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岸 忠宏 院長の独自取材記事

岸内科胃腸科医院

(川崎市多摩区/生田駅)

最終更新日:2020/05/11

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「お祭では、法被姿で先頭切ってみこしを担いでます」と話すのは、「岸内科胃腸科医院」の岸忠宏院長。生田の町で育ってきた地元出身のドクターだ。父である先代院長が1961年に開業した同院を引き継ぎ、地域に密着した医療を提供し続けている。インタビューでは、町の歴史や患者への配慮、大学病院時代のエピソードなど、いずれもユニークな語り口で話してくれたが、その話術も町のホームドクターとしては必須の条件なのだそう。2006年からは塩田香先生も診療に加わり、現在は二人三脚でクリニックを切り盛りしている岸院長。2人体制によって生まれた新たなメリットや、大きな病院から退院した患者を待つ「日常」と「非日常」の話、そのための取り組みなど、示唆に富んださまざまな話を聞かせてくれた。
(更新日2020年5月11日)

生田の地に根づいて半世紀の”よろず相談所”

長い歴史を持つ医院ですが、院内はとても明るくきれいですね。

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1961年に父が開院し、もう50年以上たちます。開院当初は目の前の津久井道はまだ砂利道で、高いビルもほとんどなく、この辺は畑が広がっていました。僕は聖マリアンナ医科大学を卒業後、ずっと附属の大学病院で勤務していたのですが、父の具合が悪くなったためこの医院に戻ってきました。それが2001年頃の話です。ここでの診療を始めるにあたり、医院も全面的に建て替えました。完全バリアフリーにし、ドアもすべてスライド式です。駐車場からこの診察室に至る動線もスムーズで、全体的に低くゆとりを持って造りました。線路が近いため防音効果の高い二重窓にし、自然光がたっぷり入るよう、ガラスブロックや天窓をはめ込みました。

大学病院の勤務医から開業医になられて、診療のスタイルなどに変化はありましたか?

大学病院のドクターも開業医も基本的には同じだと僕は考えています。最近は専門性をアピールするクリニックも増えていますが、実際に町の内科に駆け込んで来る患者さんは、風邪、インフルエンザ、湿疹など症状はさまざま。町のホームドクターは、よろず相談所のようにいろんな疾患を診て、必要に応じて大学病院や別のドクターを紹介するナビゲーターですから、一通りのことを診断できる能力やスキルは不可欠だと思います。僕は大学病院の第一内科で心筋梗塞や白血病など、いろんな疾患を診てきました。今とは教育体制が違い、ジェネラリストとしての教育を受けた最後の世代かもしれません。ですから、町の開業医になっても戸惑いはありませんでしたし、そもそも「町のお医者さん」になるために経験を積んできたわけですからね。患者さんにより良いナビゲーションができるよう、他病院との連携にも力を入れてつながりを強固にしています。

先生のご専門が消化器ということで、クリニックにはやはり胃の不調で訪れる人が多いのでしょうか?

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確かに胃が疲れている人は多いです。胃にトラブルを抱えた人は、その多くが心にも何かしらの問題や悩みを抱えているケースが多いですね。胃腸はストレスと大きく関係しています。よく仕事やプライベートで緊張を強いられた時に「胃がキリキリ痛い」と感じることがあります。胃が痛いという症状は交感神経が活発になっているから起き、交感神経が活発になるということはそれだけ緊張しているということ。端的に例えると、ケンカしやすい状態が交感神経の活発な時です。仕事のイライラによってストレスがたまるほど、胃はずっとケンカ状態が続いて疲弊してしまいます。つらくなるのも当然です。

病気だけでなく、患者の心、そして家族の心も診る

先生の言葉はとてもわかりやすいですね。

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尊敬する先生や先輩方から、話術も含めいろいろな術を盗んできました。尊敬する先輩ドクターの一人から深く学ばせてもらった出来事があります。病院のベッドである男性の患者さんが最期の瞬間を迎えておられました。しかしベッドの周りに集まっていたご家族は、誰もその患者さんの顔を見ていません。どこを見ているのかといえばモニターなんです。そこでその先輩はモニターを外して病室の外へ出しました。ご家族も看護師もみな呆気にとられていたのですが、そのドクターが「お父さんの顔を見てあげてください」と。そして病室の端にいた息子さんの手を取って、お父さんの手を握らせました。家族が死んでいくということを皆が納得しなければならない大事な瞬間なんです。僕はその先輩ドクターの行動に非常に感銘を受けました。ドクターというのは、患者さんも診るけど、そのご家族の心も同時に見なければならないんですね。

先生は若いドクターの育成にも携わっておられますね。

当院は臨床研修協力施設として、毎年5〜6人の研修医を受け入れています。彼らに僕はたくさんのことを伝えていますが、その根っこにあるのは「人を診なさい」ということ。「人を診る=病気を診る」ではありません。患者さんは話を聞いてほしい、検査をしてほしい、など、いろんな要望をお持ちです。ドクターはその気持ちに気づけなくてはならない。ではどうすれば人の気持ちに気づける人間になれるか。そのためには恋をしなさいと(笑)。冗談ではなく、恋をすることで相手の気持ちをキャッチする術を身につけるのです。いろんな業種の人たちと話すことも大事です。僕も異業種の友人は多く、彼らは必ず医者の悪い部分を言ってくれますから。研修医を院長用の診察椅子に座らせ、僕が同席して診察を任せるという研修も行っています。単調な指導ではなく、いろんな経験を積むことで、より魅力的なドクターに成長してほしいと思っています。

2006年から塩田香先生を迎え、どのように体制が変化しましたか?

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2人体制になって、待ち時間を短縮できるようになりましたし、女性患者さんからの「同性のドクターに診てほしい」という要望にも応えられるようになったのは大きなメリットですね。塩田先生は僕と同じ大学の出身で、僕が彼女を指導していた時期もあります。診療方針なども相談できるので、クリニックを運営するパートナーとして非常に心強く感じています。塩田先生は僕のことを「信頼できるドクターであるのはもちろん、人生観のバランスも取れている」と評価してくれているようです。

フランクに本音で会話できる地域医療の原点

先生は介護事業にも取り組んでおられますね。

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介護と医療は似ている部分が多い一方、対照的な部分もあります。例えば、ある男性が脳梗塞で倒れたとします。その治療で病院に入院している時、それは彼にとって「非日常」です。ところが病院からは、片足不随の回復はこれ以上望めないからと退院を勧められる。すると男性にとって片足不随の生活は「日常」になります。そして、男性にはその後の長い人生、片足が不自由な日常が待っています。そのような人はとても多く、また社会の高齢化もどんどん進んでいますから、今後は介護などの福祉サービスはより一層必要になるでしょう。僕の先祖は安土桃山時代からこの辺に住んでいるそうです。ずっとこの生田の町で暮らしてきたわけですから、医療や介護で地域に貢献することは当然だと考えています。

先生のエネルギッシュなパワーの秘訣は?

僕はお酒も大好きだし、特に意識している健康づくりはありません。強いて言うならストレスを上手に発散することです。少し難しい話になりますが、「ストレスをためちゃダメ」「ストレス解消に何かしなくちゃ」と思っているうちは、その考え自体がストレスになりますからね。そもそも道を歩いているだけでもストレスはたまります。だからストレスはたまるものだと諦めて、だったらそれを発散する術を見つければよいのです。僕の場合は家でボーッとしていたり、お酒を楽しく飲んだりすることが一番の気分転換。ゴルフなどスポーツもするのですが、成績の良しあしがストレスになりますから(笑)、ほどほどに楽しんでいます。

読者へのメッセージをお願いします。

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ぜひなんでも話せるホームドクターを持ってください。できればフランクに会話できる相手が良いのでしょうが、こればかりは人によって好みや相性がありますからね。僕はこんな性格ですから、患者さんとも本音で会話しています。すると患者さんの中には「先生だから話すけどさ」という前置きをして話してくれる人もいます。多くの患者さんは、ドクターに話を聞いてほしいという望みをお持ちなのでしょう。ですから、なんでも話せるかかりつけ医がいると安心できると思います。今後も地域にしっかりと根づいた本音の医療を提供していきたいです。

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