木藤 悠子 院長の独自取材記事
水野皮フ科
(世田谷区/西太子堂駅)
最終更新日:2023/05/22
東急世田谷線・西太子堂駅から徒歩4分、東急田園都市線・三軒茶屋駅からでも徒歩6分の閑静な住宅街で、地域に根差した皮膚科診療に取り組んでいるのが、「水野皮フ科」だ。2022年12月に前院長である母から同院を引き継いだ木藤悠子院長は、これまでに大学病院で専門性を要する皮膚科診療の研鑽を積んだ後、クリニックで幅広い皮膚科の診療に従事。同院でもその経験を生かしながら、祖母の代から続く場所で、人々の肌の健康を守ることをめざしている。「健康できれいな皮膚にするためのお手伝いをさせていただきますので、まずは気軽にご相談ください」とすてきな笑顔で話す木藤院長に、同院のことや今後の抱負について話を聞いた。
(取材日2023年3月28日)
肌のちょっとしたことでも気軽に通ってもらいたい
まずは、クリニックを紹介していただけますか?
三軒茶屋には皮膚科のクリニックが結構ありますが、当院はその中でも駅から若干離れた住宅街ですので、近隣にお住まいの方々が、ちょっとしたことでも気軽に通ってくださるようなクリニックをめざしています。小さなことでいちいち受診するのは面倒だし、気が引けるという方もいらっしゃるかもしれませんが、まずは診させていただいて、当院で対応できるものであればしっかりと最後まで治療します。高度な治療が必要な場合には、連携している大学病院にご紹介するかたちを取っていますが、その窓口としてもご利用いただければと思っています。
昨年、こちらのクリニックを引き継がれたそうですね。
前院長だった母が高齢になったこともあって、昨年の12月1日に引き継ぎました。私は大学の医局を退職してからは、OBの先生が運営しているクリニックなどいろいろなところで働かせていただいて、地域のクリニックとしての診療の仕方や、高齢者施設へ往診し、訪問診療での皮膚のトラブルの対処法も学んできました。当院でもそれらの経験も生かしながら、診療をしていきたいと考えています。引き継いで何か大きく変わったかというと、特にないのですが、強いて言えば電子カルテを導入したことでしょうか。電子カルテに変えたことで処方箋もすぐに出せるようになり、診察が終わってから会計までの流れがスムーズになり、院内に滞在する時間の短縮化につながりました。また、診察時間が長く取れるようになって、患者さんのお話もじっくり聞くことができるようになったのは良かったと思っています。
力を入れている治療分野はありますか?
アトピー性皮膚炎とニキビの治療です。アトピー性皮膚炎では、薬の塗り方の指導もしながら定期的に拝見させていただき、肌の変化に応じて薬の処方をきめ細かく変えるようにしています。最近は、ステロイド以外の塗り薬でも良いものがたくさん出てきていますので、そちらに徐々に移行しながら、良い状態の肌を保てるようにしていくことをめざしています。かゆみが治まって皮膚の状態が良くなると、自己判断で薬を中断してしまう患者さんが少なからずいらっしゃるのですが、見た目には良い状態になってきていても、皮膚のバリアが炎症を起こす前の状態に戻るまでは保湿剤や外用薬を継続して使用し、再発を防ぐことが大切です。
ニキビやイボ、子どもの治療にも力を入れる
ニキビに対してはどのような治療を行っていますか?
悪化している場合には、抗生剤を使って早めに状態の改善をめざします。そして、症状がある程度落ち着いたら、ニキビの予備軍は毛穴が古い角質や皮脂で塞がれてできる面皰(めんぽう)なので、それを改善するための薬を処方します。薬については、患者さんが塗る範囲によって使用量も違ってきますので、「1ヵ月でこれくらいの量を使いましょう」というように、わかりやすい目安もお伝えするようにしています。通院頻度は肌の状態によって異なりますが、炎症が治まってお肌の状態が安定していれば、月に1回くらいのペースで継続的に診させていただいています。また、生活をしている中で改善と悪化を繰り返すような場合は、漢方薬も併用し、長期的に安定した状態の肌を保てるようにしたいと思っています。
ほかに力を入れている治療はありますか?
いわゆるイボと呼ばれる尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)の治療です。足の裏にできることが多いウイルス感染で、基本的には液体窒素による治療になりますが、痛みを伴うので続けるのが難しいこともあります。その際は、イボは体の中で免疫が働くと自然と良くなっていくこともありますから、いろいろな種類の飲み薬や塗り薬を使いながら、長期的に様子を観察します。水イボも取る時に痛みが出ますので、麻酔のテープを使ってなるべく痛くないように治療することも心がけています。できている部位や患者さんの希望によっては外用薬を塗って、様子を見ていく方法もありますので、ニーズに応じて治療を進めるようにしています。イボは小さな子どもにできることが多いですが、私も子育てをしていて小さな子どもの診療も得意ですので、イボに限らずお子さんの皮膚のことでも、ぜひご相談いただきたいと思っています。
診療の際に心がけていることを教えてください。
私は東京慈恵会医科大学を卒業していて、「病気を診ずして病人を診よ」という建学の精神で医療について学んできました。皮膚の状態が悪化したり、病気が治まりにくかったりする場合には、使っている薬の種類、その塗り方、あとは生活の環境と、さまざまな要因が絡んできます。ですから、患者さんの話をしっかり聞いて、相談もしながら、患者さんお一人お一人に合った治療を提供することを心がけています。そして、薬を処方するときも「この薬の次は、もう少し弱い薬にしていく予定です」というように、先の見通しもお伝えすることで、薬を使用する時のモチベーションが上がるように努めています。あとはやはり、症状が緩和したからといって患者さんが自己判断で薬を中断しないよう、継続して治療を続ける意味も含め、十分な説明をすることも大事にしています。
健康で美しい肌づくりのために長期的なサポートを
これまでに忘れられないエピソードはありますか?
大学病院にいた頃ですが、アトピー性皮膚炎が専門の教授のもとで、全身に湿疹が出ているような重症の患者さんをたくさん診ていました。炎症が強いと寒気がしたり、かゆくて夜も眠れなかったりするので、そのような患者さんには1〜2週間入院していただくのですが、塗り薬の使い方を指導しながら朝と夕方に一緒に薬を塗って、入浴指導などを行うだけでもかなり改善が望めます。しかし、炎症のコントロールを図るにはこうした基本的なことが非常に大切だと考えています。大学病院では、アトピー性皮膚炎に限らず、皮膚の疾患では、薬の塗り方や塗るタイミング、生活指導がいかに大切かを学ぶことができました。その経験と知識を当院の診療にも役立てていきたいと考えています。
話は変わりますが、先生はなぜ医師を志したのでしょう。
この場所は、もともとは祖母が耳鼻咽喉科のクリニックを開業していました。私はすぐそこの小学校に通っていて、帰り道にクリニックに寄ったりしていましたし、祖母の後は母がここで皮膚科を開業したこともあって、ずっとこのクリニックがとても身近な存在でした。祖母が閉院する時にはたくさんの方々がお花を持ってきて感謝してくださる姿を母と一緒に見ていて、地域の役に立つ仕事ってすてきだな、私もそんな仕事がしたいなと感じたのを覚えています。あと、私もこの地域で生まれ育って、病気になった時にはいろいろなクリニックにお世話になってきましたから、そんなことも後押しとなって医師を志すようになりました。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
これまで大学病院に勤務し、大学病院でしかできないような専門的な治療を数多く経験してきましたが、クリニックにはクリニックの役割があると思っています。例えばゆっくり患者さんのお話を聞いたり、治療にはいろいろな選択肢があることをわかりやすく説明したり、必要に応じて専門の病院をご紹介したり。困った時に気軽になんでも相談できる、それが町のクリニックの役割だと思います。母も診察では患者さんが話をしやすい雰囲気をつくっていたので、そういった良いところをしっかりと引き継ぎながら、新しい治療も取り入れていきたいと思っています。何か皮膚に症状やお悩み事があったら、まずは気軽にご相談いただいて、健康できれいな皮膚にするためのお手伝いをさせていただければと思います。