東浦 正也 院長の独自取材記事
ひがしうら歯科
(奈良市/近鉄奈良駅)
最終更新日:2025/03/05

近鉄奈良駅より徒歩7分、万葉まほろば線・奈良駅から徒歩8分の距離にある「ひがしうら歯科」。祖父・父が実直に向き合ってきた地域医療を受け継ぎ、2023年に3代目の東浦正也先生が院長に就任した。東浦院長は口腔外科で研鑚を積んできたことに加え、老年歯科医療にも精通しており、高齢者に特化した知識があるからこそ、小児の口腔内の機能向上にも注力し、「子どもを虫歯にしない保護者」を育てたいと意気込む。また、学生・働き世代とそれぞれに歯科医院に行かない理由があると言い、いかに足を運んでもらう機会がつくれるかを試行錯誤している。「地域全体に歯科への意識が広がってほしい」と話す東浦院長に、3代続く医院の変わったこと・変わらないこと、地域への思いや今後の展望について聞いた。
(取材日2024年8月2日)
受け継いできた姿を守りながらアップデートし続ける
まずは、こちらの歯科医院の歴史からお聞かせください。

祖父が椿井町で開業したのが、1955年です。当時は周囲に歯科医院がなかったので1日に大勢の患者さんが来院され、ずらっと並ぶ患者さんを朝から晩まで診療していたと聞いています。1967年に現在の場所に移転し、1984年に父が継承しました。その頃には歯科医院も増えていましたが、そんな中で選ばれてきたのは父の人柄のおかげだと感じています。特別なことをするわけではなく、時間を取って患者さんの話を聞き、しっかりと治療をするという当たり前のことを当たり前にしてきただけなのですが。祖父の代で「歯のことはここに相談すれば良い」と認知してもらい、父の代で実直に続けてきたことが、60年以上地域で歴史を重ねてこられた理由だと思います。
先生が院長に就任されたのは2023年とお聞きしました。変わったこと、変わらないことは何でしょうか。
この場所で医療を提供することは絶やさず、さらに常にアップデートし続けることが大切だと考えています。そのために新しい技術や機器を積極的に導入し、より良いサービスを提供できるよう心がけています。また、院内の改装も時代に合わせて進めてきました。プライバシーを守れるようにパーティションで区切ったり、スタッフが使いやすく、より清潔を保てるよう滅菌室を広げたり。祖父の代から続いてきた歯科医院としての在り方はそのままに、患者さんのためになることは今後もどんどん更新していきたいと思っています。
患者さんのために、という点で重視されている診療スタンスを教えてください。

口腔外科で研鑚を積んできたので、その技術と先進の機器を生かした治療の選択肢を用意しておくことがまず患者さんのために不可欠だと考えています。そして、治療方法を最終的に選択するのは患者さんですが、そのときに治療に対する患者さんの理解はとても重要です。なぜ治療が必要なのか、そもそもなぜ病気になったのか、患者さんが理解していないと継続して通えなくなってしまいますし、悪化に至った生活習慣が改善できていなければ症状を繰り返すことになりますよね。だから、初診でいきなり歯を削ることはせず、エックス線撮影をし、今の状態を丁寧に説明。原因を理解してもらうために患者さんとお話しする時間は、特に重視しています。
高齢者に特化した専門知識を小児歯科にも役立てる
口腔外科でのご経験に加え、老年歯科医療についても専門的に学ばれたそうですね。

歯科は全年齢の方が来られる場所ですが、その中でも特に超高齢社会を見越し、高齢の方に特化した知識を得ておく必要があると考えました。口腔外科での経験を生かし、口以外にも疾患を抱える高齢の方が、大きい病院に行かなくても当院で治療ができるようにしたいという思いからです。ここで赤ちゃんをイメージしてほしいのですが、生まれて寝ているだけの子が歩けるようになり、ご飯を食べるようになりと、成長していきますよね。一方で高齢になると、食事を取ることや立ち上がることもままならなくなっていきます。この機能の向上と低下の坂道は、とてもよく似ているんです。つまり、高齢の方の機能の低下について理解できていないと、子どもの発達段階を診ることもできないということです。
高齢者に特化した知識が、ひいては小児歯科にもつながるということでしょうか。
そうですね。ひと昔前の歯科治療は、義歯を作って噛めるようにすることがゴールでしたが、今はその機能を維持していくことが重視されています。高齢になってからの機能の低下と、本来は子どものうちに発達する機能が、十分に発達しきれていない子が多いという点がつながるんです。ここを保護者にしっかりと説明し、口の機能について理解してもらう。もちろん治療もしますが、そうなる前に必要な知識を持ってもらい「子どもを虫歯にしない保護者」を育てることも、今の時代の当院の役割だと考えています。
小児歯科、特にお子さんを持つ保護者への知識の普及に注力されているのですね。

祖父が開業した当時からは時代が変わり「歯科医院は痛くなる前に行くところ」になってきていますが、まだまだ根づいていないと感じています。やはり治療だけでなく知識を広めることが、地域の健康づくりのためになると信じ、今後も普及していきたいですね。ちなみに、数年前にクリニック名を漢字からひらがなに変更し、“歯科”と“鹿”をかけたロゴも作成しました。向かいに幼稚園があるので、子どもたちが歯を意識した時に思い出してくれればいいなと思っています。
歯科医院に行かない理由は各世代で違うから
高齢者、子どもとお話がありましたが、成人や働き世代の方はいかがですか?

高校生までは学校で歯科検診がありますが、卒業すると一気に歯科と関わる機会が減ることが問題です。20歳を過ぎて親知らずで歯茎が腫れたという方を診てみると、歯茎の状態がかなり悪いということも多くて。来てもらえれば、しっかり検査をして歯石も取り、それ以上進行しないようにすることはできますが、当然来てもらわなければ話もできないですよね。そこで当院では、「ハタチの親知らず抜歯」と掲げ、すぐに親知らずを抜く必要はなくとも、歯について知る機会として一度来てもらえるようにと呼びかけています。大人になり、自分のことはある程度理解できるようになっているからこそ、口にも興味を持ってもらいたいですね。
20歳が自分の口を知る機会、歯科医院に通院する一つの目安になるのですね。
そうですね。20歳を逃すと、今度は仕事が忙しくて通院できないという30代、40代の方が多いです。それぞれの世代に「歯科医院に行かない理由」があるんですよね。当院では、診療時間に昼休みを設けず、土曜も16時半まで診療し、働く方が少しでも通いやすいようにしています。加えて、患者さんをより多く受け入れられるような体制をつくっていくことも検討中です。当院が選ばれなくとも、とにかく歯科医院に行こうという意識が地域全体に広がってくれることが一番の願いです。
最後に、今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

高齢の方をはじめ、お子さんや成人した方、働き世代の方にも、まずは自分のお口に興味を持っていただきたいですね。来ていただかないことにはお話ができないので、ここに歯科医院があることを知ってもらい、情報発信をしていくことが私の役割だと思っています。もっとお子さんが入りやすいような外観にすることを含め、患者さんのためになることは、今後もどんどんアップデートしていく予定です。お気軽になんでもご相談にいらしてください。