井内 正人 院長の独自取材記事
いのうち内科クリニック
(横浜市緑区/十日市場駅)
最終更新日:2026/02/03
十日市場駅近くにある「いのうち内科クリニック」井内正人院長。もともとこの地で長く診療していたクリニックを引き継ぐ形で2002年に開業し、以来、地域に根差して診療を行ってきた内科医だ。専門である腎臓疾患や糖尿病の診療はもとより、地域住民の多様な症状や悩みに寄り添い、かかりつけ医として貢献。患者の体質を見極めた漢方処方や、通院が困難になった患者への在宅診療など地域に求められる医療を実践してきた。「患者さんやスタッフ、人の縁に恵まれてきました」と話す井内院長に、同院の歩みや地域医療への思いを語ってもらった。
(取材日2025年12月19日)
地域のかかりつけ医として腎臓疾患をはじめ幅広く診療
歴史を感じる雰囲気の院内ですね。

もともと30年近く診療されていた医院を私が2002年に引き継ぎましたから歴史はありますね。花やインテリア、季節の飾りつけなどは私がやっていて患者さんにも好評なんですよ。開院当初は、勤務医時代に診ていた糖尿病や腎臓疾患の患者さんが多かったですが、最近は近隣の方が中心です。今も遠方からバスを乗り継いできてくれる方もいらっしゃいますが。症状としては、高血圧、糖尿病といった慢性疾患の方が多く、私の専門性から、近隣の病院から腎機能の悪い方を紹介されることもあります。この辺りは農家の方も多く、家で採れた野菜を持ってきてくださったことなど、いい思い出ですね。
先生は、どうして医師を志されたのでしょうか。
高校時代に、医学を勉強すれば人間の本質がわかるのではないかと考えたことがきっかけになっていますね。私の時代は学生運動が盛んな時代で、高校生でも政治や社会について真剣に討論して、本なんかもむさぼるように読んでいたんですよ。でも、肝心の学校の勉強はちっともしていなかったから苦労しましたが(笑)、浪人の末に新設校の聖マリアンナ医科大に入学しました。自分の思い描いていた大学像と違っていて、医学への志が砕けそうになったこともありましたが、新設校だからとばかにされたくないという気持ちから勉強に本腰を入れるようになり、将来は臨床ではなく基礎研究に進みたいと思っていたほどでした。しかし、聖路加国際病院での研修で、一気に臨床に興味を持つようになったんですよ。目の前の患者さんと頭の中の知識がようやく結びついたんですね。
では、内科を専門とされたのはどうしてですか。

内科を選んだ理由は、内科は診断学だからということですかね。患者さんの話や身体所見、検査データなどから診断をつけていくのですが、難しいパズルを少しずつ解いていくような面白さがある。パズルが完成すれば、どんな治療を行えば良いかがわかり、症状が良くなれば患者さんに喜ばれるわけです。どの科でも診断学は大切ですが、内科ほど複雑な診断力を要される科はないと思いますよ。難しいからこそやりがいが大きいと感じて内科に進み、腎臓疾患や糖尿病など代謝内分泌疾患を専門として、大学病院や上白根病院で診療に携わってきました。
その後、こちらで開業されたきっかけを教えてください。
救急医療や、内視鏡検査などにも取り組み、やりがいを感じていたので開業するつもりはなかったんですよ。しかし、仲間の先生が開業されて、自分はどうするかと考えていた時に、ここで長く開業されてきた先生が引退されるので、継承する医師を探していると声をかけられたのです。前職の病院にも近く連携も取りやすいですし、「これだ」と縁を感じて思いきって開業しました。幸いスタッフにも恵まれましたし、患者さんも多く来てくださって、開業して良かったと思います。
個々の患者に寄り添い、漢方処方や在宅医療にも対応
漢方薬も取り入れられていると聞きました。

勤務医時代に、漢方薬を知る機会があり、勉強したのがきっかけです。漢方薬は西洋医学の医薬品とそもそもの考え方が違っているんです。西洋医学では熱が出たら、対症的に解熱剤を処方しますが、漢方薬は人によって処方する薬がまったく違う。対症的ではなく、患者さんの体の中にある治癒力を引き出すことを目的にしているのが漢方薬なんです。だから、処方の際には、患者さんの全身を診て、どんな体質かを見極めなくてはいけない。そこが難しいけれど、面白いところでもあるんです。患者さんが診療室に入ってくる様子から、声の張り、話す内容、家族関係まで、いろいろな要素を加味しながら処方を決定しています。今も希望される方は多いですね。
在宅医療にも取り組まれてきたそうですね。
そうです。高齢になられたり、がんが進行したりして通院が難しくなった方を対象に在宅で診療し、ずっと診てきた方を看取る経験もしました。本来はかかりつけとして、できるだけ通院していただいて、通院が無理になったら在宅で診て差し上げたいと思いますが、一人で通院するのは危ないとか、付き添いできる家族がいないというような理由で、いわゆる訪問診療に切り替えられるケースが多いですね。最近は在宅専門のクリニックも増えているのでそちらに任せています。
診療の際、どのようなことを大切にされていますか。

大切にしているのは、患者さんのライフスタイルに合わせた治療や生活指導を行うことです。コレステロールや血圧の数値が悪いからとすぐに薬は出すのではなく、生活の様子などをよく聞いて、じっくり取り組むことを心がけています。そして、患者さんが、自分はどんな病気でどのような治療が必要なのか、飲んでいる薬はなんという名前なのかを理解していただけるようにしたいと考えています。ただ、理解してもらえるようにわかりやすく説明するのは、なかなか難しいものなんです。患者さんが、他の診療科の先生の話がよくわからなかったからと、私に聞きに来られることもあります。その場合は、私を頼りにしてくださっているのだからと、できる限りわかりやすく説明します。
多様な症状を診断し、窓口的な役割を果たす内科として
専門的な立場から、気になることなどがありますか。

生活習慣病などの診療に多く携わってきましたが、患者さんのためにかなり厳しく生活指導をしてきました。甘い指導をして悪い結果になったときに、苦しい思いをするのは患者さんですからね。治すのは、あくまで患者さん自身です。私は病気に立ち向かう手助けをしているだけに過ぎないけれど、医学の知識を持つ人間として患者さんに頼りにされている以上、患者さんが望む結果を出せるように惜しみなく力を貸したいと思ってきました。患者さんにお伝えしたいのは、生活習慣病に限らず、自分がどんな病気で、どんな治療が必要なのか、日常生活では何に気をつけなければいけないのかを知っておいてほしい。飲んでいる薬についてもよく知っておいてほしいということです。そして、そうしたことをわかりやすく、理解できるように説明してくれる、信頼できる医師をかかりつけにしていただきたいということですね。
最後に、地域の皆さんへメッセージをお願いします。

私を頼ってくださった患者さんやご家族には感謝の言葉しかありません。今、思うと、とにかく、患者さんやスタッフなど人の縁に恵まれてきました。特に良かったな思うのは、在宅医療で訪問看護師さんとも連携しながら、ずっと診てきた患者さんに携われたことです。しかし、コロナ禍もあって医療環境が変わり、今までとは異なる事務的な仕事も増えてきました。行政への申請などもネットを利用して自分で手続きする必要があり、私のような開業医にとってはやりにくい世の中になったというところです。年齢も年齢ですから、そろそろクリニックを継承しようと思っています。当院にかかってくださっていた患者さんへの責任がありますから、以前から、信頼できる後輩の先生に、「あとは頼むよ」と言ってきて、準備も始めてもらっています。私自身は、いち内科医として少しでも役に立ちたいと思っています。

