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糸山 暁 院長の独自取材記事

糸山歯科医院

(名古屋市千種区/本山駅)

最終更新日:2024/03/07

糸山暁院長 糸山歯科医院 main

住宅街の一角にある「糸山歯科医院」。院長の糸山暁先生が2002年に父親から引き継いだ。高齢の患者が多いエリアだが、周辺には大学があり、インターネットから同院を見つけた学生も訪れるという。障がい者の診療もしており、市外から通う患者も多い。寝たきりの高齢者には、訪問診療で治療や口腔ケアを行うなど、歯科診療を通じて地域に大きく貢献している。患者との信頼関係を特に大切にし、診察を嫌がる子どもには、心を許すまで時間をかけて接する。「歯医者嫌いの人を1人でも少なくしたいですね」と糸山院長。その言葉には、優しさと温かさがあふれている。

(取材日2016年10月19日)

医学だけでなく、人との関わりを学ぶことが大切

歯科医師を志したきっかけを教えてください。

糸山暁院長 糸山歯科医院1

実は、はじめから歯科医師をめざしていたわけではありません。高校時代は人文学のことに興味を持っていて、文系の大学に進むつもりでいました。ただ、あるとき父から、「やりたいと思っている人文学の勉強は、歯科医師の勉強と根本的なところは同じことだよ」と言われました。歯科医師も患者さんと接するときには、人間関係とか信頼関係がとても重要です。そうした人と人との関わりを学ぶという点で、歯科医師の勉強も人文学の勉強も、最終的には同じだということを父は教えてくれました。そこで、たまたま二次募集をしていた松本歯科大学を紹介してもらい、受験することに決めたのです。それが、歯科医師を志したきっかけでしょうか。

どのような患者さんが多いですか。

父がこの場所に当院を開いたのは私が小学生の頃で、2002年に継ぎました。父の代から来てくださる患者さんも多くて、中には親子4代という方もいます。先日もお孫さんが生まれた患者さんから、「うちの子もよろしくお願いします」と声をかけられました。とってもうれしかったのですが、それと同時に気が引き締まりましたね。そのほかでは、近くの大学の学生さんや、小学校や中学校の同級生も来ます。あと、当院では、障がいがある患者さんも診ています。もともと父が診療をしていたので、そのまま引き継いで診るようになりました。そのため、段差をなくしたり、診療室の空間を広くしたりして、車いすでも移動しやすくしてあります。

お父さまからいろいろと影響を受けたようですね。

糸山暁院長 糸山歯科医院2

父は当院だけでなく、春日井市の福祉施設でも歯科を開設していました。子どもだった私は、こちらで仕事をする父の様子を見たり、福祉施設へ行く父について行ったりしました。その施設には重度の障がいがあるお子さんもいましたが、私はその子たちと普通に遊んでいましたし、それが当たり前だと思っていました。そうした経験があったので、父の歯科医院を継いでからも、障がいがある患者さんの治療を引き受けています。他のクリニックから紹介されて、障がいがある患者さんがいらっしゃることもありますが、患者さんを紹介してくれた先生にあとから聞くと、「治療はできるんだけど、患者さんとどう接していいのかわからなくて困った」とおっしゃっていました。私は幼い頃から父が診療する様子を見ていたので、そうした患者さんとの接し方が自然に身についていたのかもしれません。

信頼関係をつくるため、時間をかけて接する

先生の考え方や方針についてお聞かせください。

糸山暁院長 糸山歯科医院3

食事に行っておいしい料理をいただいても、店員さんの態度が気に入らないとまた行きたいとは思いませんよね。それと同じで、わざわざ来ていただいた患者さんに不快な思いをさせないよう、いろいろと気をつけています。そのために最も大切なのが、患者さんと「信頼関係を築くこと」だと思っています。特に小さいお子さんは、もともと歯医者さんが嫌いです。なので治療を始める時、自分から進んで口を開く子はほとんどいません。そんなとき、無理に口を開かせようとするのではなく、その子の気持ちになって接してあげるようにしています。そうすると、その子との信頼関係ができて、頑張って口を開いてくれると思うのです。怖さを必死にこらえて、私の目をじっと見つめながらも口を開いてくれたら、僕のことを信頼してくれたんだな、とわかるので、とてもうれしくなります。

印象深い患者さんとのエピソードをお聞かせください。

以前、内科の先生から「口の中がとにかくボロボロで、ひどい状態なので診てください」と頼まれたことがありました。その患者さんは高齢の方だったのですが、とにかく歯医者が嫌いでした。そこで、すぐに治療するのではなくいろいろと話を聞いたところ、小さい頃に歯医者で先生やスタッフに押さえつけられて、治療させられた経験があることを話してくれました。それ以来、診察台で浴びたライトがトラウマになってしまい、虫歯になっても歯医者に行かなかったそうです。もしも小さい頃にそんな体験をしなかったら、その患者さんの口内もそこまでひどい状態にならなかったはずです。小さな頃の歯医者のイメージがとても大切だと、そのとき改めて感じました。

患者さんがお子さんの場合、泣いたりしませんか。

糸山暁院長 糸山歯科医院4

お子さんの場合、泣き出したり暴れたりする時があります。そんなときは、その子が診療を受ける気になるまで、辛抱強く待ちます。痛がっている場合は応急処置を優先しますが、最初のうちは診察をしないで、待合室で遊んでいてもらうだけでも良いと思っています。例えば、元気のいいお子さんの場合には5~6回、障がいがあるお子さんの場合には10回以上遊びに来てから治療に移っても良いと思っています。診療室に入りたくないという時には、待合室で診察もできますよ。そんなときは、ちょっとでも口を開けてくれたら「今日はここまででいいよ、頑張ったね」って、ハイタッチしながらいっぱい褒めてあげるようにしています。お母さんは大変かもしれませんが、まずは歯医者嫌いを直すところから始めましょうとお話しして、理解していただくようにしています。

地域で連携し、すべての患者を見守りたい

訪問診療もされているそうですね。

糸山暁院長 糸山歯科医院5

施設に入所されている方や、通院が困難で、ご自宅で介護が必要になった患者さんのところには訪問診療もしています。市内なら1時間あれば移動できるので、午前の診療と午後の診療の間の昼休みを使っています。時間があわなければ、クリニックの診療後に伺うこともできますよ。訪問診療をしている患者さんはさまざまで、それまで通っていた患者さんが介護が必要な状態になってしまい、訪問して治療をすることになるケースもあれば、定期的に訪問治療を希望する患者さんもいます。あらかじめ道具を用意して、訪問先で削ったり詰めたりできるようにしていますが、ブラッシングや入れ歯の手入れについての指導もします。お困りの際は気軽に相談してください。

診療を通じて、地域の方とどのように関わっていきたいとお考えですか。

日本歯科医師会が提唱している活動に、「8020運動」があります。80歳になっても20本以上自分の歯を保とうという運動で、私も患者さんに呼びかけています。高齢になっても自分の歯でしっかり噛んで食べるのが大切で、しっかり噛むことで脳神経を刺激することがわかっています。それに、食事をおいしく食べることで精神的にも安定してきます。こうした話を講演会などですると、「入れ歯の話で盛り上がっても、私は入れ歯でないからわからない」という高齢者の方がいます。「素晴らしいですね、それが健康なんですよ」とお答えしているんですが、歯がしっかりある人は、本当に元気ですね。そういう元気な方を1人でも増やせるよう、歯の診療を通じて地域と関わっていきたいと考えています。

最後ですが、今後の展望について教えてください。

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現在、幼稚園や障がい者施設で歯科を担当しています。そういうところにはお母さん方もたくさんいらっしゃるので、講演会などを通じて、自分の歯で食べることの大切さや、しっかり噛んで食べることが健康の秘訣であることを、もっと話していけたらいいなと思っています。そうした活動を通じて、歯医者嫌いの人が少しでも減れば、地域の医療に貢献できるかなと考えています。それと、これからは、地域の医療がもっと大切になってくると思っています。地域にはたくさんのクリニックや病院がありますが、医科や歯科の垣根にとらわれず、普通の患者さんも障がいがある患者さんも、みんなで連携して見守らなければなりません。そのお手伝いができたらうれしいですね。

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