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福本 素由己 院長の独自取材記事

今川クリニック

(大阪市福島区/福島駅)

最終更新日:2020/04/01

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昔から心理面から何かを分析することに興味があったという「今川クリニック」の福本素由己(もとゆき)院長。研修医時代はどの科に行くか迷ったこともあったが、恩師との出会いを経て精神科の道を志したという。大阪大学大学院の博士課程で論理的な思考を身につけ、その後は数々の現場で研鑽を積んできた。2018年院長就任後は、認知症、睡眠障害、リワークプログラム、適応障害、思春期の問題など、患者のさまざまな要望や悩みに対応する毎日を送っている。常に患者を思いやり心を寄せる福本院長に、診療方針や心がけていることなどを聞いた。
(取材日2019年8月5日)

幅広い視点から認知症治療に臨む

こちらは19年前に前院長の今川正樹先生が開業されたそうですね。

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はい。先生は2000年の開業当時から認知症予防に注力されていて、抗認知症薬に頼らない診療も重要視されていました。中でも芸術と精神の関係に着目しており、ご自身は写真も上手で詩集も出されており、芸術に造詣が深い方でした。僕自身大学時代は写真部だったので今川先生とは話が合いましたね。それからご指導を受け2020年春に継承させていただく予定でしたが、2018年に今川先生が急逝されたため予定を早めて継承する運びとなりました。同時に先生の考え方も受け継ぎ、認知症の方に、例えば夏の思い出という題で文章を書いたり、絵を描いていただくことがあります。今はより取り組みやすいようアレンジした塗り絵を用いることもありますし、注意深くきっちり写す作業や計算、字の練習もします。こうしたことを「次までにやってきてください」と言うと、ご本人もご家族も喜んでくださります。会話が増えて、より良い対話につながればと思います。

認知症の治療方針について教えてください。

当院では軽度認知障害になったら治療を始めましょうとお伝えします。軽度認知障害の自覚をもってから年に10%ぐらいの方が認知症に進むといわれ、つまり5年で約50%の人が認知症になるということです。ですから早めに取り組んで進行を緩やかにする取り組みと、認知症になってから進行速度を緩やかにする取り組みの両方が必要です。介護を続けるのは大変なことなので、その時間を短くすることはご本人やご家族にとっても非常に重要なんです。また、今までの研究でアミロイドベータという物質が脳の中にたまるとアルツハイマー型認知症になりやすいことがわかってきたので、早めに兆候がないか掴むための検査も重要だと考えています。

思春期の問題にも力を入れているそうですね。

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例えば不登校の場合、今は引きこもってもインターネットがあるのでずっと時間が使えるわけです。脳の機能がある程度使われるから退屈しない。まずは現状を本人と家族に認識してもらった上で、診療方針を提案するようにしています。10代だと自分の気持ちをうまく言えないことも多いので、意見をくみ取ることが大事ですね。患者さんには練習に1行日記を書いてもらい、それをもとに質問しながらコミュニケーションを取る練習をします。コミュニケーション能力というのは、自転車のように身につけるためには練習が必要です。引きこもりの子は相談できないから難しいという方もいますが、相談先がないという方には、ぜひ来ていただきたいですね。話して状況が良くなることはたくさんあると思います。我慢することではなく相談することにエネルギーを費やしてほしいですね。

論理的に説明を尽くし、相談しやすい環境にも心を砕く

休業中の方の復職に向けたリワークプログラムの方針を教えてください。

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コミュニケーションが得意でない方が人間関係にエネルギーを費やしたら、仕事に使う集中力が不足してミスが増えてしまいがちです。それで怒られて緊張して、余計に精神エネルギーを使う悪循環になっていくこともあるでしょう。会社が億劫になる原因は大きく分けると3つあると考えられ、人間関係、仕事の質、仕事の量のどれかが苦しくなっていることです。そこを理解して、適切なアプローチをしないといけません。適応障害が長く続くとうつ病になりやすいので、それを防ぐためにも、まずは家でゆっくり休むことが目標です。その後は、家で好きなことができる、そしてさらに外に出たりできる状態に持っていけるお手伝いをします。国による働き方改革もあるので、考え方が真面目で休めない人には、「今は法律が変わったから」と休める根拠を示してあげると受け入れられやすいですね。

睡眠障害への対応はいかがでしょうか?

睡眠の問題は、多くの場合寝ているつもりが睡眠の質が悪くてしっかり寝られていないというもの。 主な原因は2つあって、1つは睡眠時無呼吸症候群。もう1つは今、24時間退屈しない社会状況が整っていることです。僕も思春期の子たちを理解するために動画配信を見るのですが、面白くて夜中まで見ていられるんです(笑)。本当は寝る1時間前には準備をして、眠くなってから布団に入るのが理想の睡眠には必要です。だけど今は布団の中でSNSを触っています。そういうあまり良くない生活をしている人が多いわけですが、その意識を変えていかないといけません。とにかく若い人は睡眠をしっかりとることが大事なので、時には副作用が少ない薬を用いて調整していきます。

診療時に心がけていることはありますか?

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精神科はハードルが低くなったとはいえ、皆さん不安に思って来ていると思うので、ちゃんと挨拶したり笑顔を絶やさないようにしたりして、話しやすい環境づくりを心がけています。あとは、いかにその方の目線になれるかも重要視しています。相手の気持ちに立つって、言葉は簡単だけど実際にはすごく難しいことです。なので診察以外の時間でも思春期の患者さんを理解するために動画を見るなど、いろいろと勉強が必要です。精神科医師は子どもから高齢者まで診るので、どの年代の人にも心から「つらいよね」と言える、それが僕の理想の精神科医師です。専門の医師として必要な知識を持ち、論理的な思考でわかりやすくその人に合った言葉で説明できるように、広い視野に立って一人ひとりの患者さんに寄り添いたいと思っています。

他の人には言えないことも相談できる場でありたい

診療の中で忘れられないエピソードはありますか?

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いろいろありますが、一つは家族関係に問題があった思春期の女の子です。深刻でつらい体験をしたことから、歩道橋から飛び降りて骨折してしまいました。入院させたのですが親御さんに頼れる状況ではないことがわかり、おばあさんや市役所の方を呼んで協力をお願いしました。僕が出会った時はまだ16歳でしたが、その後はバイトで認められて正社員になり、今度職場で出会った方と結婚するそうです。あの時もし、精神状態が落ち着いたからと家に帰していたら、またトラブルに巻き込まれていたでしょう。そうした複雑な状況は理論だけでは解決できませんし、周囲の人たちを動かすほどの熱意を示せて良かったと思っています。

今後の展望を教えてください。

今はテレビなどにたくさんの情報がありますが、うまく伝わっていません。皆さんに正しい知識をどのように得てもらうかは大事なことですし、啓発活動を行って精神疾患や認知症の予防につなげたいと思います。ただ難しい言葉で言うだけでは伝わらないので、例えばボードゲームや麻雀をコミュニケーションツールや認知機能の低下防止に役立てるなど、そういった取り組みを他分野の方と組んで行っていくことが大きな目標です。また、スポーツ精神医学や、障害者スポーツ分野の知識もあるので、アスリートのメンタルトレーニングの重要性も広めていきたいですね。アスリートのメンタルトレーニングやカウンセリング、治療にも力を入れていきたいです。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

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来ていただいた患者さんには、他の人には言えないことも言えると感じてもらえるようになり、こちらはきちんとくみ取るということを積み重ねていきたいと思っています。またご家族の方にお伝えしたいのは、内科などと違って精神疾患はどんな病気にしても改善まで時間がかかります。その分ご家族の負担が非常に大きいので、まずは自分が無理をしないことと、頼れる人がいっぱいいることを知ってほしいです。皆さんが思っているより行政はいろいろと用意していますが、それにつながらない人がたくさんいます。当院では専門の社会福祉士が医療福祉に関するさまざまなご相談を随時受け付けております。頼れるところに頼るためにも、一人で悩まず相談していただければと思います。

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