高村 一成 院長の独自取材記事
たかむら小児クリニック
(宮崎市/南宮崎駅)
最終更新日:2026/08/27
国道269号沿いを進むと、アーチ型の屋根が目を引く「たかむら小児クリニック」が見えてくる。家族ぐるみのイベントなど住民同士のふれあいが盛んな土地柄同様、和やかな雰囲気の院内で子どもたちを迎えるのは、2026年に院長に就任した高村一成先生だ。複数の病院で重い病気と闘う患者と向き合う中で培ってきた専門性の高い医療技術と、育んできた子どもたちへの思いを地元に還元している。2026年夏からは別棟にて、不登校や発達障害など児童のメンタルヘルスに特化した診療を提供。休みの日に2人の子どもたちと過ごすのが楽しみと話す高村院長に、これまでの歩みやクリニックの理念、地域や子どもたちへの思いを話してもらった。
(取材日2026年7月21日)
恩師や患者との出会いを糧に日々の診療に邁進
先生が医師を志されたのは、こちらのクリニックを開業されたお父さまの影響が大きかったのですか。

僕が幼少期の頃はまだ父は開業しておらず、医師としての仕事ぶりを見る機会は少なかったのですが、自然と医学を志すようになりましたね。大学は福岡でしたが、医学部に入学後から「いずれはクリニックを継ぐことになるだろうな」と自然と考えるようになったので、結局父の背中を追う形になりましたね。卒業後に宮崎に戻ってからは宮崎大学の小児科に入局させていただき、宮崎県内の複数の病院に「修行に行く」といった感覚で勤務していました。その後、小児循環器を専門として宮崎大学医学部小児科に戻ってから数年働いて今回、親子継承というかたちでクリニックを引き継ぎました。
多くの先生から学んで来られたのですね。
出会えて良かったと思う先生方は宮崎大学の小児科の先生をはじめ本当に多く、環境にもとても恵まれました。小児循環器を専門に学んでいた時代は、チーフの研究や臨床に対する考え方に大いに影響を受けました。宮崎県では、高難度の心臓病の子どもは福岡の病院で手術を受けることが少なくなく、陸路空路問わず搬送が必要な子どもたちがいます。搬送にあたってのリスクマネジメントやご家族とのコミュニケーションなどのノウハウなども会得できました。術後に宮崎に戻った子どもたちと病棟や外来で接する中で、たくさんのことを学ばせてもらいました。
子どもの患者さんからも学ばれたとのことですが、特に印象に残っているエピソードを教えてください。

初めて自分で診断・検査・手術をして元気に大きくなっていったお子さんはもちろんのこと、残念ながら助けられなかったお子さんももちろん忘れることはできません。最重症の心臓病であると生後に判明したお子さんは特に印象に残っています。いろいろな背景から手術は困難と判断され長期入院を余儀なくされていました。「自宅に連れて帰って家族と過ごしたい」と強く希望されたため、何度も話し合いを繰り返し、自宅に帰るための準備を数ヵ月かけて行い、何とか無事に退院されました。残念ながらその子は亡くなってしまいましたが、ご両親からはその後感謝の言葉をいただきました。この経験が、手術だけが正解ではないということを教えてくれました。病気は治療したら終わりではなく、その後の患者さんやご家族の生活は続きます。患者さんとそのご家族に何ができるのかを、常に考えて診療する大切さを教えてもらった経験でした。
心の問題を抱える子どもと真摯に向き合う環境を構築
貴重なご経験を経て、こちらのクリニックを承継されたのですね。

最近は、不登校や発達障害、SNSやゲームへの依存など、心の問題を抱える患者さんが増えてきています。ただ、子どもの心を対象にした診療を提供している医療機関が宮崎県内にはあまり多くなく、相談先に悩んでおられる親御さんは少なくありません。そこで、そのようなお子さんの心の悩みに特化した診療環境を当院で整え、患者さんとご家族を受け入れられるよう進めています。これからも精進して子どもの心の問題に対しても寄り添えるような小児科医をめざしていきたいです。
心の問題を抱えたお子さんを、具体的にどのような環境で診療されるのでしょうか。
以前は、院内で診療をしていましたが、診察中に他の赤ちゃんが泣き出し、お子さんが動揺して黙ってしまうことがたびたびありました。ですから、当院の建物の側に別棟を構えました。名づけて「子どもの心相談室」です。いろいろな問題をかかえている子ども・親の診察では、じっくりと時間をかけてお話を伺います。お話ししたように音に敏感なお子さんもおられるので、ほぼ雑音が入らない、穏やかな気持ちで過ごしてもらえる診察室にしました。一人ひとりのお子さんとじっくりと向き合いたいので、予約枠にゆとりを持たせており、電話のみで受けつけています。また、風邪などの診察中に親御さんからご相談を受けた場合も、別の日に改めて詳しくお話を伺うようにしています。
先生ご自身は「子どもの心相談室」とどのように関わっていきたいとお考えですか。

ゆくゆくは「子どもの心相談室」の診療も引き継ぐつもりです。現在理事長とともに診療に携わっている専任のスタッフさんや看護師さんの協力も仰ぎ、理事長に心を開いてくれたお子さんたちを引き継いで受け入れてもらえるよう努力していきます。当院のスタッフは全員、父が院長だった時代から支えてくれているベテランぞろいで、普段の診療でもとても頼もしいです。患者さん、そして地域に慣れ親しみ、僕が行き届かない部分をフォローしてくれるスタッフと働くことができるのは、親子継承のメリットでしょうね。
小児科の受診年齢を過ぎても続く関係性をめざす
診察で心がけていることを教えてください。

お子さんが診察室に入ってきた数秒間で、緊急を要する状態かどうか判断することを大切にしています。症状が落ち着いていれば、「今日はどうしたの?」とゆっくりお話を聞いてあげます。うまく話せないお子さんは親御さんにサポートしてもらい、「こういうことを伝えたいのかな」と考えながらの対応になりますね。隠れた訴えに気づくことや見落としがないように診察に集中する方が大事、というのが僕の考え。まだ「初めましての患者さん」が大多数ですが、普段から顔を合わせ、親御さんも含めてこまめにコミュニケーションを取っていきたいです。親御さんにとっては相談しやすい、僕としてはお子さんの様子の変化に気づきやすい、そういう関係性を育てていけたらいいですね。
気軽に足を運べるクリニックをめざしておられるのですね。
そうですね。相談したいと思ったらすぐに来院してもらえるようにいろいろ試しており、親御さんにも「待ち時間が短いので助かります」と喜ばれることがしばしばあります。当日朝だけではなく数日前から余裕を持って予約できるシステムの導入や予約枠の増枠、SNS連携などを取り入れました。忙しい親御さんが多いですし、落ち着いて待っていられない子どもたちもいますので。院内においてもお子さんが飽きてしまわないよう、キッズエリアを充実させています。年齢やトレンドに合わせた書籍を取り寄せて、定期的に入れ替えているんです。「新しい本があるよ」と夢中で読んでくれるお子さんが多いですし、親御さんも家では取りづらい「読み聞かせの時間」にしてくれているようでうれしいです。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをいただけますか。

「地域の子どもたちに手を差し伸べられるクリニック」というのが、先代からの当院の理念であり、地域のお子さんの健康を見守るのが僕の責務です。大学病院などで重症の患者さんと関わり、教えてもらったことを地域に還元していきたいです。小児科は5,6歳くらいまでという限られた期間のお付き合いというイメージがあるかもしれません。ただ、小学校に上がると不登校などの悩みが出て来るので、その時にはまた当院に戻って来て頼りにしてもらいたいです。お子さんや親御さんにそう思っていただけるよう、これからもスタッフ一丸で地域に寄り添っていきます。

