口腔機能低下症の評価や治療
健康寿命延伸に繋がる口腔機能管理
カジウラ歯科
(岩倉市/岩倉駅)
最終更新日:2022/03/18
- 保険診療
日常生活において人の助けを必要とする要介護者が、年々増加傾向にある。そのような中で広まりつつあるのが、要介護の一歩手前の段階を示す“フレイル(虚弱)”という言葉だ。口に対しては“オーラルフレイル”という表現が用いられ、オーラルフレイルが進むと「口腔機能低下症」という“疾患”と診断されるという。「口腔機能低下症が全身のフレイルの発症のきっかけになったり増悪させたりする。口腔機能、つまり食べる力を最期まで守ることがフレイルを遅らせるのに極めて重要である」と語るのは、「カジウラ歯科」の梶浦哲也院長。「生涯を健康的に過ごしてもらいたい」と、口腔機能へのアプローチを通じて健康寿命を延ばすことに尽力する梶浦院長に、「口腔機能低下症」について詳しく話を聞いた。
(取材日2021年8月10日)
目次
噛みにくい、むせる、滑舌が悪くなった、口が渇く、食べこぼす……このような症状に気づいたら要注意
- Q口腔機能低下症とはどのような状態を指すのですか?
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A
口腔機能低下症は、お口の元気が低下した状態と言えます。具体的には食べたり飲み込んだりする行為、会話、唾液の分泌など、口周りのさまざまな機能に支障が見られる状態を指します。主な原因は加齢ですが、全身のさまざまな病気、薬の副作用などで機能が低下する場合もあります。また、虫歯や歯周病の悪化や入れ歯の不具合も関与します。60代では6割、70代では8割の方が口腔機能低下症だったという研究結果がありますが、比較的若い世代で見られるケースもあります。口腔機能低下症は低栄養から筋肉の減少するサルコペニアを招き、運動量の低下から食事の摂取量がさらに減り筋力も低下するというような悪循環が生じやすいとされています。
- Qどんな症状があると口腔機能低下症が疑われますか?
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A
口が乾きやすい、滑舌が悪くなった、食べこぼす、薬が飲み込みづらい、むせる、硬いものが食べにくくなった、食べ物が口に残るようになったなど、食事や会話の中で不具合を感じたら、口腔機能が低下している可能性が考えられます。「食べる」と言っても、前歯で噛み切り、舌で食べ物を奥歯の上に乗せて噛み砕き、唾液と混ざって食塊ができます。食塊を飲み込む際は、舌を上顎に押しつけるようにして奥へ送り込んでいきます。気道に入り込まないように喉頭がぐっと引き上がって……と非常に複雑に機能し合っています。そのため一部に機能の衰えが見られるとトラブルが現れるわけです。ご家族からの指摘で自覚したというケースも多いですよ。
- Q口腔機能低下症を放置することでどんな問題が懸念されますか?
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A
お口の機能が衰えてくると、食べる量が減ったり、食べやすさを重視して食べ物を選ぶなど食生活に偏りが出やすくなり、低栄養状態になることが懸念されます。具体的にはたんぱく質を多く含む肉類やビタミンを多く含む野菜などを食べなくなり、それによって筋力、体力が低下し、歩くことや階段を上るといった日常的な動作に支障を来してしまいます。また、食べることや人と話すことも楽しくなくなり、外出や人との交流も少なくなってしまいます。このように、お口の機能が低下することは、全身が弱ってくることに直結し、日常生活に支障を来してしまうことがあります。口の些細な衰えに気づいたら、早く対処することが大切です。
- Q口腔機能低下症の診断方法、対処法についてを教えてください。
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A
7つの評価項目を判定します。具体的には、舌表面の汚れ具合、唾液の分泌量、噛む力、舌・唇の動き、舌圧(舌の筋力)、食物を噛み砕く能力、飲み込む機能を、さまざまな計器を使って詳しく検査します。その結果が3項目以上に該当すると口腔機能低下症と診断されます。そして、該当項目に応じてアプローチの内容を組み立てていきます。口腔機能低下症と診断された方は、日頃から口の機能を使うことを意識してもらうことが大切です。例えば、うがいをしっかりする。家族や友人とおしゃべりする機会を増やす。歯応えのある食事をする。1口に20~30回噛む、大きな声でハッキリと話す、皆で楽しくカラオケすることもいいでしょう。
- Q診断後はどのようなアプローチをするのでしょうか?
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A
評価項目に即して、トレーニングやストレッチおよびマッサージなどを実践していただきます。そういった指導をもとにご自身で日頃から実践してもらいます。トレーニングは、舌の動きを滑らかにするものや、「パ」「タ」「カ」を発音してもらうなど、実際に口を動かしながら改善を図っていきます。舌圧をアップするための専用器具なども開発されていて、当院でも必要に応じて患者さんにお勧めしています。唾液量が少ない場合には、耳下腺など唾液の分泌腺をマッサージで刺激したり、専用の保湿剤を含んだりして、口腔内の潤いを維持していきます。ムセがあるなど飲み込みに問題がある時は、飲み込みの力の訓練や呼吸訓練をしていきます。