休めない親の強い味方
「病児保育」施設の活用法
山口小児科内科
(世田谷区/上野毛駅)
最終更新日:2022/01/13


- 保険診療
核家族化や夫婦共稼ぎが当たり前になった今、仕事と子育ての両立をサポートするため2000年頃から国が積極的に取り組み始めた病児保育。究極の育児支援ともいわれるが、一般には今一つ理解が進んでいない。そこで、施設利用にあたっての条件から、最近の病児保育事情、運営にあたっての苦労話まで、2004年に自身の医院である「山口小児科内科」の2階に病児保育施設「シェ・モア」を開設したという小児科医の山口義哉院長に聞いた。
(情報更新日2021年7月29日)
目次
充実したスタッフ体制と質の高い医療・保育で働く親をいつでもサポート
- Q施設の利用基準はありますか?
-
A
▲病児保育施設「シェ・モア」は同院の2階に設けられている
こちらは世田谷区の委託事業として運営していますから、区の定めた基準を満たしている方が利用できます。世田谷区内に住所があり、認可保育園や認定こども園など区の指定する保育施設をすでにご利用されている生後5ヵ月から就学前の乳幼児であることが前提となります。お預かりできる症状は、かぜや下痢など日常よく見られる疾病や、水痘・風疹・インフルエンザなどの感染症、喘息などの慢性疾病、熱傷などの外傷性疾病です。ただし、麻疹(はしか)や結核、重症で入院が必要な場合、1歳をすぎてMR(麻疹・風疹混合ワクチン)が未接種のお子さんはお預かりできません。麻疹は感染力が非常に強く、他のお子さんに感染する恐れが高いからです。
- Q利用までの流れと、必要な持ち物を教えていただけますか。
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A
▲子どもが安心できるよう、愛用のおもちゃの持ち込みも可能
区の保育課に登録申請をして登録番号をもらい、その番号で予約を入れ、診察を受けてから保育施設へ預ける、という流れです。保育施設ごとに予約方法や診察する医療機関は異なりますが、当院の場合、ホームページから予約を入れていただき、当院の1階で私が診察して2階の保育施設でお預かりする、という形をとっています。持ち物は初回のみ児童票が必要となり、その後利用ごとに必要なのは、利用票、利用料金、母子手帳、健康保険証、医療証、ミルク・離乳食・お弁当・飲み物など飲食関連、哺乳びん・乳首・皿・箸などの食器類、おむつ・着替え、汚れ物を入れるビニール袋、薬、必要であればお気に入りのおもちゃ・絵本などです。
- Q熱があるだけ、という場合でも預かったいただけるのでしょうか?
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A
▲感染症にかかった子どもを預かることができる隔離部屋も完備
熱はお預かりする基準のひとつですので、もちろんお預かりできます。むしろ、そういう時にこそお役に立つのが、病児保育の存在意義です。お子さんがいくら元気でも、熱が高ければ保育園や幼稚園では預かってもらえません。同様に、インフルエンザは症状が収まっても、一定期間をすぎなければ集団生活ができません。感染力の強い流行性角結膜炎(はやり目)などは10日から2週間もの間、医師から登園しないようにと指示されることもあります。仕事をお持ちの親御さんが、それほど長い間、お勤めを休んでお子さんを診るというのは現実的に無理な話です。そうした時に、病児保育施設を思い出していただければと思います。
- Qどのような施設でどんな方に面倒を見ていただけるのでしょうか?
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A
▲看護師だけでなく、保育士も常時待機しているのが心強い
施設は、区の基準を満たす必要があります。基準をクリアした上で当院の特徴としては、感染症の子のための部屋を2つ用意していること、施設全体は基準よりもかなり広めで、下の階は小児科医院ですからいつでも迅速な対応が可能なことです。人員は、医師である私のほか、看護師は常勤・非常勤各1人、保育士は常勤・非常勤各2人の体制でシフトを組んでいます。全員の力が不可欠ですが、特に保育士には、病児保育施設ならではの対応力が求められると思ってます。ここに来るお子さんは、病気で精神状態もいつもとは違いますし、通い慣れた場所ではありませんから、一人ひとりの感情の動きを瞬時に見極めて細かく対応するスキルが必要なんです。
- Q今後の取り組みについてお教えください。
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A
▲経営の難しさを感じながらも「地域の方の役に立ちたい」と語る
受け入れ人数を増やすなどの事業拡大は考えていません。なぜなら、運営がそう簡単ではないからです。例えば普通の保育園なら、だいたい毎日決まった人数のお子さんが登園するので、スタッフの数や食事の量など計画が立てられます。しかし病児保育は、何人のお子さんが来るかを把握できるのが当日です。たとえ誰も来ない日でも、スタッフを待機させなくてはなりません。年々施設は増えていますが、それでも需要に対して供給が追いついていないのは、そうした難しさのためだと思います。ですから当院としては、少しでも長く続けることが目標ですね。もちろん改善すべき点は改善していきながら、少しでも長く区民の方のお役に立てればと思います。