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吉原 正明 院長の独自取材記事

吉原歯科医院

(三田市/フラワータウン駅)

最終更新日:2022/07/15

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公園都市線のフラワータウン駅、その駅ビルの7階にあるのが「吉原歯科医院」だ。1990年に開業して以来、三田市エリアの患者が数多く足を運んでいる。そんな同院を開業したのは、吉原正明院長だ。開業間もない1992年から「さんだ口腔介護支援ナビ」を併設し、同エリアの訪問歯科診療にも注力してきた。そこには院長の「最期までお口から食べてほしい」という、強く熱い思いがある。今回はその訪問歯科診療における院長の考えを柱に、患者への深い愛情、そして歯科の未来に必要なものなど、院長の心の奥底にある情熱をぶつけてもらった。

(取材日2021年12月10日)

「最期までお口から食べてほしい」と、訪問診療を展開

貴院は訪問診療にもかなり力を入れておられますね。

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開業して2年ほどで訪問歯科診療を始めました。きっかけは開業当初の患者さんが寝たきりになり、介護が始まったことでした。「先生、通えなくなりましたが、こちらまで来てくださいますか?」というお声に応えることが、歯科医師の使命だと考えたのです。当院のモットーは「最期までお口から食べてほしい」。今では三田市エリアをはじめとした県内の特別養護老人ホームや患者さんのご自宅へ、訪問歯科診療に伺っています。当院のスタッフはすべて歯科衛生士。それぞれが担当を持ち、定期的にお伺いし、患者さんの口腔ケアを行います。お口の中の状態は、実はご家族やご夫婦であってもなかなか気づかないもの。地域のケアマネジャーさんとも連携しながら、日々診療にお伺いしています。

先生が感じている課題は何でしょうか?

歯を失えば、歯科で入れ歯を作りますよね。しかし作った後、患者さんがその入れ歯を“使いこなせているかどうか”までをチェックしている歯科の先生は、意外に少ないように感じます。例えばパラリンピックの選手は義手や義足、車いすなどを自由自在に操り、スポーツの世界で戦っておられます。そのために必要なのはトレーニングですね。入れ歯も同じです。入れ歯も、体に身につける「装具」。その装具を動かすためにはお口周りの筋肉のトレーニングが非常に重要なのです。ですから当院では、この「口腔トレーニング」をとても大事にしています。特に寝たきり状態や入院生活が長く続けば、入れ歯を外して過ごすこともあります。そうなると筋肉はどんどん衰える一方です。新しく入れ歯を作る方だけではなく、久しぶりに入れ歯を使用する方にも、トレーニングをしていただいています。

入れ歯などを装着した後の、患者さんの口の動きやフィット感まで診ておられるのですね。

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特別養護老人ホームやご自宅でも、実際に入れ歯を着けてもらい、お菓子や果物などを噛んでいただき、使用感などを確認します。入れ歯を作っても、すぐに思うように噛んで食べれるようになるわけではありません。自分の歯として体になじませて、入れ歯を自在に動かすためにはそれなりの筋力が必要です。その筋肉がつくまでの1~2ヵ月それまで寄り添い、入れ歯でしっかり食べられるようにするのを見届けるまでが私の役目だと思っています。

入れ歯を使いこなすための「口腔トレーニング」が重要

入れ歯を正しく使う筋肉が備わっていることが前提なのですね。

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この20〜30年の間に、お口の環境を清潔に保つ「口腔ケア」はかなり浸透してきていますね。そして今後は、お口の機能をしっかり使えるようになる「口腔トレーニング」が必須になってくると考えています。人は食べられなくなると体の機能が維持できず、そうなると命をつなぐこともできません。これが本来の「看取り」の状態とも言えるでしょう。しかし今は医学が発展し、口から食べ物を入れなくても生命の維持は図れるようになりました。しかし「チューブにつながれ、胃ろうで直接栄養を取り込んでいる状態で、本当に人間の尊厳が保たれていると言えるのか?」と私やスタッフは考えます。「口からおいしく食べることを諦めないでほしい」というのが私たちの一番の願いなんです。

「楽しみは食べること」とおっしゃるご高齢者も多いですものね。

そしてそれは、介護をする配偶者、ご家族、そして介護に関わるケアマネジャーさんや訪問看護師さんなどすべての方の願いでもあるはずなのです。「せめて最期にはおいしいものを口に入れてあげたい」というご家族の願いも耳にします。当院では訪問歯科診療であっても、入れ歯を作るための抜歯なども行います。訪問歯科診療だからといって外来診療より大幅に劣る部分があるわけではなく、外来診療の技術の9割はカバーしています。だから寝たきりのままでも抜歯も行えますし、「これが終わったら入れ歯を作っておいしいものを食べましょう」とお声がけをします。たとえ最後に間に合わなかったとしても、本人を含め皆で「おいしいものを食べよう」という未来の目的に向かって頑張った事実は「できる限りのことをやったのだ」という納得心につながり、介護をする方の心の救いにもつながるものだと思うのです。

口腔ケアを行うのは、患者さんだけでなくそのご家族のためでもあるのですね。

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介護をしていても、特別に誰かから褒められるということはなかなかありませんでしょう。ご家族が介護をして当たり前、そんな時代です。でも介護をしている方も疲れているのは事実であり、報われたい気持ちは無意識にでもあるはずです。入れ歯を作り、おいしいものを食べて、看取る。入院中は点滴をしているから入れ歯を外していても、棺に入れる時には入れ歯を入れ、顔を整える。そうすればご家族も「できるだけのことをやった」と心の整理がつくはずですし、たとえ棺の中にいても、亡くなった方の人としての尊厳は保たれるのではないかと思います。口から食べることは、命と直結しているのです。

いずれ認識が変わると信じ熱意を持って取り組み続ける

一貫したお考えを持って対応されているのですね。

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これらはもはや“死生観”に近い考えでしょう。そしてその死生観は、患者さん、ご家族、医師・歯科医師によっても異なります。私たちはそれを押しつけることはありません。しかし、「親がそちらに通っていましたが、寝たきりになりました」と言われた時に「じゃあ、お元気になったらまた来院してくださいね」とスタッフが対応するとしましょう。それでは患者さんの想い、ご家族の想いには応えられません。「わかりました、ではこちらからお伺いします」と声をかけ、マナーを身につけた上でお伺いする。私はケアマネジャーの資格を持っているため、ケアマネジャーさんとも同じ土俵で意見を交わせます。ケアマネジャーさんには「患者さんの口腔環境は必ず確認してください」とお願いしています。また当院の13人の歯科衛生士には随時、講習などを受けてもらっています。

スタッフさんにはどうお声がけを?

特別なことは言いません。これはご家族やケアマネジャー、訪問診療の医師や薬剤師の方など連携するすべての方に共通することですが、ご自分で気づきを得ない限り、患者さんの状況を理解し、次の行動へ移すことはできないのです。能動的に動き、そこで「なぜお口の手入れがされていないんだろう?」「この方は食べることを諦めてしまったのだろうか?」と気づけば、おのずと次にやることが見つかるのです。もちろん今後、口腔トレーニングなどがさらに重要になることは書籍や講演会などでも啓発し続けています。しかし大事なのは、お一人お一人が感じ、動くこと。つまり“感動”することだと考えているのです。

後進の育成についてはどう考えておられますか?

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もちろんこれからも講演会などを続けていきますし、息子が歯科医師をやっているため、彼にも伝わっているものがあると信じています。これからは「口腔ケア」からワンステップ上の「口腔トレーニング」まで踏み込まなければいけませんが、これももう5年、10年すればスタンダードになってくるのではないでしょうか。必要なのは結局、熱意なのです。「いずれ亡くなるからそこまでしなくても……」と諦めたら、誰が患者さんを、ご家族を助けられるのでしょうか。訪問歯科診療に取り組む先生がもっと増えていくことを願っています。そうすれば患者さんも気づき、世の中の流れも変わっていくでしょう。「口から食べることを最期まで諦めない」、これからもこの想いを柱に、診療にあたっていきます。

自由診療費用の目安

自由診療とは

矯正歯科:50万円~

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