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佐々木明彦 院長の独自取材記事

エンゼル歯科

(平塚市/平塚駅)

最終更新日:2021/10/12

佐々木明彦院長 エンゼル歯科 main

保護者や家族が付き添いで来ることを考えられたゆとりある待合室や奥に広がる診察室は、ビルの中にあるとは思えないほど、明るく落ち着いた空間。「エンゼル歯科」院長の佐々木明彦先生は開業して25年のベテラン小児歯科専門医だ。1984年当時はほとんどなかったという小児歯科専門の開業医のもとで勤務医として臨床経験を積み、テクニックを磨いてきた。診療スタイルは恩師から引き継がれたものだという。「一般歯科で自分の守備範囲を越えていると思えば、専門性の高いところに診療を依頼するというのが本来あるべき姿だと思うんです」という佐々木先生にその診療スタイルから、現在の小児歯科医療の問題に対する考えや今後の展望について、エンゼル歯科の診療の枠をこえて熱く語っていただいた。

(取材日2015年11月12日)

修復物の脱落が少なく痛みをともなわない診療システムを採用

小児歯科を志した理由をお聞かせいただけますか?

佐々木明彦院長 エンゼル歯科1

私が大学生の頃は研修医制度がなかったため、大学卒業後の就職先を探していたところ、たまたま募集していた小児歯科専門のエンゼル歯科で採用していただいたのが小児歯科の世界に入ったきっかけです。小児歯科医師になりたかったというより、医院の雰囲気や院長の槙本光先生のお人柄に惹かれたのが大きな理由です。出身は東京ですが、もともとウィンドサーフィンや釣りが好きで、神奈川県辺りで海の近くに住みたいとも考えていました。私の父も歯科医師なんですが、小児歯科に進むことを反対しなかったのも後押しになりましたね。槙本先生は横浜の本院のほかに平塚と川崎に分院を持っていらしたので、3医院を曜日変わりで勤めていました。それで6年経った頃、平塚の責任者だった先生が退職されることになり、平塚分院の継続について話が出たのを機に譲っていただいたのが開業に至った経緯です。小児歯科専門医の資格は開業後に研修して取得しました。

エンゼル歯科の診療スタイルについて教えてください。

診察室を見て通常は歯科医院にあるはずのものがないと思いませんか。うがいをするための機器であるスピットン(ユニットについているうがい皿)がないんです。当院では唾液に含まれる細菌の侵入を防ぐためスピットンを省き、ラバーダムというゴム膜状のマスクのような器具を装着して歯の治療をする方法を採っています。また、成人に対するのとは違う方法で局所麻酔をして痛みのない治療をしています。これらはアメリカの小児歯科のスタイルなんですよ。「虫歯の洪水」と言われたほど日本の子どもたちの間で虫歯が蔓延した1970年代当時、全国の大学の歯学部に次々と小児歯科の研究室や診療室が開設されたんですね。そうして小児歯科が分野として確立した背景があり、同時期にアメリカのハーバード大学フォーサイスデンタルセンターから小児歯科診療のノウハウを持ち帰り、鶴見大学の教授になられたのが大森郁朗先生でした。私はその大森先生の研究室の中心メンバーであった槙本先生に師事し、小児歯科臨床を学んだのです。今、孫請けのように受け継ぎ、実践している形ですね。

ラバーダムを使用するメリットを具体的に教えていただけますか。

佐々木明彦院長 エンゼル歯科2

簡単にいえば、修復物の脱落が少なく一度治療した歯の再感染が少ないというのがメリットかと思います。ラバーダムを使うことで、一時的に歯を乾燥状態にして治療をしますので、修復物がとれたり歯の中に細菌が入ったりする原因となる唾液をシャットアウトできます。つまり歯の乾燥状態を得られることで充填物を確実に接着できるんですね。ラバーダムのおかげで薬剤や機械が粘膜に触れることもありません。当院では市内だけでなく市外、県外からも2割ほどの患者さんがいらっしゃる中で、この診療を求めて海外に駐在している方が一時帰国された際に、お子さんを連れて来られるケースもあります。当院のホームページで診療について調べて来てくださる保護者の方々が多いことからも、広域的な意味でも専門性の高い診療を提供しているのだろうと思いますね。特に低年齢児の重度虫歯の治療をライフワークと考えていて、本当に困った方の助けになれればそれが一番うれしいです。

子どもの医療に対する意識を育てたい

そもそも大人の歯と子どもの歯を診るのには、どんな違いがあるのでしょうか。

佐々木明彦院長 エンゼル歯科3

お子さんは成長していくため、歯の生え替わりや顎の発達、噛み合わせの成長過程などを考慮して診療にあたらなければいけませんが、最も大きな違いはおおむね3歳半以下のお子さんは診療に協力してくれないということです。当院では院内を電車が走っていたり、診察中でもアニメが観られるようにしてあったりという楽しい空間づくりはあえてしていません。それはここが医療機関だということをわかってもらうためです。嫌なことはせず、ちょっと口の中を触ってもらって「ああ楽しかった」という気持ちで帰ってしまうと医療的な意識は育っていかないので、「ここは遊園地ではなく歯科医院なんだ」ということを少し意識してもらうようにしています。そうすると3歳半ぐらいのお子さんでも自分が何のためにこれをしているのかがわかるようになり、泣かないで診療ができるようになるんです。他院では暴れて治療ができなかったお子さんも当院では2、3回目からできるように変わります。虫歯を治すことに対して私たちが真剣に取り組んでいる姿勢が伝わるので、自分の健康のためにやらなきゃいけないんだと思ってくれるんですね。

エンゼル歯科の診療ポリシーについて教えてください。

お子さんと接する部分では今申し上げたことですが、小児歯科は歯科医師一人では成り立たなくてスタッフの力が大きいと感じています。私がお子さんに「ちゃんとやらないと治らないよ」と言うと、スタッフは「よく頑張ってる」とフォローする、そんな役割分担のような構図がありますね。今は難しい時代でさまざまな家庭の事情があるため、お子さんの様子だけでなく保護者の方への気配りとサポートも大事です。開業以来勤めてくれているスタッフもいますが、私以上に全体を見渡して頑張ってくれています。頼りになる存在ですね。虫歯の状態が同じでも対応が同じでいいとは限らないため、バリエーションの中からスタッフと相談して決めていき、お子さん本人や保護者の方のニーズに合わせた、きめ細かい対応を心がけています。

エンゼル歯科の特色はどのようなところだと感じていらっしゃいますか。

佐々木明彦院長 エンゼル歯科4

やはり小児歯科専門の歯科医院という専門性でしょうか。先日も近所の小児歯科と標榜のある歯科医院を4軒回られたものの解決に至らなかったため、紹介ではなくご自身で来院された横浜在住の方がいらっしゃいました。お子さんの上の前歯はすでに膿んでしまっていたので即治療を始めたのですが、実はこういうケースは結構あるんです。私は歯科医師会で役員を務めてきたのですが、平塚エリアで歯科医師会に入っている歯科医師は私のことを知っているので、重症の虫歯のお子さんや病気や障がいをお持ちのお子さんなどが紹介で来てくださるんですよ。でも最近は歯科医師会に入会しない歯科医師の方も多くいます。そのためその方々とのネットワークがないんです。だからお子さんはその歯科医院に通い続けているんだけど、問題は解決しないという現象が全国で起きてしまっていて。これは小児歯科界全体で感じていることであり、大きな課題なんです。

幅広い視野を持って地域の歯科医療に貢献したい

小児歯科医療の抱える課題とは難しそうですね。

佐々木明彦院長 エンゼル歯科5

日本小児歯科学会や全国小児歯科開業医会(JSPP)という団体のネットワークが小児歯科の専門医の中にはあるので、それを知って活用してほしいと思います。昨今は子どもの虫歯が減少傾向にあり、保護者の方の意識が高まっているという一つの事実がある一方で、貧困や子育ての困難が叫ばれていたり虐待に関わるような事件がクローズアップされていたりと、非常に追い詰められているように感じます。もっと掘り下げると非正規雇用の問題も社会の背景としてありますよね。そんな中で保護者が子どもの面倒をじゅうぶん見てあげられず、子どもが歯や口の健康を害してしまっているケースもあるわけです。そういうお子さんが小児歯科の専門医ではない歯科医師のところで「とりあえず」の治療をして解決に至らず、歯科医師自身も悩みを抱えてしまっていることを歯科医療全体の取り組みとしてなくしたいですね。

今後のクリニックづくりについてはどうお考えですか。

現在、当院には年間400〜500人の新患が来られるので、平塚エリアのお子さんでいうと5人に1人は必ず一度は当院の診療を受けていることになります。今後も規模を広げることは考えておらず、自分の身の丈にあったところでやっていくつもりです。ありがたいことに、当院の診療を求めて遠方からも患者さんが来てくださり、結果に満足して定期診査にも通ってくださる方が多いので、引き続き信頼に応えながら続けていきたいですね。虫歯になりやすかったり、重度の虫歯になってしまったお子さんでも的確に治療した後は予防処置をして永久歯を健康に保っていけば歯のことで悩んだり、歯の問題が生きていく上で障害になったりということはありません。常にその子の人生に影を落とすことのないようにと考えて診療していますし、それは変わらない目標です。

地域医療においても展望をお聞かせください。

佐々木明彦院長 エンゼル歯科6

3歳児健診や保育園・幼稚園の健診などで当院の診療結果を他院の歯科医師が見てくださる機会があります。そういう歯科医師や、ある地域に住むお子さんが当院を卒業して地元の一般歯科に通うようになったとき、そこの歯科医師が私のことをとても信頼してくれるんです。お子さんの歯と口の中を診てどこの小児歯科に通っていたのかを保護者の方に聞き、当院に見学に来てくれたり、相談しにきてくれたりしてそこでのネットワークができあがりつつあるのでそれは大事にしていきたいのと、やはり歯科医師会に入っていない先生方とも何とか連携をとりたくて、最近は時々付近の歯科医院に出向いています。一度でも顔を合わせれば紹介もしやすいと思いまして。とても助かりますってよく言われますね。小児科の先生方や行政のスタッフと当院との連携はおおむねとれているので、歯科医師会にこだわらず同じ地域で開業、あるいは勤務している歯科医師も含めての地域歯科医療や歯科保健に、もう少し広い視野で取り組んでいけたらと思います。

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