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神山 一行 院長の独自取材記事

港北ニュータウン診療所

(横浜市都筑区/センター南駅)

最終更新日:2019/08/28

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医師が、患者の自宅や介護施設に赴き、診療を行う「在宅医療」を知っているだろうか。入院、外来に次ぐ第三の医療と呼ばれ、日本ではまだまだ新しい医療制度である。「港北ニュータウン診療所」は、そんな在宅医療を積極的に行っている。日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医でもある神山一行院長は、「病気だけでなく、患者さんの生活もみられるご自宅は、最高の診察室だと思います」と、在宅医療の魅力を話す。拠点となる診療所内には巨大な水草水槽が置かれ、スタッフや訪れる患者の目を楽しませている。今回は在宅医療への思い、院長を支えるスタッフの存在など幅広い話を通じて、患者本人だけでなく、家族からも圧倒的な支持と信頼を集めるその魅力に迫った。
(取材日2016年6月15日)

一人ひとりに添った診療スタイル

在宅医療では、どのような患者さんを診療していますか?

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最初に、在宅医療を受けるには条件があります。「一人で通院ができない」ことです。90歳でも家族の付き添いが無く、病院や診療所へ通院できる方は在宅医療の対象となりません。逆に、若い方でも交通事故などで車いす生活をされている方や、認知症を発症されて迷子になってしまう方などは、一人で通院することが難しいため、在宅医療の対象となります。当院で診療している患者さんは比較的ご高齢の方が多く、筋力低下により歩けない方や、寝たきりになってしまった方。糖尿病や認知症を患っている方。在宅酸素療法や胃ろうを造設されている方。そのほか、パーキンソン病などの難病にかかっている方、がんの痛みのコントロールや終末期医療を望む方など、さまざまな状態や疾患を抱えている方を在宅医療で診療しています。特に、ここ数年はご自宅でのお看取りが増えたように感じます。慣れ親しんだご自宅での終末期医療が、浸透してきている影響なのでしょうか。

どのくらいのペースで、どのように診療しているのですか?

在宅医療で行う診療には、「訪問診療」と「往診」の2種類があります。どちらも患者さんのご自宅や介護施設へ医師が赴いて診療を行うのですが、次のような違いがあります。訪問診療は、『あらかじめ日程を決め、定期的に訪問して診療すること』です。ひと月2回の訪問診療が中心ですが、患者さんの病気や状態により訪問回数は変わります。また、診療を行う中で、状態の変化に伴い、患者さん本人やご家族、介護者と回数の見直しを行う場合もあります。一方往診は、『訪問診療以外で医師が訪問し、診療すること』です。在宅医療は24時間の連絡体制が整っているため、高熱が出た、痛みが強くて動けない、様子がおかしい……などの緊急時は、患者さん本人やご家族、介護者の要請により、医師が必要と判断した場合は、昼夜問わず訪問して診療を行います。在宅医療はこれらを組み合わせ、患者さんそれぞれの病気や状態、療養環境に沿った治療を行っています。

在宅医療だけではなく、外来診療にも対応されているのですね。

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2016年春より、患者さんのさまざまなニーズに応えるべく、予約制で外来診療も行うようになりました。今までは、ある程度病状が悪化した患者さんを在宅医療にて診療してまいりましたが、外来診療では悪化する前の段階から携われるため、より幅広い対応が行えると考えています。また、在宅医療を行っていた患者さんの中で、病状が改善し、ひとりで通院ができるようになった方は、今までは他の外来診療を行っている医療機関の先生にお願いしていました。そういった患者さんに対しても新しい選択肢として、継続した外来診療が提供できるようになりましたので、患者さんのメリットは大きいと思います。当院にお越しいただくことで、少しでもリラックスできるよう、待合室もリニューアルしました。壁一面が横長の大きな水槽になっているのですが、小さな水族館として待ち時間を楽しんでいただけましたら幸いです。

在宅医療とリハビリテーション

医師を志したきっかけをお聞かせください。

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高校生のとき、母が調剤薬局に勤務していました。そこで働く薬剤師さんを見て、「医療」というものに興味を持ったのがきっかけです。医師となり、自分の進む「診療科」を選ぶ時期は、さまざまな科を見学します。呼吸器内科、消化器内科、整形外科、耳鼻咽喉科、心臓血管外科、眼科……。そんなとき、仲の良い同級生から「リハビリテーション科も見学しよう」との誘いがありました。何気なくついて行ったのですが、話を聞いてみると自分の理想と一致しており「ここに進むしかない!」と、すぐに入局を決めました。でも、実はその時はまだ、リハビリテーション科がどんな科なのかも知らなかったのですが……(笑)。

リハビリテーション科とは?

整形外科の一部だと思われがちですが、独立した診療科です。骨折などの外傷の後に行うリハビリテーションをイメージされる方が多いと思いますが、それだけではありません。脳血管障害の後遺症による麻痺や言語障害に対するリハビリ、心臓疾患に対するリハビリ、肺炎による呼吸障害に対するリハビリ、高齢者の嚥下障害に対するリハビリなど、多岐にわたります。そして、これらの障害に対し、現状の把握と、どのようなリハビリを行えばどこまで回復するのかを見極め、患者さん一人ひとりに添ったプランや目標を設定します。それをもとに、本人やご家族、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、看護師などと協力し、実行していくのが私たちリハビリテーション科の役割です。

在宅医療にこだわったのはなぜですか?

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リハビリテーション科が他の科と異なる点は、病気だけでなく障害もみるということです。つまり、病気を治すだけではなく、患者さんが満足した日常生活を送れるよう医学的立場から支援をします。設備の整った環境ではうまく歩けても、ご自宅で同じとは限りません。なぜなら、どこでも手すりがあるわけではないですし、廊下に段差があったり、床に物が落ちていたりすることもあるからです。診察室でうまくいっても、ご自宅でうまくいかなければ意味がない。そう考えると、患者さんをお待ちするしかない外来診療が歯がゆくなってしまいました。ご自宅に伺うことで、診療室では見えなかった患者さんの一面に気がつくこともありますし、一生懸命にリハビリを頑張って、目標を達成したときの喜びを一緒に味わうこともできます。そんな患者さんのご自宅こそが最高の診察室であり、そこで診療できるのが在宅医療という制度でした。

より多くの患者へ、充実した地域医療を

印象に残っている患者さんはいますか?

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80代の女性の患者さんです。いつも病気のこと以外で、他愛のない話に花が咲いてしまいます。同行するスタッフ曰く、診療はさておき、私と話すことを非常に楽しみにしているとのこと。ひと月2回の会話(訪問診療)では事足りず、診療所にお電話をいただくこともあります。そんな患者さんの診療時は、遠くの物をつかむためのハンド付きの棒で聴診器を取ってくれたり、私の肩を叩いてくれたり、ご本人も、そばで見ているご家族も笑うんですよ(笑)。笑いのある診療って、在宅ならではと思います。病気だけではなく、いろいろなお話を共有し、共に喜怒哀楽。そこから垣間見える診療に必要な要素を探るのも、在宅医療の醍醐味と感じています。

診療の際にはどんなことを心がけていますか?

自分が患者さんやご家族なら、どんなことを思い、望むだろうと、想像力を働かせることです。例えば、確かに退院はおめでたいことですが、患者さんやご家族にとっては不安の始まりでもあります。だから私たち在宅医療に携わる者は、わかりやすい説明を心がけ、話に耳を傾けます。限られた診療時間ではありますが、病気へのアプローチだけではなく、患者さんやご家族が抱える療養上の不安や問題点を見つけ出し、一つでも多く解決できるよう心がけています。

今後の展望をお聞かせください。

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ここ都筑区も高齢化が進み、患者さんの数は増える一方です。専門性のある医師や看護師、スタッフとともに、これからもより一層充実した在宅医療が提供できるよう努め、医療・介護・福祉に携わる数多くの方々と連携を図り、地域医療の発展に貢献してまいります。個人としては、患者さんやご家族、地域の皆さんに信頼される医師になれるよう、まい進していきます。

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