新井 克己 院長の独自取材記事
ハロークリニック
(東松山市/東松山駅)
最終更新日:2026/01/08
東松山駅から車で約15分。緑に囲まれた静かな場所に立つ「ハロークリニック」は、小児科領域の病気や発達について診察を行うクリニックだ。木がふんだんに使われたロッジのような院内には、個室の診察室と、リハビリテーション室も個室で設けている。2016年から院長を務める新井克己先生は、穏やかな優しい人柄だが、小児の精神科医療に関して熱い志を持つドクター。子どもたちの成長を見守るため、保育園・幼稚園・学校などへ巡回支援も行い、多職種多機関との連携をスムーズにするためのシステムも立ち上げた。そんな新井院長に同院の沿革から、今後の展望まで語ってもらった。
(取材日2019年12月9日)
知的障害の子どものためのクリニックとしてスタート
児童精神科とリハビリテーション科があるクリニックは珍しいですが、開設されたきっかけは?

もともとここは社会福祉法人昴が、一般の保育園に入れない子どもたちを受け入れる知的障害児通園施設を運営していて、その子どもたちが病気になった時に診てくれる場所がないということで誕生したクリニックになります。現在は当院の名誉院長である小出博義(こいで・ひろよし)先生が初代の院長で、私が埼玉医科大学の医師をしていた時に「社会福祉法人昴が母体となってクリニックを開くから、院長になってくれないか」とお話があったことがこのクリニックの始まりだったようです。「脳性まひの子にも理学療法をしましょう」という考えが、最初のメインの取り組みになります。
貴院の特徴を教えてください。
リハビリテーションやカウンセリングができるのは、当院の特徴であり強みだと思います。リハビリテーション科には、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士がいまして、それぞれ患者さんに合わせてトレーニングに進むことが可能です。言葉の発達が遅れているなら言語聴覚士、運動が苦手だったり、手先がうまく動かせなかったりする場合は作業療法士、歩き方が屈折している、または偏平足であれば理学療法士が担当し、義肢装具士さんにも来てもらって、靴や装具も作製しています。当院はそういう子たちのニーズに応える場所として立ち上げたため、診療後の支援もスムーズに行えるような体制になっているんです。
来院される方の主訴で多いものは何ですか?

発達障害や知的障害、脳性まひ、てんかんなどが多いですね。最近では不登校の相談も目立ちます。また、そういう方が風邪をひいた際や、近くにお住まいの方が風邪をひいたといって来られることもあります。発達障害の相談は、以前は学校で言われて来院される方がほとんどでしたが、最近はよくテレビなどでも取り上げられるので、「うちの子は大丈夫でしょうか?」と心配されて来る親御さんも増えました。
原因があってその症状として現れる、子どもの不登校
不登校のお子さんやその親御さんへはどのように対応されていますか?

不登校の中には、精神的にうつで登校できない子もいますし、発達障害でコミュニケーションが取れなくて学校に行けない子もいます。知的障害があり勉強についていけず、学校がつまらなくなって行けない子もいます。不登校というのは症状の一つなので、何かしらの原因があって、それが症状として現れているんです。なので、その原因を探らないといけません。ただ、どうしても焦っている方が多いので、「学校に行かなくてもいいよ」と伝えてあげなければならないと思っています。この薬を飲んだらすぐに治るというような特効薬はないので、お話を聞いて、やれることからやっていくしか方法がないんです。
院長に就任された年に、貴院内外の多職種多機関とを連携させるシステムを立ち上げたそうですね。
当院の母体である社会福祉法人昴は、滑川町、嵐山町、小川町、川島町、吉見町、鳩山町、ときがわ町の7町からなる埼玉県比企郡と東松山市、東秩父村と契約をしていまして、このエリアの幼稚園、保育園への巡回を年に1、2回行っています。その際、同院のスタッフが幼稚園、保育園からの意見を拾い上げて、気になる子はクリニックへと促しています。やはりこの領域は保育園や幼稚園、学校などが関与してくることが多いので、クリニックと教育機関とが連携できるシステムをつくっておかなければいけないと考えました。そこで、2016年4月よりハロークリニックの医療機能と、クリニック内外の多職種多機関がスムーズに連携できるよう、「ハロークリニック専門職連携推進室」を立ち上げました。この取り組みは現在、公認心理師や精神保健福祉士でもあるハロークリニック相談支援室の山崎晃史室長が中心となって進めています。
先生が診療の際に心がけていることは?

親御さんからもお子さんからもまず話を聞くことを一番に心がけています。例えばなかなか1回目では話をしてくれないお子さんの場合、回数を重ねることで慣れてもらい、「今日は来てくれてありがとう」とこちらから伝えることで、次回も来てもらうことを目標にしています。また、小児科の医師として一番大事なのは、まず親御さんを安心させることだと考えています。特に発達障害については、ここから正常ここから発達障害などとはっきり線引きできるわけではないので、線引きできないものであることを伝えて、納得してもらえるように努力しています。
自分で表現できない子どもたちの代弁者に
先生のご経歴を教えてください。

北海道の旭川医科大学を1987年に卒業して、埼玉医科大学病院の小児科に研修医として入局しました。研修を明けて、今はもうないのですが、埼玉県幸手市にあった幸手総合病院で1年ほど勤務し、また埼玉医科大学に戻り、その後は秩父市立病院に9年間勤めました。ずっと小児科での勤務です。その後当院に来て、副院長となり、2016年に院長に就任しました。実を言うと私はそこまで志高く医師になろうと思ったわけではないんですね。でも小児科の医師として長年勤務する原動力となったのは、自分で表現できない子どもたちの代弁をしてあげなくてはいけないという思いでした。子どもの代弁者となり、子どもを守るにあたって、小児科の医師が果たす役割はとても大きいと感じています。それは良いところであり、とても難しいところだとも思っています。
先生のリフレッシュ方法は何ですか?
昔からやっているテニスを時々したりしますが、のんびりと過ごすことが多いでしょうか。あとは猫を飼っているので、猫たちと戯れることかな。結構数がいて8匹飼っているんですよ。みんな拾い猫です。それぞれ性格も違って、私に懐いている子もいれば、妻にしか懐かない子もいて面白いんですよね。
今後の展望、読者へのメッセージをお聞かせください。

もう少し患者さんを早く診られるような体制がつくれるといいなと考えています。一般的に発達障害の相談で予約を取ろうと思うと半年待ちになってしまうこともあるそうで、当院でも2、3ヵ月待ちとなっています。半年後、1年後では状態も変わってくると思うので、今のペースは維持したいですね。これだけ発達障害で通院される方が増えているので、もう少し身近なクリニックで診られるような体制ができて、間口が広がれば違うのかなと思います。ただ発達相談は患者さん一人ひとりに時間をかけなくてはなりませんから、なかなか難しいところもありますよね。当院も予約を取るのは少し大変かもしれませんが、気軽に来ていただければ、何らかのお答えを出すことはできると思いますので、心配なことがあったらいらしてください。

