全国のドクター14,309人の想いを取材
クリニック・病院 157,745件の情報を掲載(2026年6月15日現在)

ドクターズ・ファイル会員でできること

予約情報をマイページ上で管理できます!

過去の予約を一覧化

予約内容の確認

予約の変更・キャンセル※

※一部対象外の医療機関もありますので、あらかじめご了承ください

会員登録がお済みでない方は

すでに会員の方は

  1. TOP
  2. 大阪府
  3. 大阪市港区
  4. 朝潮橋駅
  5. 橋本歯科クリニック
  6. 橋本 貴美子 院長

橋本 貴美子 院長の独自取材記事

橋本歯科クリニック

(大阪市港区/朝潮橋駅)

最終更新日:2026/06/12

橋本貴美子院長 橋本歯科クリニック main

大阪メトロ中央線・朝潮橋駅から徒歩11分、ファミリー層から高齢者まで幅広い世代が暮らす住宅街に「橋本歯科クリニック」はある。テラコッタ調の外壁にグリーンの文字が映える同院は、先代が昭和30年代に開業して以来、長きにわたり地域の歯科医療を支えてきた。2005年に院名を改め再出発を切り、現在院長を務める橋本貴美子先生は、入れ歯治療を得意とし、訪問歯科診療に情熱を注ぐ。「訪問診療が好きなのは、その場で患者さんが食べられるかどうかを確認できるからなんです」と語る明るい笑顔が印象的だ。患者の暮らし全体に目を配り、家族への負担にもこまやかに心を砕く診療姿勢からは、歯科の枠を超えた温かさが伝わってくる。口から食べる喜びを守り続ける訪問歯科への思いを聞いた。

(取材日2026年4月27日)

歴史ある歯科医院で、入れ歯の専門家が訪問診療に尽力

まずは、クリニックの成り立ちについてお聞かせください。

橋本貴美子院長 橋本歯科クリニック1

もともとは義父が昭和30年代後半から、この場所で一人で歯科診療を続けていた歯科医院です。義父と義母の二人三脚で、長年にわたり地域の方々の歯を守ってきました。やがて患者数が少しずつ減っていったこともあり、弟と相談してリフォームを実施し、2005年7月に「橋本歯科クリニック」として再スタートを切りました。初めの頃は弟と妹、歯科助手を合わせた4人体制でしたが、患者さんが少なかったことで、それなら私が外に出ようと自転車で地域を回り始めたのが当院の訪問歯科の原点です。2020年に院長を引き継ぎ、現在外来は女性の先生や弟が担当しており、定期クリーニングに通ってくださる方にも支えられています。

先生ご自身のこれまでの歩みについて教えてください。

入れ歯に対する専門性を磨いたのは、実父の影響が大きいです。実父は大阪の都心部で歯科医院を営んでいるのですが、入れ歯治療を希望される患者さんが非常に多く、「これからは入れ歯の時代だ」と学生時代に言われた一言がずっと心に残っていました。大阪歯科大学では入れ歯を専門とする分野で学び、その延長で高齢者歯科にも携わりました。卒業後はビジネスマン中心の歯科医院や、お子さんからご家族まで幅広く診る歯科医院など複数の職場を経験しています。その傍ら、訪問診療や病院の入院患者さんへの歯科治療にも携わるうちに、やはり入れ歯と訪問歯科の世界に自然と携わるようになっていきました。いろいろな現場を見た上で選んだ道なので、迷いはありませんでした。

訪問診療を始める際、どのようなことを大切にしていますか?

橋本貴美子院長 橋本歯科クリニック2

きっかけとしてはケアマネジャーさんから「口の中を一度診てほしい」とご連絡いただくことが多いですね。長年当院に通われていた方が通えなくなり、ご本人やご家族から依頼をいただく場合もあります。ただ、私が大切にしているのは、安易に訪問診療へ切り替えないことです。つえや手押し車で懸命に通ってくださる方にとって、通院は外に出る大切なきっかけかもしれません。「明日は歯医者だから頑張ろう」と前向きな気持ちになってくださるかもしれない」と、スタッフには話しています。付き添い通院される日が離れて暮らすご家族との貴重な面会の機会になっていることもあります。ご本人やご家族の意思を第一に、ケアマネジャーさんやホームヘルパーさんの声も踏まえて総合的に判断するようにしています。

噛めること、飲み込めること。口から食べる力を支える

訪問先では、具体的にどのような診療をされていますか?

橋本貴美子院長 橋本歯科クリニック3

まずは口の中のクリーニングと、歯石があれば取ることが基本です。訪問診療の初診では口腔ケアも含めてすべて私自身が行っています。入れ歯に不具合があればその日のうちに修理し、噛み合わせには特に気を配ります。入れ歯を外したままにすると噛み合わせが変化してしまうので、できるだけ預からずその場で直してお口に戻すようにしているんです。過去に作った古い入れ歯を修理して使用できるよう努めることもあります。虫歯の治療も行いますし、抜歯が必要な場合は専門の歯科医師に訪問での対応を依頼します。最近は歯がすべてご自身のものという高齢の方も増え、口腔ケアや舌や口唇の体操、発音訓練などリハビリが中心になるケースも多くなってきました。

診療を通じて一番大切にされていることは何ですか?

やっぱり口から食べることが一番大事、それが私の診療の軸です。往診が好きなのは、その場で食べられるかどうかが確認できるからでもあります。治療を終えたら冷蔵庫を開けさせてもらって、何か食べてみてくださいとお願いするんです。患者さんの表情を直接見られることが、訪問歯科の一番の醍醐味(だいごみ)であり、外来診療とは大きく違う点ですね。例えばおかゆなどのやわらかい物しか食べていないという場合、「今のお口の状態ならご飯粒も食べやすくなると思いますよ」とお伝えすることもあります。訪問先では食べ物が偏りがちな方も多いので、栄養面の助言をすることもあります。甘い飲み物を常飲している場合は、飲食後に水やお茶を飲むようお伝えすることもあります。ちょっとした工夫が虫歯のリスクを下げることにつながるんですよ。

患者さんやご家族への配慮で心がけていることはありますか?

橋本貴美子院長 橋本歯科クリニック4

まず気をつけているのは、ご家族に負担をかけないことです。介護で精一杯のご家族に「あれもこれも」とお願いするのではなく、本当に必要なことだけをお伝えするようにしています。口の中の写真を撮って離れて暮らすご家族に共有することも大切にしています。訪問日も、入浴やデイサービスのスケジュールと重ならないよう調整していますね。また、意外と多いのが「歯磨きは洗面所でするもの」という固定観念から枕元やテーブルに歯ブラシとうがい受け、コップを置くだけで十分ですよとお伝えすると、驚かれる方が多いですね。嚥下のリハビリでもご家族に負担のないよう、「舌を出す」「声を出す」といった声かけをホームヘルパーさんにもお願いし、内容を紙に書いてご自宅に貼ることで、日常的に口周りを動かす環境をつくっています。

支えてくれるスタッフと守る、訪問歯科のこれから

日々の訪問診療は、どのような体制で回られていますか?

橋本貴美子院長 橋本歯科クリニック5

訪問診療には歯科助手が同行し、運転や連絡調整、ケアマネジャーさんとの橋渡しまで担ってくれています。私の思いを関係職種へ伝え、必要な情報を整理して届けてくれる存在で、「彼女の支えがあるからこそ診療が成り立っている」と感じています。外来のスタッフも長年勤めてくれる地元の方が多く、とても心強いですね。訪問歯科にはケアマネジャーさんやホームヘルパーさん、訪問看護師さんら多職種との連携も欠かせません。患者さんのご自宅に置かれた連絡ノートや、アプリなどを活用しながら必要な情報をスピーディーに共有し、多職種が連携しながら、みんなで患者さんの生活を支えていきたいと思っています。

これから先、力を入れていきたいことはありますか?

私自身が元気なうちは、訪問歯科診療をずっと続けていきたいと思っています。一方で、最近は歯がすべて残っている方も増えてきて、口腔ケアが中心であれば歯科衛生士が一人で訪問できる場面も多いんです。介護保険にはそうした制度もありますので、訪問看護師さんが自転車で地域を回るように、歯科衛生士が患者さんのもとを訪ねる体制をつくっていきたいですね。外来についても、非常勤の先生に診療に入ってもらう機会を増やしていけたらと考えています。子育てが落ち着いた女性歯科医師が、柔軟に働ける場に当院がなれたらうれしいですね。スタッフにも恵まれ、地域に支えられてきたこの歯科医院を、次の世代にもつないでいきたいと思います。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

橋本貴美子院長 橋本歯科クリニック6

皆さんにお伝えしたいのは、「最期までおいしく口から食べる喜びを大切にしてほしい」ということです。噛む力だけでなく飲み込む力も少しずつ衰えていきますが、嚥下のリハビリは特別な道具がなくても「舌を出して」「しっかり声を出して」という日々のちょっとした声かけや習慣の積み重ねが大切です。ご家族や周囲の方が少し意識を向けるだけで、大切な方の口の健康を守る一歩になります。日頃から口周りをしっかり動かしておくことが、いつまでもおいしく食事を楽しむための秘訣だと日々の診療を通して実感しています。ちなみに、私自身は、休日に娘や友達と旅行に出かけたり、家族に会いに行ったりする時間が何よりのエネルギー源になっています。私自身も元気に診療を続けながら、これからもスタッフと力を合わせ、患者さんの笑顔につながる診療を続けていきたいですね。