体の声に耳を傾け「人」を診る
西洋医学と漢方のハイブリッド治療
小林内科医院
(川崎市麻生区/新百合ヶ丘駅)
最終更新日:2026/04/07
- 保険診療
いくら検査をしても異常は見つからないが、倦怠感やめまい、冷え性などの症状に悩まされる人は多いものだ。病気を特定して治療する西洋医学に対し、体全体のバランスを整えることをめざす漢方治療は、西洋医学ではなかなか改善しない症状や、原因が特定できない体調不良にも有用とされている。大学病院で消化器内科医としてがん患者に向き合ってきた「小林内科医院」の小林功治院長は、西洋医学と漢方治療の両方の良さを熟知するドクター。漢方専門の問診や丁寧な診察をもとに、患者の体の声に耳を傾け、「人」を診る診療スタイルが特徴だ。オーダーメイドの漢方治療に注力する小林先生に、漢方薬を用いた診療の特徴や、市販の漢方薬と医師に処方された漢方薬との違い、西洋医学と漢方薬のハイブリッド治療の利点などについて解説してもらった。
(取材日2026年3月23日)
目次
西洋医学だけでは対処できない不定愁訴や体質改善には、一人ひとりに適したオーダーメイドの漢方治療を
- Q漢方治療の特徴を教えてください。
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A
▲漢方と西洋医学を融合した「ハイブリッドな漢方診療」が特徴
漢方の起源は中国ですが、日本に伝わってから約1400年の年月をかけて、日本独自の医学として発展しました。日本の医療の中心である西洋医学ではまず病名を診断し、その病気に対して治療を行います。ただ、同じ風邪という病名でも寒気が強い、高熱が出る、汗が出ないなど、体の状態は人によって異なります。漢方は一人ひとりの体の状態や体質に合わせて薬を選ぶ、オーダーメイドに近い医療が特徴です。「特別な薬」というイメージが強い漢方ですが、実際はショウガやサンショウ、ミカンの皮、シナモンなど身近な食材が生薬として使われています。生薬を単体で使うのではなく、複数の組み合わせによってさまざまな作用が生まれる点も特徴です。
- Q漢方薬は、どのような症状や疾患に有用ですか?
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A
▲気・血・水の3つの要素がバランス良く巡ることが重要と話す院長
漢方薬は、西洋医学の検査では異常がないけれど、つらい症状があるという場合に用いられることが多いです。例えば、冷え性や倦怠感、めまい、胃腸の不調、心身症など、幅広い症状に対して処方されています。漢方治療は体の状態を気・血・水という3つの要素で考えます。気は生命のエネルギー、血は体を巡る栄養、水は体液のバランスです。この3つがバランス良く巡ることが健康にとって重要で、水のバランスが崩れるとめまいや頭痛、むくみ、耳鳴りなどの症状が起こることがあります。漢方治療では不調を体全体で捉え、複数の病気や症状に働きかけ、症状改善を図ります。西洋医学では届かない部分を優しく支え、補ってくれるのが漢方の強みです。
- Q市販の漢方薬と医師が処方する漢方薬との違いを教えてください。
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A
▲落ち着いた待合。漢方専用の問診票で体質を詳しく確認
当院では、漢方専用の問診票を用いて、通常の問診よりも多くの情報を確認します。一例ですが、暑がりか寒がりか、お風呂でのぼせるか、口が渇くかなどを確認し、「陰証」か「陽証」か、体質を判断します。同じ冷え性でも、のぼせがある人に体を温める漢方を処方すると、ますますのぼせてしまいます。一方、風邪で熱が出る前に飲む葛根湯など、症状がある程度はっきりしている場合には、市販の漢方薬も役立ちます。ただ、比較的副作用が少ないといわれている漢方薬ですが、決してゼロではないため注意は必要です。陰証か陽証かの自己判断は難しく、長期間服用する漢方については、やはり漢方に精通した医師の診断による処方が望ましいでしょう。
- Qこちらのクリニックの漢方治療の特徴は何ですか?
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A
▲対話を重ねながら症状の背景まで丁寧に探る
一番の特徴は、西洋医学の専門性に基づいた「ハイブリッドな漢方診療」である点です。私の診療の核である「傾聴」を大切に、西洋医学と漢方治療のいい面を両方組み合わせ、患者さん一人ひとりに適した治療を提案しています。私は大学病院で約20年間、消化器内科医としてがん治療に携わってきました。抗がん剤やがんに伴う倦怠感、しびれ、食欲低下など、西洋医学だけでは改善が難しい症例に多く向き合う中で、漢方が症状改善のために用いられる場面を多く経験してきました。必要な検査や西洋医学的な治療をしっかりした上で、漢方の方が適しているケースについては、漢方を組み合わせて「かゆい所に手が届く」診療を心がけています。
- Q漢方は「苦い」「飲みにくい」という点がデメリットでしょうか。
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A
▲患者の体質や体の状態に合わせた漢方を提案
確かに独特の風味があり、飲みにくい処方もありますが、中には飲みやすい漢方も数多くあります。例えば、甘草という生薬には甘みがありますし、腹痛や虚弱体質の改善などに用いられる小建中湯という漢方は、桂枝加芍薬湯に飴を加えた処方で、甘く飲みやすい漢方となっています。興味深いことに、患者さんの体質や体の状態に合っていれば、苦くても意外と飲めることがあり、体が必要としている薬は自然と受け入れられるのかもしれません。逆に飲めないのは体に合っていない証拠ですから、体質や体調を加味して別の薬を処方します。水やお湯に溶かしてショウガ汁や蜂蜜などを混ぜると、苦みを感じずに飲めることもあります。

