佐藤 健志 院長の独自取材記事
健クリニック
(川口市/鳩ヶ谷駅)
最終更新日:2025/10/23
鳩ヶ谷駅から徒歩1分に位置する「健クリニック」。順天堂大学医学部附属順天堂医院や亀田総合病院などの心臓外科で研鑽を積んだ佐藤健志院長が、心臓病や糖尿病、高血圧症といった疾患に幅広く対応しながら、近隣の病院と密接に連携。緊急時も迅速に対応できる体制を築いている点が大きな特徴だ。開業25周年を迎えた今、自身の体調不良や新型コロナウイルス感染拡大の経験を経て「無理をせず持続可能な医療を続けること」の重要性を強く実感しているという。誠実で公平な診療を信条に地域とともに歩み続ける佐藤院長に、クリニックの特色、診療での心がけ、25周年を迎えての思いなどについて聞いた。
(取材日2025年9月19日)
緊急時も迅速対応。地域でつながる「チーム医療」
クリニックの特色について教えてください。

当院に通う患者さんの多くは、心臓病や糖尿病、高血圧症といった生活習慣病です。私は開業前に大学病院や総合病院で心臓外科を専門にしていたため、術後に紹介されて通院される方も少なくありません。糖尿病に関しても川口市立医療センターと連携し、治療を継続する方が多く通院しています。さらに循環器救急では、市内の複数病院と協力し、急性心筋梗塞などにも迅速に対応できる体制を整えました。また新型コロナウイルスの感染拡大時には発熱患者のための外来を設け、地域とともに感染症対策にも取り組んできました。現在は循環器と生活習慣病を柱に、地域の健康を支えています。
近隣の病院との連携が多いのですね。
川口市立医療センター、埼玉県済生会川口総合病院、かわぐち心臓呼吸器病院、埼玉協同病院など近隣の病院と日常的に連携しています。循環器の病気は一人では対応できないため、川口循環器研究会を通じて循環器を専門とする医師たちとの関係を築き、緊急時にすぐ連絡が取れる体制を整えています。術後の患者さんを当院で診ることもあり、紹介状には病歴や検査データを詳しく記し、治療の流れがきちんと伝わるよう心がけています。受け入れ先を常時確保して重症循環器疾患に対応する東京都CCUネットワークを参考に、川口でも同様の仕組みをつくって急性心筋梗塞など重症例を複数病院で分担しながら受け入れています。患者さんにとっては常に受け入れ先があるという安心感が生まれ、私たち医師にとっても心強い支えになっています。
診療で心がけていることはありますか?

診療の基本は公平で正直であることです。説明はできるだけわかりやすく、伝わるまで何度でも丁寧にお話しします。また正確な診断には適切な検査が欠かせません。胸の苦しさや動悸、むくみといった症状で来院された方には、心電図やエックス線検査に加えてBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)を測定します。BNPは心臓に異常があると分泌されるホルモンで、数値を測ることで心臓全体の状態を把握でき、病気の振り分けに役立ちます。採血だけで行える簡便で信頼性の高い検査ですので、気になる症状があれば早めに受診し検査を受けていただきたいと思います。基本を大切に、一人ひとりに誠実に向き合う姿勢をこれからも続けていきます。
治療も予防も進化。命を守るために早めの受診を
心臓の病気は怖いと考える患者さんも多いです。

現在では心臓治療は格段に進歩し、80歳を超えて心不全から回復し、自宅へ戻る方も珍しくなくなりました。少し前までリスクが高かったカテーテル検査も安全性が高まっています。私が大学を卒業した1984年頃は、心臓外科は特殊な分野で、手術には命の危険が伴うものでした。当時PCI(経皮的冠動脈インターベンション)は始まったばかりで、冠動脈造影を行える医師も限られていたんです。しかし今では優れた医療機器や技術の進歩でリスクは大幅に下がり、採血だけで行える検査も増えています。薬の選択肢も広がり、心不全や不整脈を内科的にコントロールできるようになりました。さらに小型心電図やスマートウォッチで不整脈の兆候を把握することも可能となり、患者さん自身が予防への意識を高めることができる環境も整えています。
患者さんに向けて、アドバイスなどはありますか?
体調に異変を感じたら我慢せずに受診してください。循環器疾患は進行が早く、休日や夜間には受け入れが難しい場合もあります。土曜の診療終了間際に重症の方が来られることもあり、もう少し早く来ていればと感じることがあります。川口市では循環器救急のバックアップ体制が整っており、必ずどこかが受け入れ可能ですので、安心してご来院ください。また糖尿病や高血圧症など生活習慣病は自覚症状が出にくいため、定期通院が重要です。スポーツドリンクやエナジードリンク、甘い乳酸菌飲料を健康的だと思い込み、糖分を取りすぎる方もいます。飲み物の成分表示を確認し、日常生活から予防を意識することが健康維持につながります。
スタッフさんについて教えてください。

当院では診察前に看護師が患者さんの話をじっくり聞き、症状だけでなく生活の様子や気持ちも受け止めてから私に引き継いでくれます。世間話の中から患者さんの不安や隠れた症状を察知することもあり、とても頼りにしていますね。「患者さんの声に耳を傾ける」ことを最優先とし、患者さんとの関わりを大切にするよう常に伝えてきた結果、非常にスムーズに診療が行える体制を築くことができました。スタッフが方針への理解を深めて協力してくれることで、患者さんに寄り添う診療が実現できていると実感しています。
この地に根差し、長く地域に貢献していきたい
先生はなぜ医師になろうと思われたのですか?

父が川口市の西青木で小児科内科の医院を開業していました。自宅に隣接し、生活と仕事が一体化している環境でした。昭和30年代当時は電話も普及しておらず、学校からの連絡も医院にかかってきたものです。夏はクーラーがある医院に涼みに行った記憶もあります。父の姿は日常的に目にしていましたが、子どもの頃は医師を志すことはありませんでした。ところが高校3年で進路を決める際、不思議と医学部を選びました。意識せずとも「背中を見て育つ」影響があったのかもしれません。振り返るとその選択が今の自分を形づくり、地域に根差した医師として歩みを続ける礎となっています。
休日の過ごし方やリフレッシュ法を教えてください。
以前は医師会の仲間とバンドを組み、打楽器の「コンガ」を演奏するのが楽しみでした。憧れの曲を舞台で披露したこともあり、勤務医時代には考えられなかった経験でした。開業したからこそ実現できた喜びです。近年は演奏は控えていますが、学生時代から集めた数百枚のレコードを整理するのが新たな楽しみになりました。ジャズが多く、針を落として音を確かめながら聴き直しています。また古いラジオ番組を録音したエアチェックも10年ほど前からオープンリールからDATに移し替えていて、現在はその整理も進めています。
開業25周年を迎えての思いをお聞かせください。

地域の皆さまに支えられ、25周年を迎えました。地域の学校医や警察医だけでなく、医師会活動などを通じて培った人脈は、この年月の積み重ねがあってこそであり、循環器に限らず専門外の疾患でも迅速に高度医療へとつなげる助けとなっています。近年は、親しかった年下の知人が闘病の末に亡くなったこと、また自らの目の不調、そして新型コロナウイルスの感染拡大による混乱など、忘れ難い出来事が重なりました。そうした経験を通じて学んだのは、無理をせず持続可能な診療を続けることの大切さです。以前のように役職をいくつも兼ねて奔走するのではなく、地域に根差し、長く診療を続けることに重点を置くようになりました。これからも「細く長く」を合言葉に、安心して通っていただけるクリニックを守りたいと思います。節目を励みに、誠実な診療を重ね、地域に貢献していきます。
今後の展望やメッセージをお願いいたします。
これから高齢化はますます進み、医療制度もさらに変化していくでしょう。その中で私たち医師にできることは、公平で誠実な診療を続けることだと考えています。診療が合わないと感じる方もいるかもしれませんが、来ていただければ誠実に向き合います。体調に不安があるときは我慢や自己判断をせず、早めに受診してください。新型コロナウイルスの感染拡大時には発熱症状に対応する外来や集団接種に携わり、地域とともに医療を支える経験をしました。その学びを次の感染症対策にも生かし、地域と歩む医療を続けたいと思います。25周年を節目に、これからも変わらぬ姿勢で診療を続けていきます。

