天野 統示 院長の独自取材記事
あまの歯科
(大阪市西区/九条駅)
最終更新日:2022/07/01
九条駅から歩いて5分のところにある「あまの歯科」は、70年以上の歴史がある。3代目院長の天野統示(あまの・もとし)先生は、2013年に同院を継承した。継承後は建物全体をリフォームし、町の景観になじむ明るく開放的な空間にするほか、歯科用CTなどの検査機器も一新。衛生管理に力を入れるなど、幅広い年齢層の患者が来院しやすいような環境を整えている。診療では丁寧な説明を心がけ、画像を活用して可視化するなど、患者が安心・納得できることを大切にしている。設備の充実にも熱心で、患者のために役立つ先進の機器を積極的に導入している。現在の場所で根を張って診療していくという天野院長に、診療ポリシーや地域の歯科医療にかける想いを聞いた。
(取材日2020年8月25日)
開業医として幅広く対応しながらも、予防歯科に注力
得意な診療分野を教えてください。
開業医は、あらゆる治療に対応することが求められます。そのため、専門分野をあえて絞らず、幅広く学んできました。治療技術の習得だけでなく、正しく診断して、必要な場合は適切な医療機関に紹介できるよう、矯正専門の歯科医院の勤務も経験しています。近年はインプラントが普及していますが、歯周病などが原因で歯の健康を維持できなくなった場合を考えると、入れ歯の需要は今後もあると考え、勤務医になった頃からずっと勉強会に参加し、多くの症例にもふれてきました。今では紹介で入れ歯の調整に来られる患者さんもおられます。
注力している診療内容はありますか?
当院では予防歯科に注力して取り組んでいます。できるだけ歯を長く残すため、「悪くなってから」ではなく、「悪くなる前に」歯科医院に行くという意識を広めるため、定期検診の必要性をわかりやすく伝え、納得していただけるように努めています。定期検診を続けていると、早期に虫歯を発見することもでき、虫歯になっても削る部分が少なくて済むでしょう。また、生涯にかかる歯科治療費も、定期検診を受けている人とそうでない人とでは大きな差があるので、美容室に行く感覚で、定期的なケアをお願いしています。とはいえ、面倒なことは続けにくく、予防ケアを継続するのは簡単ではありません。最初から100点をめざすのではなく、まずは70点をめざせたらと考えています。
定期検診は歯周病の予防にも役立ちますね。
歯周病の予防・治療の基本は、定期検診でのクリーニングです。どれだけきちんと歯磨きをして見た目がきれいでも、バイオフィルムという透明な細菌の層が歯の表面についてしまいます。これは歯科医院でないと除去できないため、歯が丈夫で虫歯にはならなかったけれど、歯周病になってしまったという方も少なくありません。また、歯周病は重度でない限り自覚症状が出ないので、歯が不安定になってから気づくケースが多いため注意が必要です。さらに、歯周病が心筋梗塞や脳疾患など、全身の健康状態に影響することも明らかになってきています。放置するとリスクが伴いますから、自分の歯と体の健康を守るために、まずは4ヵ月に1回の受診をぜひ習慣にしてほしいですね。
先進の機器を導入し、診療の「見える化」に努める
診療の際に心がけていることはありますか?
できる限り丁寧に説明するとともに、口腔内CCDカメラで撮影した画像や模型などを使い、口腔内の状態を「見える化」しています。当院の場合、虫歯を削っている際も、患者さんご自身でミラーつきライトを見て確認してもらうんですよ。患者さんの中には、歯科診療に対して「何をされているかわからない」「本当に虫歯なのか」と感じる方もいらっしゃると思いますし、中には「勝手に治療された」「無理やり治療された」というマイナスなイメージをお持ちのケースもあるので、患者さんがご自身の歯を見て、納得してもらうことが大切です。
新しい設備の導入にも積極的ですね。
年に1つは、患者さんのために役立つ機器や設備を入れることをモットーとしています。 最近では、スキャンした口腔内のデータをもとに、コンピューターで歯の詰め物やかぶせ物を作れるCAD/CAMシステムを導入しました。院内で技工物が作れるため、患者さんの負担が小さくなるのが大きなメリットですね。型採りをスキャンで行うので、従来の型採りで嘔吐反射が出てしまったり、味が苦手だったりする方にもお勧めできますし、金属を使わないメタルフリー治療にも役立ちます。ただし、歯の状態や部位によっては折れてしまう可能性があるため、適用できない部位もあります。患者さんに適応するかどうかを慎重に判断し、適応する患者さんに対しては、メリットとデメリットをきちんと説明した上で選択してもらうようにしています。
新しく始めた診療はありますか?
当院では、新たにマウスピース型装置を用いた矯正を開始しました。これまでの矯正は、メンテナンスやトラブルへの対応が難しく、一般の歯科診療と並行して行うには無理がありました。マウスピース型装置を用いた矯正なら、矯正のすべてのステップをあらかじめシミュレートできるので、想定外のトラブルなどが起こるリスクが低く、一般歯科の診療をしながらの矯正も対応しやすくなります。この方法には以前から興味があったのですが、最近になって技術の進歩を実感したので、取り入れてみようと思ったのです。また、型採りの負担を軽減するために、マウスピース型装置の型採り用の口腔内スキャナーも導入しました。
新しいレーザー機器も導入されたと伺いました。
従来のものに比べて、透過性に優れたレーザー機器を導入しました。治療したい部分の奥深くまで光が到達するので、歯や歯茎の奥の部分で腫れているなど、治りにくいところの治療に活用しています。また、知覚過敏の治療にも役立つことが期待できます。さらに、出血が少ないため、お子さんの小帯の切除などにも向いています。
地域に根差した診療を継続していきたい
歯科医師をめざした理由や、現職を継承した経緯をお聞かせください。
父は「好きなことをすればいい」と言ってくれましたが、歯科医師をしていた父のようになりたいという想いから、歯学部へ進みました。もともとは開業するつもりでしたが、父が倒れて急きょ診療を手伝うことになり、父の他界後に継承しました。父と一緒に働いたのは1ヵ月だけで、幼少期からも父の働く姿はほとんど見ていないのですが、夜遅くまで仕事を続けていて、やりがいがある仕事だと感じていました。患者さんから、「先生の顔を見たら元気になった」と言われると、本当に励みになります。
どのような患者さんが来られますか?
0歳から90代まで幅広い年齢層の方が来院されています。3世代にわたり受診されているご家族もおられ、祖父が診ていた患者さんも通院されているんですよ。最近はこの周辺にマンションが建設されて、若い方や子育て世代の方の受診も増えています。ご高齢の患者さん同士が当院を待ち合わせ場所にしておられたり、患者さんがいろいろなお話をしてくださったりすることが多く、患者さんがリラックスできる場所だと思うと、とてもうれしいですね。おかげで、スタッフのコミュニケーション能力も随分と向上して、患者さんからの信頼度もアップしていると感じています。
今後の目標を教えてください。
最終的には「僕の出番がない」「治療する歯がない」というのが目標です。入れ歯の調整以外治療する必要がなく、あいさつをするだけ。歯科衛生士が定期検診のクリーニングをするのみという歯科医院ですね。そんな歯科医院は、患者さんが日常のケアをきちんと行ってはじめて実現できることですからね。また、僕自身のことでいえば、患者さんへの説明技術をもっと磨きたいと考えています。説明することと伝えることはまた別なんです。なぜこの治療が必要なのか、どうすれば患者さんが治療へのモチベーションを高く持っていただけるのか、納得いただけるように「伝える」ことを大事にしていきたいと思います。
読者へのメッセージをお願いします。
日本は先進国の中でも、口内環境が良くないといわれています。お口の健康を守るためには、治療することよりも、歯を悪くしない、削らないことが何よりも大切です。最近は予防歯科の大切さや、歯周病の怖さなどが知られるようになってきたと感じていますが、予防意識をさらに浸透させ、少しずつ患者さんの意識を変えていきたいと考えています。定期検診のタイミングや適したケアの方法などは、患者さん一人ひとりの歯の状態によって異なります。ぜひ気軽に、当院にご相談ください。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/1本30万円~、マウスピース型装置を用いた矯正/45万円~+調整費月額2000円~、オフィスホワイトニング/3万円~、ホームホワイトニング/2万5000円~、セラミック/4万円~、ジルコニア/6万円~
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。