山口 義哉 院長の独自取材記事
山口小児科内科
(世田谷区/上野毛駅)
最終更新日:2024/08/19

上野毛駅から8分ほど歩くと、鮮やかなブルーの外観が目印の「山口小児科内科」が見えてくる。「イルカ先生」の愛称で親しまれる山口義哉院長は、子どもたちが怖がらないようにと白衣を着用せず、笑顔での診療を心がけている。重篤な病気を見逃さないよう、診察室に入る時の歩き方や顔つき、家庭での普段の様子や家族が覚える違和感を確認している山口院長。薬の処方だけではなく、子育てや食事のアドバイスなども取り入れながら多角的な診療を行う。病気の子どもを預かる病児保育施設を備えているのも同院の特徴。自身が共働きで子育てに苦労をした経験から「働くご両親をサポートできれば」との思いで始めたという。「遠慮せず何でも相談してほしい」とほほ笑む山口院長に、診療方針や病児保育、新たに始めたワークショップなどについて話を聞いた。
(取材日2024年7月30日)
怖い先生と思われないよう、白衣を着用せず笑顔で診療
どのような症状で来院する子どもが多いのでしょうか?

一番多い症状は発熱です。あとは「ミルクや離乳食を吐いてしまう」というケースも目立ちますね。夏はあせも、冬は乾燥と、皮膚症状の悩みも多いです。基本的にはほとんどが軽症ですが、重篤な病気を見逃さないよう、緊張感を持って診療にあたっています。工夫していることはお子さんが「怖い」と感じないよう、院内を明るい色合いで統一している点。あとは、やはり「顔」ですね。なるべく怖いと思われないよう表情には注意しています。他には「こんにちは」「今日はどうしたの?」とたくさん話しかけ、白衣を着ないようにしている点でしょうか。白衣を見ると緊張するお子さんは多いですから、なるべく怖さを感じるものは取り除くようにしています。
重篤な病気を見逃さないために、注意しているポイントはありますか?
診察室に入ってくる時の様子です。大きい子なら歩いている様子、小さい子なら抱っこされている様子、そして顔つきや目つき、顔色を注意深く見るようにしています。親御さんは熱がないと安心しがちですが、発熱は一つの指標に過ぎません。例えば、熱は高くないものの、皮膚の色がとても悪い場合、敗血症で循環器不全を起こしている可能性もあります。当院では血液の状態や炎症反応の検査も可能ですし、必要に応じて専門の医療機関を紹介しています。また、当院は目の屈折異常の検査機器も導入し、6ヵ月の乳幼児から測定が可能です。斜視を放置すると、目の発達が妨げられて弱視になってしまうこともありますから、早いうちからの検査をお勧めしています。
診療の際、心がけていることをお聞かせください。

何でも相談していただけるよう、来院しやすい雰囲気づくりや、ポイントを押さえた丁寧な説明を心がけています。最近は親御さんが医療情報をインターネットで調べていることも多いので、専門的な知識をわかりやすくかみ砕いて説明し、誤って伝わらないよう気をつけています。私は薬を出すことだけが医師の仕事とは考えていません。そのため「あまり薬を使いたくない」という方には、私の子育て経験や、幼稚園や保育園の園医経験の中で学んだ知識をもとに、食事のアドバイスも行います。親御さんの中には「何日も続けて来て申し訳ない」とおっしゃる方もいますが、そのようなことはありませんよ。何もなければ安心できますし、来院して知識を得てもらえればいいのです。気にせず何度でもいらしてくださいね。
病気の子どもを預かり、働く家族をサポート
小児の診察で最近気になっていることはありますか?

お子さんが自分の症状を正確に伝えられるようになるのは、早くても小学校高学年あたりからだと思います。そのため診療では、親御さんに症状をお聞きするようにしているのですが「連れて行けと言われたので連れてきました」とおっしゃる方もいらっしゃいます。私は診療時の状態しか診ることができず、適切な診断を下すには「何を食べたか、薬は飲んだか、咳や鼻水は出るか」などの情報が必要です。お子さんの体調にいち早く気づけるのはやはり親御さんですから、診察時には必ず普段の様子や親御さんが覚える違和感もお伺いします。また、親御さんの勤務スタイルやお子さんの性格によって、治療法が変わることもあるのですよ。普段、お子さんと一緒にいない方が連れていらっしゃる時は、いつも様子を見ている方がメモ書きを渡すなど、情報を共有しておいていただけると助かります。
病児保育について教えてください。
病児保育は世田谷区からの委託事業で「世田谷区在住で認可保育園に通っている子ども」などが対象となり、病気のお子さんをお預かりしています。病児保育を始めたのは、私自身が共働きで子育てに苦労をし、働くご両親をサポートできればと思ったからです。休みが取りづらいという親御さんも多いと思いますので、無理をせず病児保育を利用していただければと思います。インフルエンザの場合も隔離した個室でのお預かりが可能です。ただ、入院が必要な重篤な子や、感染力の強い麻疹や新型コロナウイルス感染症の場合はお預かりができません。当院のスタッフの健康にも影響しますので、病児保育をご希望の際は新型コロナウイルス感染症の検査をお願いしています。また徒歩圏内の園に限りますが、病児保育の一環として、お子さんが急に体調を崩した際の園へのお迎えサービスも行っています。
6月から新たにワークショップも始められたとお伺いしました。

地域の方々に病児保育のことを広く知っていただきたいと考え、月4回ほど予約制で開催しています。保育士や看護師と一緒に内容を話し合って、ベビーマッサージや紙人形劇、歌遊び、大人向けのペン字講座などを行っています。1歳くらいから就学前のお子さんが対象ですが、ごきょうだいの年齢は問いません。就園前のお子さんがいるご家庭では、同年代のお子さんの様子を見たり、親御さん同士がつながったりする機会は少ないかと思います。このワークショップが、地域の中で幅広いつながりをつくる場になればうれしいですね。保育士や看護師が開催していますので、保育や発達に関する不安や悩みも気軽にご相談ください。
愛称は「イルカ先生」、何でも相談できる医院をめざす
先生はイルカ先生と呼ばれているそうですね。愛称の由来は何でしょう?

以前、知人から1mくらいのイルカの置き物を頂いたのです。とてもかわいかったので玄関に飾っていたら、いつの間にか子どもたちや近隣の方から「イルカ先生」と呼ばれるようになりました。今はもう置いていないのですが、ホームページのタイトルが「イルカ先生の部屋」となっていることもあり、ずっとイルカ先生と呼ばれているんです。
休日にはスキューバダイビングを楽しまれているそうですね。
妻と毎月のように伊豆に行くのですが、たくさん潜る場所があるのです。アジやサバ、タイ、ウミガメ、時には小さなサメやマンボウと出会うこともありますよ。前は3人の子どもたちと一緒に行っていたのですが、いつの間にか3人とも大人になり一緒に行動しなくなりました。子どもの成長は本当に早いものです。今思い返してみると「もっとこうしてあげれば」と思うことも多々あります。皆さんがもしお子さんの行動に腹を立ててしまうことがあっても、一呼吸して向き合ってみてください。子どもと過ごす毎日はいずれ良い思い出になりますから。
ところで、先生はなぜ医師をめざしたのですか?

父も開業医だったので、やはり父の影響が大きいですね。日々の生活の中で、患者さんが「ありがとう」と笑顔で帰る姿を何度も見ていたので、自然と「医師になりたい」という思いが芽生えたのでしょう。小学校5、6年生の時には「医師になろう」と決めていました。ただ、自営で親が四六時中家にいることを疎ましく感じた時期もあり、中学校から高校1年生まではラジコン屋になりたいと思っていたのです。暇さえあれば、燃料で動くエンジンつきのラジコンを自作していましたね。ただ一過性のもので、高校2年生の頃には、また医療の道をめざしていました。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
お子さんが病気の時に安心して病児保育を利用できるよう、これからも医師として取り組んでいきたいですね。親御さんへの適切な情報提供にも努めています。スタッフ手作りの「院内だより」には、子どもの病気についてのトピックスも載せていますので、ぜひご覧ください。ここしばらく開催できなかった勉強会もいつか再開できればと思っています。「これぐらいで相談に行ってもいいのかな?」と遠慮せず、些細なこともまず相談に来てくださいね。