり、当院でも在宅看護の専門知識を持つ看護師が力を発揮してくれていますね。
- Q訪問診療を受けたいときはどこに相談すればいいですか?
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A
▲患者や家族とのヒアリングのもと訪問診療を実施
病気で入院中の方の場合、病院を通じてご相談をいただくケースが多いですね。一方、ご高齢で、加齢に伴う衰弱から医療的なサポートを必要とされる方の場合、すでに介護サービスを受けながらご自宅や施設で過ごしているケースが大半です。そうした方はケアマネジャーさんや地域包括支援センターからご相談を受ける流れですね。どちらの場合でも、初回面談として患者さんやご家族に来院いただき、かかりつけ医からの診療情報提供書をもとに現状やお困りのことをヒアリングしていきます。その上で初回の訪問日を設定します。訪問の頻度は月2回が基本です。当院の場合、患者さんの状況に応じて頻度のご相談にも乗り、お看取りまで対応しています。
- Q患者さんやご家族に事前に知っておいてほしいことはありますか?
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A
▲訪問診療とはかかりつけ医が定期的に自宅や施設で診療を行う
在宅医療の中でも、「訪問診療」と「往診」との役割の違いを知っておくといいかもしれません。実は、この2つを混同される方がよくいらっしゃいます。「普段は来なくていいから、困った時だけ診てほしい」というのは往診になります。一方、訪問とは、慢性疾患の管理で定期的に通院するのと同じように、月に2回、ご自宅や施設で診てもらう医療です。いわば在宅医療におけるかかりつけ医ですね。急変時に的確な対応をするには、平時の状態を把握することが欠かせません。私も常に患者さんにとっての最善を考え、判断することを大切にしています。必要であれば入院していただき、また退院後に引き続き訪問診療で診ていくこともできますよ。
- Qこちらの訪問診療の特徴を教えてください。
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A
▲同院は「2人主治医制」で患者が安心できるような体制を整える
私と副院長による「2人主治医制」は特徴の一つです。夜間や休日でも日頃から診ている医師のどちらかが駆けつけられる体制ですから、患者さんは安心だと思います。また、専門性の高い緩和ケアを訪問診療で提供できることも大きな強みでしょう。私の経験を生かし、在宅でも病院と同じような痛みのコントロールが可能です。麻薬の使用に不安を感じる方もいるかもしれませんが、丁寧にご説明しますのでぜひご相談ください。加えて、外来があることで多様な要望に応えやすいことも特徴です。外来診療から始めて、通院できなくなったら訪問診療に切り替えたいという方でも、積極的な治療から緩和医療へスムーズに移行できるよう対応しています。