西堀 英樹 院長の独自取材記事
きたみ胃・大腸クリニック
(世田谷区/喜多見駅)
最終更新日:2026/02/13
喜多見駅南口からすぐのビルの3階で、消化器内視鏡検査に専門的に取り組んでいるのが、「きたみ胃・大腸クリニック」だ。慶應大学病院消化器外科で内視鏡の専門家として消化器がん治療の一翼を担ってきた西堀英樹(にしぼり・ひでき)院長は、日本人のがんによる死亡原因の上位を占める大腸がんや胃がんで命を落とす人を少しでも減らしたいという思いで診療。患者がつらくない内視鏡検査に努めると同時に、専門の医師として患者ごとにがんのリスクを探り、予防のための生活習慣や早期発見のための検査についてのアドバイスにも力を入れている。「胃がんや大腸がんで亡くならないためには、早期発見が重要です」と話す西堀院長に、同院の取り組みについて詳しく話を聞いた。
(取材日2025年11月10日)
使命は消化器がんの早期発見
最初にクリニックを紹介していただけますか?

当院は、内視鏡検査による大腸や胃、食道のがんをはじめとする消化管の病気の適切な診断と治療を提供することをめざしています。内視鏡検査については、麻酔の使用や、胃内視鏡検査の場合には経鼻内視鏡を導入するなど、できるだけ苦痛が少なく検査を受けていただけるよう努めています。また、検査中にポリープが見つかった場合、当院で切除できる場合は、その場で実施しています。切除が難しい場合には、患者さんが希望される病院、あるいは専門の医師がいる病院へ紹介しています。さらに、胃と大腸の内視鏡検査を同日に続けて受けていただくことも可能です。ウェブ予約システムも導入しており、患者さんができるだけ少ない待ち時間で診察を受けてもらえるようにしています。
内視鏡検査で工夫しているところはありますか?
大腸内視鏡検査の際に必要な下剤の服用は、基本的に自宅で飲んでいただいてから来院してもらうようにしています。人それぞれではありますが、使い慣れた自宅のトイレで緊張せずに前処置を行っていただいたほうが、患者さんは安心できるのではないかと考えています。また、飲みにくい下剤を約2リットル服用するのはつらいものですが、前日の夜と当日の朝にコップ1杯程度を服用するだけで済む下剤も用意しています。その場合は、前日の食事を検査食にしていただく必要がありますが、患者さんとよく相談した上で、どちらを選ぶか決めていただけるようにしています。
なぜ、つらさの少ない内視鏡検査にこだわっているのですか?

消化管のがんを早期発見するためには、定期的に内視鏡検査を受けてもらうことが重要だからです。これだったら次回も受けようと思っていただけるような検査をめざしています。そのためには、患者さんの心配を取り除くことも欠かせません。事前にしっかりと説明し、納得いただいてから検査を行っています。また、胃の内視鏡検査は、経鼻と経口の両方に対応しています。それぞれのメリットとデメリットを伝え、患者さんの希望に応じて選択しています。経口の胃内視鏡検査と大腸内視鏡検査では、鎮静麻酔を使用します。加えて、できるだけ痛みを与えないような丁寧な内視鏡の操作もポイントですが、これは長年の経験から得られたテクニックともいえます。患者さんへの負担を軽くするため、速やかにかつ見逃しのないよう丁寧な観察を心がけていますので、検査後の患者さんに「苦しくなかったです」と言ってもらえたら本当にうれしいですね。
病気もリスクマネジメントが大切
内視鏡検査以外で、力を入れていることはありますか?

病気もリスクマネジメントという考え方が大事だと思うんです。自動車で例えれば、スピードの出し過ぎや整備不良は事故につながりますよね。それと同じような考え方で、自分の健康もリスクマネジメントをすることが必要です。そして、健康のリスクは一人ひとりで違いますから、一般的な健康診断や人間ドックだけでは不十分で、その人に特化した検査が必要です。また、個々の患者さんのリスクは、3つの要素で決まると私は考えています。例えば、がんや病気で人が亡くなるリスクは、遺伝と血縁、生活習慣、感染症、この3つが挙げられます。一人ひとりが、自分はどのようなリスクを持っているのかを把握し、それに合わせて定期的に検査を受けることが、病気の早期発見や早期治療につながり、結果として寿命を伸ばすことにもつながります。ですが、割と皆さんそういうことを意識せずに生活を送っていますよね。
自分のリスクを知ることができるのですか?
意外と簡単にわかります。1つ目は、自分の親や祖父母がどのような病気にかかったことがあるのか。それによって、おおよその遺伝性を知ることができます。2つ目は生活習慣です。生活習慣で重要なのが飲酒と喫煙。これらを嗜む方は、がんのリスクが高くなります。3つ目は感染症です。昔から言われているのはウイルス性の肝がんですが、現在では胃がんの原因の99%はピロリ菌であるといわれ、子宮頸がんはHPVが原因であるといわれています。このように感染症が原因となるがんは少なくありません。ですから、自分がそれらの感染症にかかっていないかがわかれば、リスクも判断できます。これら3つをできるだけ早めに知り、自分のリスクを明らかにして、それに応じて検査を受けていくこと。そして、感染症であれば治療をする。お酒やタバコはやめるか減らす。そうすることで病気をマネジメントすることが望めると考えています。
それによって診療の内容も変わるのですか?

例えば、当院に通っている患者さんに「次は何年後に検査を受けましょう」と案内する際、一人ひとり検査の時期を変えるようにしています。ピロリ菌に感染している、あるいは以前、除菌治療をした場合や、すでに早期がんを治療したことがある場合はリスクが高いため、年に1回。ピロリ菌に感染していない場合や、大腸内視鏡検査をして何も異常がない場合にはリスクが低いので、それ以上で良いと伝えています。毎年健診を受けているから大丈夫だと考えるのではなく、潜んでいる病気やリスクもありますから、消化器のがんについては一度内視鏡検査を受けていただき、現状をしっかりと評価した上で、自分の健康を管理していくことをお勧めします。
患者が自分の現状を知ることが大切
診療で心がけていることはありますか?

過去に医療機関を受診した時に、「薬はもらったけれど、どんな診断や疑いでその薬が処方されたのかはよくわからない」という方が多いのではないでしょうか。本来、診断があって治療が行われるのは当然のことですが、説明がされていなかったのか、あるいは聞いても理解できなかったのか、忘れてしまったのかもしれません。当院では、そのようなことがないように心がけています。現在の状態について「このような病気の可能性があり、この検査が必要です」とお伝えし、「今の時点ではこの薬を試してみましょう」と説明します。そして診断が確定した場合には、「現状に対する最善の治療はこれだと考えられます」と必ずお伝えするよう努めています。
話は変わりますが、先生はなぜ医師を志したのですか?
子どもの頃に親戚が大腸の病気を患ったことが私に強い影響を与えました。治療を受けた後、定期的に内視鏡検査を受け、ポリープの切除を続けていました。内視鏡による切除は、当時としては先進的な医療であり、開腹せずに大腸内にある患部を取り除けるという事実は非常に衝撃的でした。その経験から、医師になるなら「不治の病」と言われるがんを治せる医師になりたいと強く思うようになりました。特に、日本人の死亡原因の上位を占める大腸がんや胃がんを治したいという考えから、私は医師となり、消化器領域へと進むことにしました。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

アメリカでは大腸がんによる死亡率が減少しているといわれていますが、日本では大腸がんによる死亡率は改善されていません。特に、大腸がんは女性の死亡率の第1位を維持しています。一方で、胃がんや大腸がんは早期発見さえできれば完治がめざせます。早期発見によって一人でも多くの患者さんを助けるためには、まずご自身の症状や生活習慣などに潜む危険因子を知っていただきたいと思います。また、最近では胃の不調に対して高い効果が期待できる市販薬が販売されるようになりました。それ自体を一概に悪いことだとは思いませんが、がんなどの症状が隠されてしまう危険があります。ですから、そのような薬が頻繁に必要になる場合には、内視鏡検査を受けてがんなどがないか確認することをお勧めします。

