池澤 雅人 院長の独自取材記事
いけざわ歯科医院
(明石市/東二見駅)
最終更新日:2022/03/31
山陽電鉄本線東二見駅から北西へ歩いて7分ほど、「いけざわ歯科医院」は明姫幹線に面したビルの2階で40年にわたり診療を続けてきた。「開業当初から通ってくださる患者さんも多いです」と振り返る池澤雅人院長は、地域の歯科医院として患者のさまざまな悩みに応えてきた。中でも力を入れているのが、歯周病のメンテナンスや入れ歯の治療だという。「自分の歯による噛み心地はどんな治療にも勝るものですから、ぜひ歯を失わないようなケアを受けてほしい」と語る。また歯を失って入れ歯という選択をした患者には、調整技術を駆使してしっかり噛める、使い心地の良い入れ歯の提供をめざす。「患者さんがいつまでも元気で過ごせるように、お口の中からサポートしたい」と力を込める池澤院長に、診療内容や歯科医師としての思いを聞いた。
(取材日2022年3月17日)
東二見のかかりつけ歯科医院として幅広い診療を提供
最初に、こちらの歴史をご紹介ください。
実は私の母が歯科医師で、私が小学生の時に亡くなった父が歯科技工士でした。夫婦で小さな歯科医院を切り盛りしていたのを、ぼんやりと覚えています。そのせいか、自然と歯科医師をめざして歯学部へ進み、1981年に開業して、40年にわたってここで診療を続けています。東二見はもともと漁師町ですし、この辺りは開業した当時は田畑が広がり市場がぽつんとあるような、のどかな雰囲気でした。40年の間にマンションが建ち、コンビニなどの商業施設も増えて大きく変わりましたね。
どのような患者さんが来られていますか。
何もないような所にできた歯科医院でしたので、開業当初に受診された患者さんは、そのままずっと通い続けてくださっていることが多いです。私と同世代で通い始めた方が多いので、現在は患者さんの年齢層も自然と高くなっていますね。また、昔通っていた子どもがいったん地元を離れてまた戻ってきたり、長い間お顔を見ていなかった患者さんが久しぶりに来てくれることも。長い間同じ場所で診療を続けているからこその、懐かしい出会いもあります。
現在の診療内容を教えてください。
地域のかかりつけ歯科医院ですので、多いのは詰め物の治療ですね。当院には歯科技工士がいて、かぶせ物を専門にしていますので、かぶせ物の修理や調整はすぐにできることが強みです。見た目に目立ちにくい白い詰め物にも対応しています。それから、歯の根っこの治療(根管治療)も多く、他院で治療を受けた後に虫歯が再発していらっしゃる方も多いですね。高齢化に伴い歯を失ってしまう患者さんも増えていて、その際には入れ歯を作ることになります。ただ、なるべくご自身の歯を使い続けていただけるように、歯科衛生士による歯石の除去やブラッシングの指導など、歯周病や虫歯の予防処置も行っています。
技術を駆使して使い心地の良い入れ歯の実現をめざす
入れ歯の治療に力を入れていると伺いました。
昔は、どんな名人や達人が手がけた入れ歯でも、噛む力は患者さん自身の歯の6割も回復が見込めないといわれていました。それが本当に歯がゆかったのですね。また入れ歯は型採りを重視する傾向があるのですが、20年ほど前にある講習会に参加し、噛み合わせをきちんと検査して適切に調整すれば、しっかり噛めるようにすることをめざせると学びました。そこから入れ歯の噛み合わせに関心を持ち、各地の講習会へ参加するようになったのです。最近は、奥歯でも前歯でもきちんと噛み合わせるための調整を身につけ、さらにリンゴやおせんべいなど硬いものもしっかり噛めるようにするための技術を学びました。また、入れ歯は噛むとどうしてもずれてしまい痛みの原因になるのですが、いったんずれても元の位置へ自然と戻るような調整法も勉強しました。これらの技術を組み合わせ、丁寧な調整で使い心地の良い入れ歯をめざしています。
噛むことや噛み合わせの重要性について、もう少し詳しく教えてください。
以前に行った講習会では、患者さんの入れ歯を受講者の目の前で調整していました。喜ぶ患者さんの様子を見て、自分で噛めるということは、食事ができるだけでなく、生きる意欲や自発性にも直結するのだと、非常に感動しました。最近では、寝たきりであった方でも食べられるようになると、そこから徐々に回復に向かい、身の回りのことができるようになるケースもあるという話もありますし、噛むことで脳血流が良くなり、脳の活性化につながることも知られています。ご自身の歯で噛めればそれが良いのですが、入れ歯であってもしっかり噛めれば、全身の健康にプラスに働きますので、やはり噛める入れ歯、快適な入れ歯は大事だと考えています。
予防歯科に取り組むのはなぜですか?
最近では虫歯は減りつつありますが、一方でご自身が気づかないうちに歯周病が進んでいる方がいて、気になっています。40代で「虫歯は1本もないのに歯がぐらつく」という方もいらっしゃるのです。進行した歯周病の場合、最終的に半分以上抜歯せざるを得ないケースもあります。歯の隙間や歯と歯肉の境目を、ご自身の歯ブラシだけできれいにするのは難しいのですね。また歯周病菌は空気を嫌うため、歯の根っこと歯肉の隙間、いわゆる歯周ポケットと呼ばれる部分に隠れています。そこで歯石を取り歯周ポケットを掃除するプロのケアで、空気を通すことが大切です。さらに歯茎を引き締めるためのマッサージなども役立つでしょう。入れ歯の治療を通じて、ご自身の歯を使える良さを痛感していますので、なるべくいつまでも歯を失わないように、定期的なメンテナンスをお勧めしています。
患者の本心と向き合い、噛める喜びを届けたい
患者さんとお話しする際に、心がけていることがあれば教えてください。
患者さんはさまざまな思いを持って受診されていますので、お話ししたいことがある方には、時間が許す限りしっかりとお聞きするように心がけています。一方で、入れ歯の方だと「何でも食べています」「噛めています」と言われても、実際にはそうでないことがあります。納得はしていないけれどこんなものだと諦めていたり、あるいはご本人は知らないまま、ご家族が小さくやわらかくした食べやすい食事を準備していることもあります。患者さんの話だけを真に受けるのではなく、ご家族の話を聞いたり、院内で食べ物を使って噛む様子を確認するような、客観的なチェックも大事にしています。
歯科医師としてやりがいを感じるのはどのようなときですか?
やはり、入れ歯の治療で患者さんの思っていた以上の調整ができたと思えたときですね。例えば、上が総入れ歯、下が部分入れ歯というケースでは、調整が難しく時間をかけて対応する必要があります。そういった場合でも、おせんべいやピーナッツなど入れ歯では噛みにくいものでも噛めるようにと調整していきますので、患者さんに喜んでいただけたら非常にうれしいですね。
最後に、地域の皆さんや読者へのメッセージをお願いします。
私も患者さんも年を重ね、年齢に応じた歯の悩みに向き合っています。入れ歯の作製を考えたり、実際に使っている方は実は多いのですが、その使い心地を他人とあれこれ話すことは少ないかもしれません。「入れ歯だから」と諦めている方もいらっしゃいますが、取り外しができる入れ歯だからこそ、さまざまな調整が可能です。特にご高齢の方は、不便さを我慢しがちですが、高齢者こそ、噛み合わせを整えることで全身の健康にも良い影響を与える可能性があります。当院は昔ながらの歯科医院ではありますが、感染対策を行いながら、落ち着いた雰囲気の中で治療を行っています。入れ歯や歯の健康でお悩みがあれば、ぜひ気軽にご相談ください。