玉川 浩 院長の独自取材記事
玉川歯科医院
(神戸市中央区/元町駅)
最終更新日:2023/03/16
神戸の中心地、元町駅から徒歩約3分の場所にある「玉川歯科医院」。2代目院長を務める玉川浩先生は、父親が開業した同院を引き継ぎ、長年地域の口の健康を支えてきた。ベテラン歯科医師である院長が特に力を入れるのが予防歯科だ。「虫歯や歯周病で歯を失ってほしくない」と、正しい知識や歯磨きの習慣を身につけてもらえるように努めている。また、インプラント治療において約40年の実績を持つなど、豊富な経験を生かした丁寧な治療を提供。歯科が苦手な人も通いやすいアットホームで温かい雰囲気の中、優しいまなざしで患者を見守る玉川院長に、予防歯科の重要性や、得意とするインプラント治療についてなど話を聞いた。
(取材日2022年12月19日)
神経を残し、自分の歯を長く維持するための予防歯科
予防歯科に注力する理由を教えてください。
重症の虫歯などの治療で神経を取ることがありますが、この神経は「歯髄」と呼ばれ、実は血管と一体になっています。つまり、神経を取る時は同時に血管も除去するため、歯の中に栄養分を届けていた血液循環がなくなり、結果として通常の歯よりも寿命が短くなりがちです。当院では治療の際に極力神経を残すように努めていますが、まずはその前に虫歯や歯周病をつくらないようにしてほしいという思いが強く、予防歯科に力を入れているのです。例えば、自動車は10年ぐらいで駄目になりますが、人間の体はずっと使うことができますよね。これは髪の毛や爪、皮膚、筋肉といった組織が常に新しいものと入れ替わっているからです。しかし、歯は違います。生涯で1回、10歳頃までに乳歯から永久歯へ生え替わると、その後は80歳、90歳まで使い続けます。そうした体の組織は歯以外にはありませんから、ぜひご自分の歯を大事にしていただきたいのです。
神経を取らないようにすることが大切なのですね。
そうですね。ただ、神経を取った歯のすべてが悪くなるわけではありません。治療後の良い状態を維持するためにも、正しい歯磨きや歯科医院でのメンテナンスが大切です。そこで当院では、歯磨きの重要性を理解していただくために、口腔内の細菌を患者さんにお見せしているんですよ。細菌のかたまりである歯垢を採取し、理科の実験のように顕微鏡を通した画像を見ていただきます。実際に細菌が動く様子を目にすると、皆さん驚かれますね。口というのは食べ物や空気中に漂う菌が留まる場所ですから、歯垢を完全にゼロの状態にすることは簡単ではありません。しかし、歯垢を放置するとバイオフィルムという膜になってしまい、歯磨きだけで取り除くのは難しくなります。だからこそ日頃のセルフケアや歯科医院でのメンテナンスが重要になるのです。
予防はいつ頃から取り組むのが良いでしょうか?
できれば20代以降は意識して取り組んでいただきたいのですが、若いうちはあまり自分の歯について考えないかもしれません。体の調子が悪くなったら病院へ行くように、歯科へも痛みが出てから来る人が多いのが現状です。しかし、水がしみたり、歯が痛くなったりといった自覚症状が現れる頃には、すでに病状が悪化していることが多いものです。虫歯以外で歯を失う原因として歯周病がありますが、歯がぐらつくといった症状が出た段階で、その歯を支える歯槽骨の大半が溶けてなくなっていることもあります。そうなると抜歯になる可能性が大きいでしょう。歯周病は5年、10年と長い経過で悪くなるため、歯茎の出血や、歯肉炎などの前兆を捉えて処置すれば、基本的には大事に至りません。年を重ねていくにつれて歯の本数は減っていきやすいので、歯磨きや定期検診などでしっかり予防していきましょう。
高い耐久性で長持ちするインプラントはいわば第3の歯
予防に欠かせない正しい歯磨きについて教えてください。
理想は毎回の歯磨きで完全にきれいにすることですが、なかなか簡単なことではないですよね。そこで当院では、正しくブラッシングできるようになるまでは、2週間に1度程度の頻度で来院していただき、磨き方が身についているかチェックします。磨けていない箇所を指摘することで改善につながるようです。また、歯磨きで除去すべきは食べかすというよりばい菌なので、そうした知識をお伝えすることも大切にしています。知識にもとづいた歯磨きの習慣がつけば、その方の歯は生涯守られるといっても過言ではないでしょう。歯科衛生士が正しい磨き方を丁寧に説明しますので、ぜひ習得していただきたいと思います。
先生はインプラント治療も得意とされていますね。
インプラント治療を始めてから約40年になりますね。私はインプラントを乳歯、永久歯に次ぐ第3の歯だと考えているんです。欠損した歯を補う主な方法には、インプラント以外にブリッジや部分入れ歯があります。ブリッジは欠損部の両隣の歯を一部削り、橋を架けるようにかぶせ物を入れる治療法ですが、健康な歯を削る上、歯垢がつきやすく、歯髄炎を起こす原因にもなり得ます。部分入れ歯は周囲の歯を削ることはない一方、噛み心地など機能面を気にされる方や、入れ歯自体に抵抗感がある方もいるでしょう。インプラント治療が始まった当初は歯科医師の間でも導入すべきか意見が分かれていました。しかし、素材であるチタンは人工関節に用いられるほど耐久性が高く、顎の骨ともしっかりくっつきやすいのです。周りの歯への負担も少なく、新入社員のように新しい歯として頑張ってくれるんですよ。最近は若い患者さんでインプラントを希望される方も多いですね。
インプラント治療を受けた後はメンテナンスが重要になるのですか?
口の中を清潔にしておかないと、歯周病になって歯が抜ける恐れが出てくるのは、インプラントでも天然の歯でも同じこと。「インプラントをすると骨が溶ける」というような話を聞くと、不安をあおっているように感じますね。1日1回正しいブラッシングで、汚れを取り除いてきれいな状態になれば、口腔内で善玉菌が優勢になりやすく、歯周病予防につながります。歯科医院で定期的なメンテナンスが必要なのも、清潔な状態を維持できているかチェックするためです。インプラントは、入れ歯より天然歯に近い噛み心地が期待でき、耐久性にも優れています。正しく理解できれば不安はなくなるのではないでしょうか。
患者に寄り添い、口元から始まる健康をサポート
そもそもなぜ歯の欠損を防ぐ必要があるのでしょうか?
自分の歯が全部あるうちは、その大切さがわからないかもしれませんね。例えば、口の中を会社だと考えると、成人の歯の本数は親知らずを除いて28本ですから、28人の社員がいることになります。そこに4人欠員が出れば、28人でやっていた食事という仕事を、24人でこなさなければなりません。入れ歯などで補強しても、自分の歯と完全に同じではないですから、残っている歯に負担がかかりやすい状態です。結果としてさらに歯を欠損してより少ない人数で働くはめになり、加速度的に負担が増えていくのです。これで、総入れ歯になってしまう方がいる理由もおわかりいただけるでしょう。1本の歯を失うことで残りの健康な歯に負担がかかると考えれば、やはり歯周病や虫歯を防ぐことが一番大事だと知っていただきたいですね。
歯科医師として大切にしていることを教えてください。
悪いところを治療したら終わりではなく、将来的に悪くなりそうなところも見極め、食い止めたいと思っています。口のトラブルは正しい知識がないために起こることがほとんどです。私はすべての歯が残っていて、神経も取っていませんが、これは神経を抜くと悪影響があると知っていて、そうならないように予防しているからです。歯が多く残っている人ほど医療費が少ないという統計もあるそうです。口の健康は全身に影響を及ぼしやすいのですね。最近は矯正をする患者さんも増えていますが、鏡で見る口元の印象が変わると、毎日がきっと楽しくなるでしょう。丁寧な治療に努めるのはもちろん、審美面のニーズにも応え、患者さんの悩みや喜びに寄り添っていきたいです。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
歯医者に「痛い・怖い」というイメージを持つ方は多いので、不安な気持ちに配慮した診療を心がけています。虫歯や歯周病を防げれば、ご自分の歯をずっと残すことができるでしょう。心臓病や脳血栓といった病気と歯周病との関連もいわれていますし、まずは口の中から健康を守っていただきたいですね。アンチエイジングではなく「ウェルエイジング」をめざし、患者さんが上手に年を重ねるお手伝いができればうれしいです。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/33万円~、マウスピース型装置を用いた矯正/63万8000円~、ホワイトニング/1万6500円~
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。