登倉 博子 院長の独自取材記事
ヒロコデンタルケア
(世田谷区/二子玉川駅)
最終更新日:2025/06/06

二子玉川駅から徒歩5分、華やかににぎわうエリアから少し離れた通りにある「ヒロコデンタルケア」は、院長の登倉博子先生が2006年に開業した歯科クリニックだ。子どもから高齢者まで幅広い世代に対応し、すべての治療において咬み合わせや顎機能を考慮し、不調の原因を突き止めた上で治療計画を立てるのが同院の特徴だ。登倉院長は、自身が患者として受けた治療経験をきっかけに、トラブルの原因となった咬み合わせについて探求を開始したという。歯学の各分野を総合的につなげる歯科医療の発展に向けた活動も展開してきた。そんな登倉院長に、咬み合わせ治療の内容や診療方針などを聞いた。
(取材日2024年6月14日/更新日2025年6月3日)
咬み合わせ機能を重視した歯科診療で健康をサポート
どのような患者さんが多く来院されていますか?

近隣にお住まいの方を中心に、赤ちゃんからご高齢の方まで幅広い世代の方が来院されています。受診のきっかけも、痛みや腫れなどの症状がある、詰め物が取れた、口臭や歯並びが気になる、メンテナンスをしたいなどさまざまです。多様なニーズにお応えするため、当院では虫歯や歯周病などの一般歯科はもちろん、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科など、歯科全般を診療しています。当院のコンセプトは、「リスクをできるだけ未然に防ぎ、未病で維持する」ことです。一部分の症状だけを診るのではなく、お口のトラブルの原因を包括的に調べて再発を防止する原因療法や、トラブルを未然に防ぐ予防に力を入れています。特に咬み合わせを重視して、ゆがんでしまった歯列や顎の位置を機能的に適切な場所へ適応させるようめざしています。
なぜ咬み合わせを重視しているのですか?
咬み合わせは、食べることや飲み込むこと、会話、認知、呼吸、姿勢、運動機能といった、頭・顔・顎・口などの口腔・頭蓋顎顔面の機能に密接に関わっていると考えています。私は「見た目がそれなりにきれいで今現在咬めている」という基準では測りきれない、もっと機能的で生命活動の根源的なものを「咬み合わせ」と呼んでいます。機能的に咬み合わせが悪いと歯や歯を支える骨や顎関節への負担が大きくなって、歯や骨のトラブルや顎関節症を引き起こし、さらに頭痛や肩・首の凝り、腰痛の原因となり得るなど全身の健康にも大きく影響すると考えられます。咬み合わせに問題がある場合、単に壊れた歯や虫歯の修復治療、歯周炎の治療を行っても、トラブルを繰り返すリスクがあります。そのため、できるだけ原因を探って取り除く治療が大切だと考えています。
咬み合わせ治療の方針を教えてください。

上下の歯がカチッと咬み合いしっかり咬めることはもちろん、「顎関節と上下の歯との位置関係や顎運動路との調和」も重要だと考えています。一つの例が、睡眠中の歯ぎしりです。人間が歯で咬む力は非常に強く、食事の時に歯にかかる力はおおよそ体重分ですが、睡眠中の歯ぎしりではさらに強い力がかかります。咬み合わせの不調和があるとより負担がかかるために、歯にひびが入ったり、歯が割れたり、歯を支える骨が破壊されたりすることもあります。さらに歯にひびなどのある箇所は細菌が侵入しやすくなるため、虫歯や歯周病のリスクにもつながります。歯を守るには虫歯や歯周病など細菌のコントロールとともに、過剰にかかる力のコントロールも重要です。睡眠中も顎関節や歯や骨に過剰な力の負荷がかからないバランスの良い咬み合わせ、お口本来の機能を取り戻すことをゴールとして日々の診療に取り組んでいます。
顎を本来あるべき位置に適応させるための治療を
咬み合わせが悪くなる原因は何でしょうか?

遺伝的な要因ももちろんありますが、赤ちゃん時代から15歳くらいまでの成長発達期の口の使い方がとても重要で、特に幼少期の姿勢や指しゃぶりなどの習癖、飲食の仕方は歯列形成に強く影響します。顎の位置や形、歯並びは、おおむね15~16歳頃には決まってきます。当院では赤ちゃんの抱き方や哺乳瓶の選び方、ミルクの飲ませ方、離乳食の与え方など、お口の筋肉を鍛えるための生活習慣をアドバイスしています。子どもたちの顎や歯が正しい位置にある状態への成長をめざすには、できるだけ早い段階で予防や治療を進めることが大切です。早ければ早いほど、できるアプローチは多くなります。ぜひ赤ちゃん時代からご受診いただきたいと思います。
小児の咬み合わせ治療についても教えてください。
お子さんの場合は予防的な側面が大きく、定期的な観察の上でお口の適切な使い方を習慣づけるための生活指導を行い、咬み合わせや口腔機能を良い状態に導いていきます。5〜6歳以降の不正咬合のお子さんには、生活習慣の改善と併せて装置を用いた咬み合わせの誘導や、マウスピース型装置やワイヤーを用いた矯正を行います。近年、子どもの口腔機能の発達不全が問題化していて、2020年4月から18歳未満の口腔機能検査の項目に「口唇閉鎖不全」の検査が追加されました。口唇閉鎖不全とは、いわゆる「口ぽかん」の状態のこと。成長期に生じた口唇閉鎖不全が慢性的に続くと、歯並びが乱れて咬み合わせが悪くなり、咬む力も低下すると考えられます。子どもたちの健全な咬合育成のために、虫歯予防のためのクリーニングやフッ素塗布に加えて、口腔機能検査も積極的に受けていただきたいです。
咬み合わせ治療の方法について教えてください。

まずは治療前の詳細な検査と診断が重要だと考え、顎の位置や顎の運動経路を3次元的に評価するための検査装置「顎機能咬合解析システム」のほか、顔の骨格や歯の角度・位置などを診査するための「頭部エックス線規格写真」、口腔内の状態と顎関節の動きを3次元的に把握するための「顎態模型」を備えています。その上で歯ぎしり検査などのデータに基づいて適切な顎位を決定し、ずれている顎を本来あるべき位置に適応させるための治療を行います。治療方法は、矯正やCAD/CAM冠システムなどによる仮歯や補綴治療、またはこれらの組み合わせなど、さまざまです。大人はすでにお口の成長が止まっているので、限界はありますが「本来あるべきところにできるだけ近づけること」を目標としています。
なるべく抜かない、削らない治療を実践
抜歯を極力控える矯正も行っているそうですね。

はい。ワイヤー装置を用いた歯列矯正では、歯を平面ではなく3次元的に動かすことの見込めるシステムを使用し、抜歯を伴わない矯正を行っています。ただ、長期間ワイヤーを装着するのが大変でご希望があれば、矯正が終盤に近づいたところでマウスピース型装置に切り替え、少しでも患者さんの負担を軽くできればと考えています。抜歯だけでなく、できるだけ歯を削らず神経(歯髄)を残す「歯髄温存療法」にもこだわっています。歯髄のある歯の寿命に比べて歯髄を抜いた歯の寿命は大幅に短くなるといわれています。当院では、虫歯に感染した歯質を除去して歯髄が露出してしまった場合でも歯髄は可能な限り除去せず、薬を使って歯髄を保護する治療を行います。
咬み合わせ治療に関心を持ったのはなぜですか?
私自身が患者として歯を治療した数年後に、歯の崩壊や顎関節症などのトラブルを経験したのですが、その原因が咬み合わせだったのです。この出来事を機に「咬み合わせってなんだろう」と疑問を抱き、長年探求を続けてきました。たくさんの勉強会に参加し、多くの先生方の指導を受け、ようやく「自分が納得できるコンセプトと治療法」と出会い、それを発展させたものが当院の診療スタイルです。お口の機能や咬み合わせ機能はお口だけでなく、ひいては全身につながっていることを、クリニック内外で伝えていきたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

日本人はトラブルの起こった歯の治療を受けているにもかかわらず、最終的に歯がなくなりやすい国民であるというデータが出ています。お口の中には、自分では気づきにくいことがたくさんあります。症状がなくても定期的に検診を受け、予防・管理を継続していただきたいですね。特にお子さんの口腔機能の健全な発育や不正咬合の予防、虫歯予防は、将来につながります。成人にとっても、口腔機能の低下が誤嚥性肺炎や嚥下機能障害などの命に関わる病気につながる可能性もあるため、お口の機能と、機能にマッチした咬み合わせはとても重要です。これからも探求を続け、地域の皆さんが毎日を快適に、すてきに、生き生きと過ごせる診療をめざしていきます。赤ちゃんからご高齢の方まで、ご家族ぐるみでのご来院を心よりお待ちしております。
自由診療費用の目安
自由診療とは歯列矯正/10万円~、マウスピース型装置を用いた矯正/10万円~、インプラント治療/30万円~、小児の咬合誘導/3万円~、セラミックの修復物/3万円~、歯ぎしり検査/5500円
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。