津田 則子 院長の独自取材記事
津田眼科
(川崎市麻生区/新百合ヶ丘駅)
最終更新日:2024/08/08

1997年の開業以来、地域住民の目の健康を支えてきた「津田眼科」。広々とした待合室は病院特有の緊張感をほぐし、心地良い雰囲気に満たされている。院長を務める津田則子先生は、穏やかなほほ笑みと明るく朗らかな語り口で、周囲を和やかにしてくれる医師。目標としている「受診して良かったと思われる診療」を証明するかのように、赤ちゃんから高齢者まで幅広い年齢層の患者が訪れる。同院は一般的な眼科疾患から白内障・緑内障・加齢黄斑変性の治療、日帰り手術まで幅広くカバー。患者とのコミュニケーションを大切にし、先進の治療法や検査機器の導入にも余念がない。同じ川崎市には系列の眼科が2院あり、連携しながら患者に合った治療へとつなげることも強みだ。取材では、津田先生の診療のポリシーや患者への真っすぐな想いをひもとく。
(取材日2024年6月24日)
精密な検査から精度の高い診断へつなげ、上質な治療へ
開業して27年がたちます。地元密着の眼科医院ですね。

眼科の医師である夫と私の2人で始めた「津田眼科」ですが、長い年月を経て、宮前平の「津田眼科クリニック」宿河原の「宿河原津田眼科クリニック」が開業し、3院体制を取るようになりました。現在の患者さんは地元住民を中心に、0~100歳くらいまで幅広くいらっしゃいます。子どもの頃から来院していた患者さんが成長し、自分のお子さんを連れて来てくださることもあるんですよ。当院は長く勤めるスタッフが多く、結婚や出産後も戻ってくれる人がたくさんいるので、顔なじみのスタッフが対応する安心感もあるのでしょう。患者さんのご相談は、幼児だと結膜炎や 弱視、涙道の閉塞などで、小学生では近視の治療が多いです。若い世代はコンタクトレンズの処方、中高年は緑内障、高齢者は白内障や加齢黄斑変性症などが目立ちます。そのほか、セカンドオピニオンとして利用されることもあります。
貴院の特色をお聞かせください。
経験豊富な視能訓練士が在籍し、精度にこだわる検査ができることは特色の一つです。検査の精度が高いとそれに基づく診断の精度も上がるので、特に子どもの斜視や弱視を見つけるための検査には欠かせない存在です。また、どのスタッフも患者さんとの関係が深く、医師に直接言いにくいことを患者さんから聞き、情報を共有してくれます。そのため、なるべく長く勤めてもらえるよう配慮し、勉強会など個人の知識やスキル向上の機会も設けています。さらなる特色としては、近隣の大学病院との緊密な連携体制ですね。対応困難な手術や、難しい症例には大学病院を紹介するほか、定期的に白内障や緑内障、斜視など、各分野に造詣の深い大学病院の先生に診療してもらっています。大学病院であれば数ヵ月待ちでも、身近なかかりつけの眼科で専門的な相談ができるメリットは大きいのではないでしょうか。
診療時に心がけていらっしゃることはありますか?

私のような地域の開業医は、患者さんに教えていただくことがとても多いんです。病気を診る、治療をすることはもちろん、「人を診る」という気持ちが一番重要と考えています。「医学的に最善と考えられるから」と私が一方的に治療方法を指示しても、患者さんの気持ちがついてこなければ不安や不満を抱えたままになり、治療の成果は上がらないでしょう。ですから、「一番困っていることは?」「より良く改善できることは?」と常に考え、患者さんから教えていただくという素直な気持ちを忘れないように心がけています。また、高齢者などは説明を忘れてしまうことも多いので、「前も説明したから、わかっているだろう」と決めつけず、コミュニケーションを密にして病状や注意事項などは何度も確認するように配慮しています。
緑内障の早期発見、白内障の日帰り手術などにも注力
中高年のご相談が多い緑内障には、どのように対応されていますか?

初期段階での発見に有用なOCT(光干渉断層計)という検査機器を導入し、自覚症状が出る前の発見に努めています。そして、失明のリスクを抑え、継続治療へつなげていくことをめざしています。40歳以上で一度も緑内障の検査を受けたことがない方、近視の強い方は、ぜひ一度検査においでください。当院では、コンタクトレンズの処方などを希望される40歳以上の方には、緑内障の検査を実施して早期発見に努めています。40歳以降で、老眼鏡を作るタイミングの検査でも良いでしょう。
白内障は、高齢者にとって避けて通れない病気です。日帰り手術をされているそうですね。
手術は基本的に、連携している「宿河原津田眼科クリニック」で実施します。手術中の眼内の圧力を一定に保つなど、目の負担を軽くしながら手術ができるシステムを導入しているので安心してください。趣味の刺しゅうができない、新聞の小さな文字が読めないなど、日常生活で細かな作業が難しく困り事が発生した時や、運転免許の更新ができない時には、手術を考えてみませんか。目の中に挿入する眼内レンズは度数の選び方で裸眼での見え方が違うので、丁寧にご相談に乗ります。例えば読書や刺しゅうを楽しみたい、外出して友人と話すのが好きといった生活スタイルを伺い、具体的な例えを出してご説明し、患者さんと一緒にその方に合った眼内レンズを見つけるようにしています。
近年、子どもの近視が増えていると聞きました。相談も多いのでは?

学童近視は世界的に増えており、当院でもよくご相談を受けます。近視は遺伝的要素ではありませんが、目の形状は遺伝するので、ご両親ともに近視であればお子さんもリスクが高いかもしれません。当院でも、近視を進行させないようアドバイスをさせていただきます。子どもの時期から眼鏡を作ることに抵抗を感じる親御さんもいらっしゃいますが、近視が軽いうちから眼鏡をかけて、きちんと見える状態の維持を図るほうが進みにくい傾向があります。お子さんの近視のサインは、ものを見る時に目を細めること。横向きで見る、顎を上げて下目づかいで見ることもあります。気づいたら、なるべく早く眼科を受診してください。
それぞれの強みを生かした3院で連携
「津田眼科クリニック」「宿河原津田眼科クリニック」とは、どのように連携されているのですか。

「津田眼科クリニック」は夫が、「宿河原津田眼科クリニック」は長女が院長を務めています。「津田眼科クリニック」では斜視の専門の先生に診てもらえるのでより専門的な診療が必要な場合は、当院から斜視の患者さんを紹介できるようにしています。一方、「宿河原津田眼科クリニック」は手術室が備わっているので、手術が必要な患者さんの対応時には連携しています。手術当日は当院から車で送迎しているので、患者さんの通院の負担もありません。逆に当院には、得意とする緑内障の相談を受けることも多いです。家族ぐるみなので情報共有が密となり、自宅でも話し合うことは少なくありません。眼科疾患に関するオンライン配信などがあると、家族みんなで観て意見を交わし、知識を深めることも日常的に行っています。3院では今後、連携しながら子どもの近視矯正のためのオルソケラトロジーの導入をしようかと検討し合っているところです。
2人の娘さんも眼科の医師なのですね。
2人とも若輩者ですが、患者さんに対して簡単かつ適切な言葉で病状や診断を伝えることができ、さすがだなと思っています。次女は大学卒業後、大学病院に籍を置きながら当院で土曜日に診療をサポートしてくれています。大学病院では、内視鏡を使用した涙道の手術なども行っているので、将来的にはそのような先進の技術を当院でも取り入れられたら理想的です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

医師の前だと、話を聞くばかりになる方も多いと思いますが、日頃の心配事や治療に対する疑問があれば話してみてください。目薬がしみる、点眼回数が多くてこなせないなど、ご不満はありませんか? そういった小さなストレスの積み重ねは治療の見込まれる効果を半減させる可能性があります。私たち医師は、患者さんから悩みや相談を持ちかけられると、うれしく感じるものなんです。例えば点眼を忘れがちなら、服薬と同時に点眼できるよう保管場所を一緒にするなど工夫の余地はあるはず。コミュニケーションを取りながら、ストレスにならない治療の方法を一緒に考えていきましょう。また、2年に1度くらいの間隔で、目の定期健診をお勧めします。眼鏡をかけている方ならレンズの度数調整を眼鏡店で済ませるのではなく、眼科で処方してもらいましょう。その時、目の検診を受けて緑内障や白内障もチェックできるといいですね。