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鬼頭 有代 院長の独自取材記事

有希クリニック

(吹田市/吹田駅)

最終更新日:2023/08/31

鬼頭有代院長 有希クリニック main

JR京都線・吹田駅中央口より徒歩2分のところにある、完全予約制の「医療法人いちえ 有希クリニック」。院長の鬼頭有代先生は、神経発達症(発達障害)などの治療に長年携わり、特に自閉スペクトラム症について専門的に学んできた。鬼頭院長によると、神経発達症を見過ごしたまま大人になり、社会に出てから周囲とうまく付き合えず精神的な問題を抱える人も多いという。そのため同院では、患者の症状をしっかりと見極めて診断し、適切なケアを通じて二次的な障害を防ぐことを大切にしているという。そのため、クリニックには精神保健福祉士も多数在籍し、地域のさまざまな資源と連携することで患者の生活全般のサポートにも努めている。長年神経発達症に向き合ってきた鬼頭院長に、診療方針、地域医療にかける思いなどを語ってもらった。

(取材日2023年7月19日)

開業して約20年、神経発達症の治療にあたる

開業したきっかけについて、教えてください。

鬼頭有代院長 有希クリニック1

大学を卒業してから、精神科の医師として大学病院などで働いていたのですが、結婚・出産と転居が重なりしばらく仕事を離れていました。開業する前は、3年ほど専業主婦をしていたこともあるんです。開業するきっかけとなったのは、自分と同じく医師をしている夫が別のクリニックを開いたことです。開業に必要な手続きや運営に関する仕事を私が担当し、その経験から、自分にもできるのでは、と感じるようになり、子どもが小学校にあがったのを機に、やるなら今だなと思い開業を決めました。

こちらのクリニックでは、主にどのような症状のご相談が多いのでしょうか。

子どもから成人までのうつや不安・不眠などのメンタル全般のご相談と治療に応じていますが、児童精神科として子どもさんの不登校や学校での問題も多くなっています。また、当院の特色である神経発達症の診断を求めて受診される方も いらっしゃいます。神経発達症には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥・多動症(ADHD)、学習症(LD)などがあり、体質的な問題から社会の中でうまく適応できず、不安や落ち込みを抱えたり、わが子の対応に困った親子さんが、お子さんを連れて受診されることが多いのです。ここで改めて「神経発達症」とは、従来の「発達障害」に対する新しい名称ですが、当院では対人コミュニケーションの課題を持つASDの診断とその治療に取り組んでいるのが特色です。

クリニックのお名前にある「有希」は、どのような意味が込められているのでしょうか。

鬼頭有代院長 有希クリニック2

クリニックの名前は、どんな名前をつけても良いわけではないのですが、それにしても大阪は医師の苗字に「医院」をつけただけの保守的な名前が多いな、と感じていました。それというのも、以前勤務していた地域ではカタカナ名の医療機関なども多かったのです。私も精神科の医師なので少しでも明るい印象を持っていただきたいなと思い、私の名前の「有」という字に、言葉としてイメージの良い希望の「希」をつけ、「有希クリニック」という名前にしました。

適切なケアを通して、健やかな成長をサポート

自閉スペクトラム症(ASD)というのは、どのような特徴があるのでしょうか。

鬼頭有代院長 有希クリニック3

ASDの方たちは、周囲とコミュニケーションをとることや、対人関係を築くのが苦手という特徴が挙げられます。人によって特性の出方は異なることがありますが、相手が何を考えているか読み取ったり、自分の気持ちを伝えたりすることがうまくできないという方もいます。小さなお子さんのうちに症状が認められて診断を受ける方もいれば、大人になって初めてASDだとわかる患者さんもいます。

ASDを含め、神経発達症を中心に診るようになったのはどのような理由からですか。

神経発達症の診断希望で来院する患者さんはもちろん、うつなどで来院した患者さんも、治療経過のなかで、隠れていた神経発達症が見えてくることが多いことに気がついたからです。ASDやADHDなど、神経発達症の症状で来院する患者さんは、就学前のお子さんや小学校のお子さんも多くいます。私が開業したばかりの頃は、神経発達症の診断にあたる医師は今とは異なりほとんどいませんでしたし、お子さんを診るクリニックも少なかったため、自然と患者さんが増えていきました。私自身多くの患者さんと接するうちに、ASDを診断するだけではなく、子どもさんから大人までのライフスタイルに合った治療や支援が提供できるように、専門的な手法を学んできました。

診療にあたり心がけていること、大切にしていることはありますか。

鬼頭有代院長 有希クリニック4

しっかりと患者さんの症状を見て診断し、適切なサポートをする、ということです。ASDの方たちは、先ほどお伝えしたように、人によって特性の出方が異なっていて、診断が難しいことがあるんです。そうすると、社会に出てから周囲とうまくやっていけずに、悩んだり落ち込んだりし て、私たちはこれを「二次性障害」と呼んでいますが、人によってはうつや引きこもりになってしまうこともあるんです。ただ、早いうちから適切なサポートをすることで、二次性障害は防ぐことができます。「早期発見、早期療育」のために、当クリニックでは法人内での療育機関と連携を図っています。

病気の治療だけではなく、福祉の面でサポートも

クリニックのスタッフは、何人くらいいらっしゃるのでしょうか。

鬼頭有代院長 有希クリニック5

常勤が私を含めて7人、非常勤まで入れると13人の体制です。開業当初から特に力を入れていたのは、精神保健福祉士による相談の充実です。いわゆる「医療」だけでは、患者さんにとって本当に必要なことをすべてサポートをすることはできません。当院では病気に対する直接の治療だけではなく、福祉分野との連携を通じて患者さんが安心して治療を受けられる環境を整えるために、市役所に同伴して相談したり、患者さんが社会に出ていく上で必要なプロセスをサポートしています。精神科というと薬を使った治療やカウンセリングというイメージが強いかもしれませんが、患者さんが健康的な人生を送るためには、治療とともに生活していく基盤を整えていくことが大切だと考えています。

医療だけではなく福祉の領域も力を入れているんですね。

そうですね。法人化して、医療だけではなく福祉と連携してサポートできる体制になっているのは、当院の大きな特徴の一つだと思います。私がこの診察室で患者さんにできることは、診断と治療の方針を立てることだけになっていて、ASDの患者さんが社会で生きていくための支援としては、福祉の面からのケアが大きな力となります。スタッフ一丸となってサポートした患者さんが、すてきな笑顔を見せてくれたり、頑張ってますと報告してくださるのが、何よりの喜びにつながっています。

最後に、患者さん、地域の皆さんへのメッセージがありましたら、お願いいたします。

鬼頭有代院長 有希クリニック6

精神科領域の問題は、症状や治療に対する考え方が日進月歩で変化しています。私自身クリニックを始めて20年になりますが、患者さんにとって最適な選択肢をご提供できるよう、常に新しい情報を確認する必要性を感じているんですね。中でも神経発達症は体質的なものなので、「治す」ということではなく、適切なサポートを早い段階から提供することで、二次性障害を防ぎ、その人らしい豊かな人生をめざせると考えています。思い当たる節がある方やご家族の方は、自分たちだけで悩まずに、ぜひ医療や福祉の専門的なケアが受けられるよう、ご相談ください。

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