山口 暁子 院長の独自取材記事
アキコ ルミエール眼科
(横浜市都筑区/センター南駅)
最終更新日:2024/05/27

ブルーライン・センター南駅からエスカレーターを下りて徒歩1分。バスロータリーの前にたたずむクリニックビルの3階に「アキコ ルミエール眼科」はある。「目の健康を生涯維持していただくために、患者さん一人ひとりとお話ししながら診療できる場をつくりたい」と、院長の山口暁子(やまぐち・あきこ)先生が2005年に開業した。緑内障や眼底疾患、まぶたと涙の悩みから近視まで、診療の守備範囲が広いのが特徴で、乳児から高齢者まで家族ぐるみで通う患者も多いという。「病気と治療のプロセスについて正しい知識をもってもらうため、とにかくコミュニケーションを大切にしています」と話す山口院長に、地域に密着した医療への姿勢やバイタリティーを維持し続ける秘訣について語ってもらった。
(取材日2024年04月01日)
言葉を尽くして思いを伝え、治療法を共有する
こちらのクリニックの患者さんには、どのような特徴がありますか?

0歳からご高齢の方まで幅広い年代の方がいらっしゃいます。センター南駅はグリーンラインで日吉駅まで直通ということもあり、渋谷や中目黒まで四十数分で出られるんですね。そこから六本木や銀座にも行きやすいので、バリバリ働いている世代の方とそのご家族が多い気がしています。最初に来られた方がご家族に紹介してくださり、ご家族皆さんで通院いただくケースが結構ありますね。中には、ご夫婦で一緒に来る方もいらっしゃいます。地域に密着した医療を提供したい立場としてはうれしい限りです。
患者さんとはどのように向き合っていらっしゃいますか?
とにかくしっかりお話しします。お待たせする時間が少し長くなってしまうかもしれませんが、来てよかったと思っていただける診療にしたいですね。例えば緑内障は、40歳以上で20人に1人が発症しているといわれていますが、最悪の場合、失明につながる病気です。治療として眼圧を下げる必要があり、そのために点眼を続けなくてはなりません。眼圧の数値をどのくらい下げればいいのか、なるべく早く今後の見通しをお伝えするようにしています。緑内障は自覚症状がなくて、治療に時間がかかることが多いので、通院をやめて悪化してしまうケースが意外と多いんです。だから、緑内障に限りませんが、病気の特徴・治療期間・薬の種類や治療の選択肢などを理解していただくべく、診療中の私はずっとマシンガントークです(笑)。診療を通して、患者さんがご自身の病気や治療のことを把握することで通院のモチベーションを維持できるようにしたいですね。
患者さんが自己判断で通院をやめてしまうこともあるのですね。

そうですね。眼科疾患は高齢になればなるほど慢性疾患が増えてきますが、自覚症状のないものや変化の緩やかなものも多く、患者さんが気づかない場合も多いです。そのため、患者さんにはクリニックに通院してうまく自分の状態と付き合っていただきたいですね。私は、長い目で患者さんとお付き合いしたいと思い開業したので、時間のかかる大きな手術は行っていません。その代わり、一人でも多くの患者さんと向き合っていきたいと思っています。緑内障などは見えないことをあまり意識をしないで生涯を全うするのが一番ハッピーですので、視機能を少しでも維持できるよう全力を尽くすのが医師の責任であると考えています。
幅広い疾患に対応できるよう長年研鑽を積んだ後に開業
開業の際、患者さんとしっかりコミュニケーションをとると決められたのには、どんな背景があるのですか?

私は大学卒業後に慶應義塾大学病院の眼科に入局し、小児医療専門の病院に勤務したんですが、とにかくさまざまな経験を積みたかったんです。何かに特化した専門的な医師よりも、守備範囲を広く持ちたいと思って、診療の枠を決めずにいろいろな疾患に対応できるようにしました。「どんな患者さんが来ても対応できる」という自信が得られるまで、いろいろなスキルを習得しました。手術もたくさんして、当時の女性では珍しかったと思うんですが、網膜剥離の手術も担当しました。勤務医時代は午前に100人の外来、午後は手術の対応という状況で、診療中患者さんに伝えられるのは、エッセンスを一言程度でした。そうやって10年ほど修業する中で、もっと患者さんとコミュニケーションをとって良い信頼関係を築き、長くお付き合いしたいと感じて、開業に至りました。ちゃんと一人ひとりに向き合って、思いをすべて伝えたかったんです。
「どんな患者さんが来ても対応できる自信」というエピソードは患者さんにとってとても心強いですね。
もちろん時には疾患というのは教科書どおりのものではないので、診断に苦慮するものもありますが、自分で手に負えないと判断した場合は、手遅れになる前に、病院に紹介します。さっきお話ししたように、手術に関しては、医師の専門性と患者さんの希望を聞きながらいろいろな病院やクリニックに紹介しています。眼科のジャンルでいろいろな経験を積み、開業後もさらに経験を積んできたので、適材適所に振り分けるということができているのではないかなと思っています。そうして、この地域の皆さんに少しでも信頼していただけるようになったとしたらありがたいですね。24時間電話予約やウェブでの予約システムも使っていますが、すべての患者さんとみっちりお話しする態勢でやろうとすると、事前にご予約いただいていても、どうしてもお待たせすることになってしまうので、そこは今、とても心苦しい点ですね。
患者さんを迎えるにあたり、心がけていることはありますか?

患者さんが「来てよかった、安心した」と思える空間と医療を提供したいです。診察に関しては、患者さんとすべてを共有してわかりやすく説明する方針にしていますが、そこだけ頑張っても、クリニックで患者さんが過ごす時間に気持ち良くないことがあると、もう来たくないじゃないですか。ですから、スタッフのレスポンスや対応については気を配っています。当院は、仕切りを作らずに一つの広い空間にしてあるんです。だから、診察しながらでもスタッフの動きに目を光らせることができます(笑)。なので、みんないい緊張感を持って、患者さんに対応できていると思います。
仕事も趣味も同じくらい力を入れるのが充実の秘訣
お話を伺っていると、先生のお仕事への熱意が伝わってきますね。

仕事は本当に好きですね。患者さんとずっとお話ししていますし、マグロのように常に動いていないと楽しくない。朝から晩までここでたくさんの患者さんとお話しして、時間に追われながら仕事して。最近は医師会のお仕事もさせていただいて、昔よりずっと忙しくしています(笑)。でも私は、オンとオフの均衡が保たれているほうが調子がいいんです。
それはつまり、どういうことですか?
仕事と趣味を天秤にかけて、仕事が忙しければ忙しいほど、趣味にも力を入れたくなるんです。家に帰ってボーッとするだけではリフレッシュにはなりません。仕事に精力を傾ける分、プライベートも充実させないとバランス良く生活していけないんだと思っています。
今、趣味ではどういうことにはまっていらっしゃるんですか?

もともと趣味は幅広く、「朝活・夜活」と称して、映画のモーニングショーやレイトショーに行きますし、ジャズは昔から大好きで院内でも流しています。以前住んでいた場所の近くにライブスポットがあったのですが、最近はあまりライブに行けていません。でも、その分建築を見て回っています。有名な建築家が手がけたホテルを訪れたり、カフェで過ごしたり。それから、アートにも夢中です。何年か前に娘に誘われて国際芸術祭を見に行ったんですが、それからモダンアートへの興味が開花してしまって。若手アーティストが作品にかけるパッションやイマジネーションにふれると、すごくワクワクするんですよね。日本画も好きですし、歌舞伎や文楽の伝統芸能も好きです。
趣味の活動が充実するほど、お仕事にも力が入ると。
仕事とプライベートの天秤のバランスを保つという意味では、遊びが盛り上がるのは、仕事にも力が入っているからだと思っています(笑)。おかげさまで当院には、センター南駅界隈の皆さんにたくさん通っていただいています。開業医には定年がないので、いつまで続けるかは自分で決めることになりますが、私が向き合っている慢性疾患の患者さんを力の限り精一杯診させていただこうと考えています。そしていつか辞めるときには、後を継いでいただく方のことも考えたいですね。