福永 謙 院長の独自取材記事
ふくなが小児科
(横須賀市/追浜駅)
最終更新日:2024/11/29
京急本線追浜駅から徒歩約3分の場所に「ふくなが小児科」はある。「子ども好きなので、専門を選ぶ時は小児科一択でした」とニッコリほほ笑む院長の福永謙先生。大学病院での研鑽に加え、フランスへの留学やイギリスへの派遣など、多くの経験を通して開業の決意を固めたのだそうだ。小児科専門のクリニックの少ない地域にあり、1998年9月の開業以来近隣の親と子の心強い味方であり続ける。「特に働くお母さんの力になりたかったんです」と語る福永院長。診察室の壁には子どもたちからの手紙や絵がびっしりと飾られ、地域に密着していることを物語っている。在籍する平井恵奈先生の子どもの心の発達を学んだ経験を生かし、子どもたちのメンタル面のケアにも力を入れる。そんな同院のこれまでと未来について話を聞いた。
(取材日2024年10月25日)
豊富な経験を踏まえて子どもと真摯に向き合う
かなり遅くまで診察されているんですね。
そうですね。受付は17時30分までだったのですが、それまでに受けつけた患者さんは全員診察しますので、19時過ぎまで診察が長引くこともありますね。そもそも働くお母さんのために開業しようと思ったので、開業当初は19時まで受けつけており、土曜の午後も診察を行っていました。今は私も年を取ってきましたので少し縮小させていただいております。そうした中でも、このように頼りにしていただき、診療が遅くなることもありますが、子どもたちを長く待たせることはないようにしています。感染症の心配もありますし、何より飽きちゃいますよね。ですので事前にご予約いただいて、順番が10人以内になると呼び出しが来る仕組みを採用しております。
小児科の医師をめざしたきっかけを教えてください。
もともと子どもが好きで、子どもを相手に話したり遊んだりしているのが楽しかったので、医科大学卒業時には小児科一択でした。父も医師だったのですが、内科の勤務医でしたので私が継ぐようなしがらみもなかったんです。実は、子どもの頃はあんまり体が強くなく、父の勤める病院にはよく通っておりました。その時に、父の働く姿を見て格好いいなと漠然と思っていたんです。「格好いい」と「楽しい」というイメージだけで小児科の医師をめざしたのですが、だからこそ勉強には身が入りましたね。
パリやロンドンでのご経験があるようですね。
中学・高校・大学とずっと一緒だった先輩がいて、その先生がパリのネッケル小児病院に留学されていたんです。東京でいうと国立小児病院のような位置づけの病院です。先輩をきっかけに私もそこに留学し、80年代の終わり頃1年半、エイズの母子感染について学びました。といっても、研究室で試験管を振るよりも患者さんと接するほうが好きなので、臨床の傍らデータを整理して論文を書くことに力を入れていました。小児科のクリニックは内科の先生が手を広げて診察されていることが多いと思いますが、留学を経て、私は小児科一筋でいこうと決意したんです。帰国後、東京慈恵会医科大学附属柏病院に配属になって「柏病院小児科に骨を埋めよう!」というつもりで赴いたら、1年半で「ロンドンで頑張ってきてほしい」と辞令が出たんです。結果3年間、現地日本人の診療をすることになりましたね。
さまざまな不安を取り除く「コンビニ」のような小児科
こちらではどんなふうに診察されているんですか?
まずは親御さんの心配を取り除くことを考えます。ものすごく心配されて私の言葉が耳に入ってこなかったり、不安から調べすぎて情報過多になっていたりされる方もいらっしゃいますからね。そんな親御さんに対して、「何がありましたか、ゆっくりお話しくださいね」と、穏やかに伝えることから始めています。それと同時にお子さんの様子を見ます。顔色や表情、しゃべり方、態度などを観察します。小学生くらいの子は本人からも話を聞いて、親御さんからの話と照らし合わせます。もう一つ大切にしているのは、触診ですね。「ごめんね、ちょっと腕を触らせてね」と、皮膚の張り具合を確認したり、背中を触って体温を見極めたりします。問診・視診・触診が小児科ならではの診察の基本だと思っています。
そうすると、お子さん一人に対してかなりの時間がかかりませんか?
かかる方もいれば、そうでない方もいますね。もちろん、想定外の疾病のリスクに対しては適切に対応します。先ほど「心配を取り除く」と言ったのは、何も病気にまつわることだけじゃないんです。お子さんだけでなく、親御さんの不安も心配も、一緒に取り除ければと思い、診療にあたっております。子どもを持ち、育てることに関わる不安な要素を払拭できればと思っているんです。小児科の医師としての立場はもちろんですし、子育ての経験も踏まえてお話ができればいいなと思っています。「コンビニ」のような小児科じゃないけれど、どんな些細なことでも心配事があったらとにかく立ち寄っていただきたいですね。
この地域の子どもの感染症のデータと注意点を、ウェブで公開されているのですね。
地域のデータを自分で集計して、表にして公開しています。ニュースや情報番組などでも、子どもたちに流行している感染症の話題が上ることもありますが、東京と追浜では病気や感染者数が違っていることもよくありますから、地域のデータを発信することは有意義だと考えています。また、当院には平井先生という小学生の子を持つ小児科の医師が在籍しています。普段は、小児科の診察や予防接種なんかを担当してもらっています。彼女は子どもの心の発達について専門的に学んできた経験もあるので、週に1度、子どもたちのメンタルに関して専門的に診る枠を設けています。発達障害、特に自閉スペクトラム症やADHDなど、子どもの心にまつわる疾患による生活への不適応はたくさんあるので、そうした心配事の強い味方になってくれていると思います。専門的な検査が必要な場合は、より高次の医療機関におつなぎしていますので、ご安心いただきたいですね。
診察室には親子のたくさんの信頼の証し
子どもたちからのお手紙に写真シール、診察室の壁は圧巻ですね。
お手紙は、それぞれ頂いた時に日付をスタンプしてるんです。たしか最初に頂いたのは、2003年ですね。お手紙の内容は、いわゆる感謝だけではなくて、「先生、お薬どうやって作ってるの?」といった素朴な疑問や、お子さんご自身の好きなキャラクターのイラストが描かれたものもありますね。ここはもともと普通の診察室だったんですが、うれしくて貼り始めたらいっぱいになってしまいました。全部私の宝物です。他に、受付ともう一つの診察室には健診を受けてくれた赤ちゃんの写真を当院で撮影して、シールにして飾らせてもらっているんです。こちらは2000年から始めました。だから、お手紙をくれたお子さんや写真シールに写っているお子さんが、成長して結婚して、今度は親御さんとしてここに来てくれていたりもします。本当に小児科冥利に尽きますね。
列車のおもちゃが診察室の上を走っていたり、ロープウエーの模型が行き来したりと楽しい空間ですね。
レールのレイアウトを考え、試行錯誤しながらこの空間をつくり上げました。もともとプラモデルづくりなど、細かい作業も好きだったので、子どもたちのために、何か楽しい空間にできないかと始めたのがきっかけです。予防接種の注射は、やはり痛くて怖いものなんですよね。その際に、子どもたちの気をそらすのに役立てています。列車のおもちゃを走らせていると、「見ててごらん、電車が来たよ」なんて言いながら、素早く注射を打ち、あっという間に終わっている、なんてこともありますね。その他にも、お薬の実物を壁にディスプレーして、「これはどういう時に使う薬」ということをわかりやすく伝えるといった工夫もしています。
では、最後に地域の皆さんにメッセージをお願いします。
「子どもの健康を守りたい」「育児にまつわる親御さんの不安をなくしたい」という思いで、ここまで続けてまいりました。新たに平井先生が加わりましたので、子どもの体だけでなく心のケアにも力を入れてまいりたいと思っております。追浜に住んでいらっしゃる、お子さんの健康を守りながら、親御さんの心配事がなくなるよう全力で取り組んでいますので、気軽に立ち寄ってくださいね。
自由診療費用の目安
自由診療とは予防接種:四種混合8500円、二種混合3000円、麻疹風疹混合8500円、おたふくかぜ4500円、水痘6500円、日本脳炎4500円、A型肝炎6000円(要予約)、B型肝炎4000円、ロタウイルスワクチン1万4000円/1回(全2回)