千葉 和成 院長の独自取材記事
上田歯科医院
(市川市/下総中山駅)
最終更新日:2025/07/14

下総中山駅から徒歩約5分、千葉街道沿いに位置する「上田歯科医院」は、開院から100年以上の歴史を持つ地域密着型の歯科医院だ。千葉和成院長は、東京歯科大学を卒業後、市川総合病院で歯科口腔外科を専門に勤務し、1998年に2代目院長だった父から同院を継承。現在、3代目院長として従事している。千葉先生は地域住民の来院や患者からの紹介が多い同院だからこそ、人と人の縁を大切にしながら「一生にわたり患者さんの歯の健康を守りたい」という思いで日々の診療にあたっているという。地域に根差し、長い歴史を積み重ねてきた同院。そのこだわりや今後の展望について聞いた。
(取材日2025年6月17日)
一生にわたり歯の健康を守ることが目標
開院から100年以上の歴史があるとお伺いしています。

当院は1921年に開院しました。初代院長の上田千之先生から父が経営を受け継ぎ、私が3代目の院長となります。地域で長い歴史を持つ歯科医院であり、歯の状態を4世代にわたり診させていただいているご家族もいます。ここ数年は、当院も例に漏れず、新型コロナウイルス感染症流行の影響で経営に大きな打撃を受けました。それでも地域の皆さまに支えられ、2024年頃から元の状態に少しずつ戻りつつあります。今年4月には娘が歯科大学に入学しました。大学・大学院を卒業し、他の歯科医院で修業を積んだと仮定して10年ほどの時間が必要となりますが、当院の継承を独立の一つの選択肢に含めてくれたらうれしいと考えています。
娘さんが事業を継承されるとしたら4代目、そして、開院から150年という節目も視野に入ってきますね。
当院では3~5年という短いタイムスパンではなく、一生にわたって患者さんの口腔内の管理を行うこと、また健康を維持していくことを目標に掲げています。例えば、最後の治療から10年後に来院された患者さんがいらした場合、私は「この先10年以上は長持ちする治療をしよう」という思いで日々の診療にあたっています。娘には事業の継承を決して無理強いしたくはありません。それでも当院の歴史の中で培われてきた長期的な視点や診療への思い、そして患者さんとの関係性は受け継いでほしいと考えています。
現在、どのような患者さんが多く来院されていますか?

通院される患者さんの多くは周辺エリアにお住まいの方々で、顔なじみの方がほとんどです。また、過去に来院された患者さんからのご紹介が圧倒的に多いのも当院の特徴です。インターネットで検索されて来られた方よりも、紹介で来られた方々のほうが長く来院してくださる傾向があります。新規で来られる方はもちろん、信頼して紹介してくださる輪も大事にしながら、来院されている患者さんや地域の皆さまに対して丁寧に診療を行うことを心がけています。今後どのように時代が変わっても、患者さん同士のつながりは来院のきっかけであり続けるでしょう。人と人とのご縁はいつまでも大切にしていきたいです。
患者との信頼関係の構築で安心・納得・同意を引き出す
貴院が大事にしている診療方針を教えてください。

当然のことですが、治療は患者さんの同意がないと進めることができません。私はその同意をいかに引き出すかを常に考えています。そのため、納得感や安心感のあるコミュニケーションが非常に重要だと捉えています。例えば、1本の歯を抜歯するという方針を決めるにあたり、当院では2~3年の時間をかけることも珍しくありません。昨今ではすぐに抜歯してインプラント治療に移行することも多いので、ある意味では非効率に思えるかもしれません。それでも、患者さんにとって歯は一生もの。可能な限り長持ちさせることが、歯科医師の務めだと考えています。抜歯以外のシチュエーションでも、患者さんとの信頼関係の構築を優先することを常に心がけています。
来院される患者さんにはどのような悩みや主訴が多いのでしょうか?
割合としては定期検診が多いです。また、歯や歯茎の痛み、腫れを訴える方も多く来院されます。当院では一般歯科やインプラント治療、矯正歯科、訪問診療など幅広く対応することで、可能な限り患者さんのご要望に応えられるよう体制を整えています。現在、矯正歯科とインプラント治療に関しては、それぞれ外部の専門家に依頼して、月に1度診療に来てもらっています。矯正歯科の先生は当院で診療を開始して3年目になりますし、矯正を行う患者さんも増えています。また、インプラント治療の先生も、専門的な相談が日々増えている状況です。今後も提供しているすべての診療分野で、患者さん一人ひとりに適した診療を提案していきたいです。
設備や機材面のアップデートなどがあれば教えてください。

当院は、歯科用CTがあまり普及していなかった頃から、設備や機材の拡充には常に配慮してきました。2025年7月からは、光学印象スキャナーを導入します。高齢者を中心に型採りが苦手な患者さんは少なくありません。中には、鎮痛作用や睡眠作用がある笑気ガスを吸入しながらの型採りを希望される患者さんもいます。光学印象スキャナーを導入すれば、口の中に機械を入れて何回か動かすだけで型採りが完了します。患者さんの負担はもちろん、歯科医師にとっても有用な設備になるでしょう。
印象に残っている患者さんとのエピソードはありますか?
たくさんありますが、最近では時間の経過を感じるシーンが多いです。直近では7歳の時に来ていた患者さんが8年ぶりに来院してくれました。また、小学生だった子が、社会人になって来てくれたケースもあります。私以上に患者さんのほうが、はっきりと覚えてくれていて、とてもうれしくなりました。
自治体とも積極的に連携し、地域の健康増進に寄与
市と連携した歯科検診の取り組みにも積極的だとお伺いしています。

市川市の医療支援の取り組みとして、歯周疾患検診や「二十歳の歯科健康診査」、妊婦歯科健診、さらに、口腔がん検診を実施しています。特に、口腔がん検診に関しては、地域の歯科医院と自治体が連携して実施している事例は珍しいと思います。市川市は早くから口腔がん検診を始めた自治体の一つなんです。私の父が市長を務めていた時期があり、行政と歯科医院の連携を強化した経緯から口腔がん検診も始まったと聞いています。また、当院では、市と連携して、保育園や中学校、高校など児童・生徒の定期検診にも積極的に取り組んでいます。
訪問歯科診療も活発に行っているのですか?
昨今では訪問診療専門の歯科医師も増えましたが、当院では以前から特別養護老人ホームに訪問診療を行っています。また、通院していた患者さんが急に動けなくなったため、訪問してほしいというニーズも受けつけています。現在、訪問診療を行っている特別養護老人ホームは3ヵ所です。火曜日と水曜日、金曜日に診療を行っていますが、施設が大きいため、7月からは土曜日も診療日にする計画です。私は通院が困難な高齢者の方々にも、お口の健康をできるだけ長く維持していただきたいと考えています。訪問診療を行うことで、患者さんは食事をより楽しみ、笑顔を保てるはずです。また、口腔内をケアして細菌の繁殖を防ぐことで、虫歯や歯周病の予防、ひいては健康寿命の延伸につながればと思っています。
今後の展望をお聞かせください。

私は今年で大学を卒業して30年になります。キャリアを積む過程で、患者さんの歯の健康について長期的なデータや知見が蓄積されてきました。私はその経験や知識を、地域の皆さまに還元していきたいと考えています。長らくさまざまな症例に携わってきた歯科医師だからこそわかることは多いです。そして、重要なのは、それらを患者さんが理解できるように伝えていくことです。納得感や安心感を得てもらえるように、地域の皆さまに根気強く自分の考えや経験を伝えていきたいです。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
当院は、幅広い年齢層の患者さんに通院していただいている地域密着型の歯科医院です。お子さんからご高齢の方まで、歯科医院に苦手意識を持たれている方は多いと思いますが、安心して長期的に通ってもらうために、皆さまの気持ちに寄り添った診療を続けていきます。娘が歯科医師として独立するまで10年ほど時間があります。私は今55歳なので、娘が独立する頃には65歳になっているでしょう。「上田歯科医院」の歴史を紡いでいくためにも、自身の健康にも気を配りながら、患者さんの健康促進や治療のために邁進していきたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/40万円~、歯列矯正/80万円~