松前 彰紘 副院長の独自取材記事
松前内科医院
(一宮市/名鉄一宮駅)
最終更新日:2025/07/14

長年地域のかかりつけ医として健康を支えてきた「松前内科医院」。これまで同院が築いてきた地域医療の基盤をさらに強固にすべく新たな風を吹き込むのが、2025年5月に副院長に就任した松前彰紘先生だ。彰紘副院長はいずれは地元一宮市に戻り自身の力を還元したいと研鑽を積み、糖尿病や内分泌疾患を中心に幅広い内科診療を経験してきた。患者一人ひとりの声に丁寧に耳を傾け、その人の生活や価値観に寄り添う診療を大切にしながら、在宅医療の強化や職員が働きやすい環境づくりにも力を注ぐ。「地域に必要とされ、愛されるクリニックであり続けるために、努力を重ねたい」と、彰紘副院長は前を見据え、真っすぐに語る。そんな熱い想いを胸に、温かく、安心できる医療のかたちを模索し続ける彰紘副院長に、その信念と展望を語ってもらった。
(取材日2025年6月5日)
信頼されるかかりつけ医をめざし、地元に還元したい
副院長に就任された、今の思いをお聞かせください。

副院長として入職してあらためて感じるのは、理事長である父と母がずっと頑張って築いてきた「松前内科医院」というクリニックが、地域の中で本当に大きな役割を果たしているんだなということですね。例えば、訪問診療やリハビリなどにも取り組んでいて、普通のクリニックだと通院が難しくなった段階で在宅専門のクリニックに切り替えることが多いと思うのですが、当院ではそこがすごくスムーズにできています。つなぎ目のないシームレスな医療の在り方について、この1、2ヵ月だけでも学ぶことがたくさんありますね。
これまで積まれてきた経験について、詳しく教えていただけますか?
名古屋医療センターで初期研修を受けましたが、三次救急を担う大きな病院だったので、いろんな症例にふれられて本当に勉強になりました。私の代からスーパーローテート方式という新しい制度が始まりました。初期研修後の3年間で内科系のいろんな科を3ヵ月ずつ回りながら、主治医として専門的な治療も担当させていただけて、多くの先生に教わりながら実践的に学べました。その後、6年目から中部ろうさい病院に移って4年間、糖尿病診療を中心に経験を積みました。それまでも糖尿病を扱う期間はありましたが、こちらではより専門的に深く関わることができました。こうした経験を通じて、糖尿病を中心にしつつ、幅広い内科診療にも対応できるよう心がけています。
得意とされている治療は何でしょうか?

一番は糖尿病の治療ですね。内分泌疾患では、特に甲状腺に関する診療を得意としています。そのほかにも副腎や下垂体など、内分泌全般を専門的に診ていますが、こうした病気は対応できる医療機関が限られているので、地域で診られる体制を整えておくことは大事だと感じています。最近では、日本内科学会総合内科専門医の資格も取得しました。これまで内科全般で積み重ねてきた経験を、資格というかたちでわかりやすく伝えられればと思ったのも、取得のきっかけの一つです。専門領域に加えて、幅広い内科診療に対応できるようになったことで、地域の中で総合的に診ていく体制も整ってきたと感じています。専門的な知識だけに偏らず、患者さんのさまざまな症状にしっかり向き合えるような医師でありたいと思っています。
専門知識だけでなく、人として向き合う診療を大切に
診療時では、どういったことを心がけていますか?

適切な治療を患者さんに提供することです。ガイドラインをわかりやすくかみ砕いて伝えながら、納得いただけるように治療を組み立てていくことを大事にしています。また、患者さんの話をよく聞くことも意識しています。これはかかりつけ医として非常に大切な部分だと感じています。患者さんが言いたくても言えなかったことが、実は重要な病気のサインだったり、治療方針を左右する大事な情報だったりすることもあります。ですので、何もなさそうな方でも「何か気になることはありませんか?」と声をかけて、話を引き出すようにしています。その方が何を大事にしているのか、どういう生活をしているのかを知ることで、その方にとってベストな治療を一緒に考えていけると思っています。
一人ひとりの患者さんに寄り添った治療を大切にされているのですね。
医学的なベストとその方にとってのベストは、必ずしも一致するとは限りません。例えば、インスリン治療が必要な方であっても、ご高齢でご自宅にお住まいで、毎日の注射や血糖測定が難しい方もいらっしゃいます。そういう時には、患者さんが大事にしていることや希望を伺った上で、できる範囲の中でベストを一緒に探していく。そういう姿勢が大切だと思っています。また、話し方や接し方にも気を配り、患者さんに安心して何でも話してもらえる雰囲気づくりを意識しています。医療者から見たら「大したことない」と思えるようなことでも、患者さんにとっては大きな不安を伴うことかもしれません。そういう声にもきちんと耳を傾けて、真摯に対応するようにしています。
スタッフの皆さんとは、どういった関係性を築いていきたいと考えていますか?

当院がここまで成長できたのは、スタッフの皆さんの力があってこそだと思っています。患者さんにとって最良の医療を提供することはもちろんですが、それと同じくらいスタッフの皆さんが働きやすく、愛することができるクリニックであることも大切にしています。患者さんファーストを追求すると現場に負担がかかることもあるので、そのバランスをスタッフの皆さんと話し合いながら模索していきたいです。安心して働ける環境が整えば、患者さんにもより良い医療が届けられると信じています。これからもスタッフファーストと患者さんファーストを両立させ、働きやすい職場をめざしていきます。
元気なうちにこそ、体に少しでも目を向ける意識を
日頃の健康への向き合い方について、地域の方々に伝えたいことはありますか?

生活習慣病、特に糖尿病をはじめとした慢性疾患について少し意識をしていただけたらと思います。というのも、こういった病気は症状が出にくいために、血圧やコレステロール、血糖の値がちょっと高かったとしても、ご本人としては「元気だから大丈夫」と思われることが多いんですね。しかし、その状態のまま放っておくと、命に関わる合併症につながってしまうことがあります。一方で、しっかりと管理すれば合併症のリスクを抑えられて、健康な方とほとんど変わらない生活や寿命を保つことも望めます。だからこそ、少しでも気になることがあれば、気軽に相談していただきたいです。「今は元気だから大丈夫」ではなく、「今元気なうちにこそ、少し目を向けてみる」、そんなふうに日常の中で健康に関心を持っていただけると、私たちもお手伝いしやすくなるのかなと思っています。
今後の展望を教えてください。
まず、しっかり取り組んでいきたいことは、糖尿病に対するさらなる専門的な診療です。例を挙げると、インスリンポンプ療法といった高度な治療法を必要とする患者さんにも、より専門性の高い医療を提供できるようにしていきたいと思っています。そしてもう一つは、在宅医療の分野です。当院が取り組んでいる在宅医療の重要性は日々強く感じていて、通院が難しくなった患者さんに対しても、無理なく必要な医療を届けられるよう、検査や治療の選択肢を増やしていけたらと考えています。地域のクリニックだからこそできる、きめ細かく実用的な医療、そういったものをしっかりと根づかせていくことが、今後の私の大きな目標です。
最後に、読者にメッセージをお願いします。

いずれは地元に戻って、地域の皆さんのかかりつけ医として診療したいという思いがずっとあったので、今こうしてそれが実現できて、本当にうれしく思っています。病気のことは、わからないことが多いと思いますし、わからないということは、大きな不安も伴います。その不安を抱えたままだと、なかなか前に進めない、ということもあるでしょう。だからこそ、どんな小さなことでも気軽に相談してほしいと思っています。どんなことでも耳を傾けて、一緒に考えて、できる限り対応していきたい。それが私の一番伝えたいメッセージです。どうぞ遠慮なく、いつでも声をかけてください。皆さんのお役に立てるよう、しっかりサポートしていきたいと思います。