日帰り手術で、体への負担も少ない
前立腺肥大症のWAVE治療
ほこいし医院
(松山市/松山市駅)
最終更新日:2025/09/01


加齢とともに肥大化する前立腺。70代以降の男性では、7〜8割に前立腺の肥大化が認められるとされ、排尿のトラブルや生活の質への影響が問題となっている。前立腺肥大症の手術は従来、電気メスやレーザーが用いられていたが、組織に傷をつけるため出血のリスクがあり、体への負担が大きかった。「ほこいし医院」の鉾石文彦院長は泌尿器科疾患と大腸肛門病の専門家であり、先進的なWAVE治療(経尿道的前立腺水蒸気治療)を行っている。これは高温の水蒸気を注入し、肥大化した組織を壊死させる治療法だ。手術時間が短く、日帰りで行え、体への負担が少ないWAVE治療とはどのようなものなのか、鉾石院長に聞いた。
(取材日2025年8月22日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q前立腺肥大症はどういう疾患で、いつ頃からの発症が多いですか?
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A
男性は尿道の始まりを包むように前立腺という臓器があります。前立腺は年齢とともに大きくなり、成人でクルミよりやや小さいくらいになります。さらに中年以降、7〜8割の男性で肥大化します。肥大により何らかの症状が起きると前立腺肥大症となります。中を通っている尿道を前立腺が締めつけることで、尿が出にくくなったり、頻尿になったりします。残尿が増えるため、結石ができたり、雑菌が繁殖したりすることもあります。また、膀胱に常に尿が残っていると、伸びきった膀胱になってしまいます。前立腺肥大症は、進行すると尿閉や腎機能障害を招くことがあるため、早めに泌尿器科を受診しましょう。
- Q前立腺肥大症の検査や治療法には、どういったものがありますか?
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A
超音波検査で前立腺の大きさや腫れ具合、残尿を診ます。さらにおしっこの勢いも測定します。治療は、まず尿道の締めつけの緩和を図る薬を使います。前立腺は男性ホルモンを取り込んで大きくなるため、男性ホルモンの働きを抑えるための薬も有用です。ただし、薬物治療は限定的な治療で、改善が見込めない場合は、外科手術を検討します。従来は経尿道的前立腺切除術という電気メスを装着した内視鏡で、前立腺の出っ張りを尿道側から削り取る手術が行われていました。しかし、これは出血のリスクがあるため、前立腺が大きい人はレーザーを用いた手術をお勧めします。さらに、出血がわずかで、入院する必要もないWAVE治療もあります。
- QWAVE治療の特徴やメリットについて教えてください。
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A
WAVE治療は、従来の手術とは違い、前立腺に針を刺し、高温の水蒸気を入れて、熱で前立腺の縮小を図る治療法です。粘膜を切らず、針の穴しか開けません。そのため、体への負担が少なく、術後が楽という特徴があります。また、従来の手術だと射精障害が起こるリスクがありましたが、WAVE治療ではほとんど起こりません。さらに、手術時間が短く、簡易な麻酔で手術をするため手術当日に歩いて帰ることができます。一方、水蒸気の熱で破壊された組織は1~3ヵ月かけて自然に体内に吸収され、それに伴って徐々に症状緩和が見込めます。また、手術ができるクリニックはあまり多くありません。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診
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初診では、どういった症状がいつ始まったのか、現在はどう変化したか、また、困っていることや病歴などをヒアリングする。その後、世界共通で使用されているIPSS(国際前立腺症状スコア)などを用いて、患者の症状を客観的に評価する。前立腺肥大症であれば、医師から前立腺肥大症の説明があり、患者の同意に基づき、治療方針を決定する。
- 2診断のための超音波検査など
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超音波検査では、前立腺の大きさや腫れの程度を確認。さらに尿検査で炎症や血尿の有無を調べ、ほかの疾患との鑑別を行う。加えて尿流測定によって排尿の勢いや時間を計測し、尿道の圧迫具合を客観的に評価。排尿後には残尿測定を行い、膀胱にどの程度尿が残っているかを確認する。これらの検査の結果に基づき、まずは薬による治療から始め、患者の状態により手術の提案も行う。
- 3エックス線検査
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WAVE治療をすることが決定したら、まず尿道のエックス線写真を撮影し、尿の通り道の形や長さ、曲がり具合を客観的に確認する。さらに内視鏡で内部を観察し、突出している部分がどこにあるのかを詳しく見極める。これらの検査によって、治療をより安全かつ正確に行うための準備を整える。
- 4手術
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当日は特別な準備は必要ない。軽い麻酔をしてから、専用の内視鏡を用い細い針を前立腺に刺し、高温の水蒸気を注入する。蒸気の熱によって肥大した組織が壊れて縮小し、尿道の圧迫の緩和につながる仕組みだ。手術自体は約10分ほどで終わり、切開や出血を伴わないため負担が少ない。終了後は20〜30分ほど院内で休めば、歩いて帰宅も可能。当日は入浴を避け、感染や出血等の予防のためにアルコールは2週間ほど控える。
- 5術後の結果説明と経過観察
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治療翌日には再び来院し、尿道を保護するための管(カテーテル)が入っているので、その状態や経過をチェックする。トラブルがあれば処置をする。カテーテルは1〜2週間後に抜くのが基本だが、膀胱の力が十分に保たれている人では早めに外すこともできる。その後は2〜4週間を目安に検尿や尿の出具合を追跡し、最終的には術後3ヵ月で経過観察を終了するという。