新開 豊 院長の独自取材記事
新開歯科医院
(世田谷区/等々力駅)
最終更新日:2024/08/26

戦後間もない頃からこの場所に根差し、等々力周辺地域に住む人々の口の健康を守り続けてきた「新開歯科医院」。3代目院長となる新開豊先生は、丁寧な診療と、一人ひとりの患者とじっくり向き合う診療スタイルで、患者の希望を聞きながら寄り添い、各自に合った治療の提案に尽力する。近年では、地元のみならず、遠方から訪れる患者も増えてきているという同院。時に、院外活動としてマルシェを開催する他、幼稚園の園医を務め、介護認定審査会に携わり、災害時の救急救護班にも加わるなど、地域貢献にも積極的に関わる新開先生に話を聞いた。
(取材日2024年6月20日)
自慢のスタッフとの連携で口腔ケア意識向上に尽力
最近感じている変化などはありますか。

以前と変わらず、小さなお子さんからご高齢の方まで多くの方がご来院くださっていますが、地域の高齢化に伴い、やはり高齢の患者さんが増えているようには感じます。全体としては、診療を始めた頃に比べて、地域の口腔ケアへの意識は上がっていると思いますね。虫歯を抱えている方は診療開始当初よりも減少しているように感じます。一方、お口の中の状態を見ていて感じるのは、コロナ禍のマスク生活を通して口呼吸が増えたことで、口の中が乾燥して前歯の辺りが虫歯になる方や、歯周病が進んだ方が増えたこと。あるいは、ストレスからなのか、噛みしめによる歯の割れ、欠けが進んでいる方、噛みしめ癖のある方が増えているような印象があります。
診療時間を変更されたそうですね。
はい、こちらもコロナ禍で在宅勤務をされる方が増えたからでしょうか、これまで終業後の夜の時間帯に来られていた方が、もっと早い時間帯に来院されるようになったんです。そのため、これまでは働き世代の方向けに19時まで開院していたのですが、診療時間を1時間繰り上げて18時までとしました。日中の時間にぎゅっと充実して診療に集中することができますし、スタッフも、その分プライベートの時間に充てられるので喜んでいます。スタッフが生き生きとしていることは患者さんにとってもいいことですし、より院内の雰囲気が良くなったように思うので、決断して良かったな、と思っています。スタッフあっての当院なので、スタッフが喜んでくれていることが、私もとてもうれしいですね。
自慢のスタッフさんたちでいらっしゃるのですね。共有している、大切にしていることはどんなことですか。

スタッフ皆それぞれにとてもすてきな、粒よりのメンバーです。皆違う個性を持っているので、長所をできる限り生かせるよう、自由にのびのびと仕事をしてもらえる環境づくりを心がけています。ただ、患者さんに丁寧に接するなど、私自身が大切にしていることは、スタッフにも同様に大切にしてもらうよう伝えて、いいところは盗んでもらうようにしています。個人を尊重するところや、患者さんに丁寧に優しく接する姿勢、ハート、言葉遣いなどから学んで、いいなと思ったものは取り込んでほしい、と常々伝えていますね。
一人ひとりと丁寧に対話し信頼関係を紡ぐ診療
診療で大切にされているのはどんなことですか。

一人ひとりの患者さんとの対話を大切にしながら、時間をかけて丁寧に向き合う診療スタイルを大切にしています。どうしたら患者さんに気持ち良く過ごしていただけるか、自分だったらどんなふうにしてもらいたいかを常に考え、BGMやカレンダーに至るまで配慮しているので、患者さんに「来て良かった」と喜んでいただけると、素直にうれしいですね。たとえ技術の進歩で歯科医療が変わっても、患者さんと丁寧に向き合い、対話を重ねながら信頼関係を築いていく基本の姿勢はずっと守っていきたいと思っています。あとは、やはり、自分自身のこだわりを押しつけるのではなく、あくまで患者さんのご希望に寄り添うことに徹するというのはいつも、忘れずにいたいと思っています。
自分の歯を生かす治療、痛みの少ない治療にも尽力されていらっしゃるそうですね。
私の専門は補綴なのですが、補綴を学んだからこそ、人工歯などの補綴物はいずれは壊れるものという認識を持っています。持って生まれた天然歯に勝るものはないという考えのもと、当院では大切な歯を1本たりとも無駄にせず、どうしたら生かすことができるかをまず考えます。そんな姿勢が伝わっているのか、「他院で抜歯と言われたけれど、どうにかなりませんか?」という相談も少なくないですね。また、当院では、患者さんの不安を取り除いてから治療に入ります。歯科麻酔をかけるときも、できるだけ痛みが軽くなるよう、麻酔薬を体温まで温め、細い針を使って患者さんの歯茎に合わせた角度で針を刺して少しずつ注入します。そして、治療後には、繰り返し同じ症状に苦しまないための、日々のケアのノウハウをしっかりお教えします。やはり治療を受けずに済むのが一番ですからね。
病診連携、医科歯科連携にも力を入れていらっしゃると伺いました。

はい。例えば、高齢の方ですと持病があり服薬している方も少なくないので、医科とも連携しながら全身管理をしていく必要があります。その他にも、骨粗しょう症の治療をされている方は、抜歯の際に注意が必要など、私たち歯科医師も知っておくべきことはたくさんあります。患者さんに安心・安全重視で最適なプランをご提案するためには、連携は欠かせないと考えています。当院は、目黒区の国立病院機構東京医療センターと大田区の東京都立荏原病院の連携歯科医院です。また私の母校でもあり、長く勤めていた日本大学歯学部付属歯科病院には人脈が多くあるため、各科の私が信頼する先生に臨機応変に診てもらうことも可能です。顎全体に関わる矯正が必要な方、難治性の疾患の方、腫瘍などの特殊な粘膜の病気の方、あるいは内科的な問題があって個人の診療所での治療が適さない方などは、高度医療機関や専門の歯科医院をご紹介し、連携しながら治療を進めています。
人や地域との関わりを大切に末永く伴走する
先生ご自身が実践されている健康法などはありますか?

走ることが好きで続けていますが、ストイックに走り込むというよりも、体の声を聞きながら緩やかに走ることを楽しんでいます。また、走ることを通して出会った人間関係も大切にしています。以前参加した北海道のマラソン大会で、網走という場所と、地元の人に惚れ込んでしまったんです。その縁から、先日、院外活動という形で、スタッフにも参加してもらってマルシェを開催したんですよ。網走からも駆けつけてくださる方がいて、スタッフもその場を楽しんでくれて、私自身もとても楽しかったです。マラソン大会の1日特任大使にも任命してもらって、大会の素晴らしさを広報したりもしました。地域の皆さんをはじめ、さまざまな人と交流することで、いろいろな声を聞き、視野や活動範囲が広がってきて、人生が豊かになり、心身の健康にもつながっていると思います。
今後の展望をお願いします。
診療時間の短縮によって少し余白ができたことで、未来に目が向くようになりました。子どもたちや、若い世代に今まで以上に関わって、未来に種をまくというか、育成に力を入れていきたいと思っています。大学の同窓会でも学術委員に就任したので、後輩歯科医師の学びの場を提供できるよう、これまで以上に尽力していこうと思っています。また地域での関わりとしては、これまでも、幼稚園の園医などをしてきましたが、新たに世田谷区が力を入れている災害対策の活動にも加わりました。区内には災害拠点病院がいくつかあるのですが、そのうちの一つの病院の救急救護班として、医師、薬剤師、柔道整復師とチームになり、訓練を受けるなどしています。多くの世代と交じり合って行動してみると学ぶことも多く、自分自身の成長にもつながるので、今後も診療と並行しながら積極的に地域活動や次世代育成にも取り組んでいきたいですね。
読者へのメッセージをお願いいたします。

お口の健康を守るためには、歯科医院でのケアはもちろん日々のご自身でのケアもとても大切になります。できる限りご希望をお聞きして、お気持ちに添った治療プランのご提案をさせていただきますが、同時にご自身でも日々のケアに力を入れて取り組んでいくぞと、互いに手を携えて口の健康を守っていこうという想いのある方にご来院いただけたらうれしいですね。また、普段から定期的に通っていただくことで、良好な口腔環境をより維持しやすくなります。いつまでも自分の歯でおいしい物をしっかり食べていただけるよう、これからも頑張ってまいります。