堀田 寛人 院長の独自取材記事
堀田デンタルクリニック
(稲沢市/丸渕駅)
最終更新日:2026/10/30
のどかな田園風景が広がる稲沢市平和町に、大きなけやきの木が訪れる人を出迎える「堀田デンタルクリニック」がある。診察台はすべて大きな窓に面し、植木の産地として知られる稲沢市らしい緑を望むことができる。1991年に開業して以来、35年にわたりこの地で診療を続けてきた歯科医院を、今年6月に堀田寛人院長が父から継承した。朝日大学卒業後、一般歯科で研鑽を積みながら、継承に向けて名古屋市の歯科医院で訪問診療の経験も重ねた。生まれ育ったこの地域の高齢化が進む中、手押し車を軽トラックに載せて来院する患者の姿を目にし、「こちらから行かなければ」と訪問診療に踏み出した。「食べる楽しみを支えていきたいですね」と語る堀田院長に、継承の経緯や訪問診療への思いを聞いた。
(取材日2026年8月27日)
父が築いた35年を受け継ぎ、親子で守る歯科医院
クリニックについて教えてください。

当院は1991年に父が開業し、以来35年間場所で診療を続けてきました。私は3年ほど前から当院で診療を始め、今年6月に当院を院長として継承しました。同じ小学校に通っていた方やその親御さん、柔道の先生など、昔からのつながりで来てくださる患者さんも多く、新しい方も途切れることなく来院されています。継承を機に院内をリニューアルしましたが、雰囲気が大きく変わると、昔からの患者さんが来にくくなるのではと思い、木の腰壁はそのまま残しつつ、壁紙や天井、床を調和するように一新しました。廊下も少し広げてゆとりを持たせています。チェアは4台すべてが大きな窓に面していて、植木の産地として知られる稲沢市らしい緑が自然と目に入る空間になっています。
歯科医師の道に進まれた経緯をお聞かせください。
小学1年生から柔道に打ち込み、高校時代には将来、スポーツ関係の仕事に就くことも視野に入れていました。ただ、大きなケガをしたことでスポーツの道は難しくなりました。将来を考えた時、目の前には父が築いた当院があり、それなら自分が継いでみようと思ったのがきっかけです。朝日大学の歯学部を卒業後、まず弥富市の佐藤歯科医院で約5年間、一般的な外来診療を幅広く経験しました。その後、継承を意識する中で地域の現状を見たとき、訪問診療も学ばなければと感じ、大学の先輩が営む名古屋市港区のおはよう歯科で週1回、3年間にわたって訪問診療の現場を経験させてもらいました。おはよう歯科では、ラバーダムやマイクロスコープを使った精密な治療にも触れることができ、それが当院にCTやマイクロスコープを導入するきっかけにもなっています。
現在はどのような体制で診療にあたっていらっしゃいますか?

院長は交代しましたが、父は現在もフルタイムで一緒に診療にあたっています。マイクロスコープや拡大鏡を使うような細かい処置は私が担当し、入れ歯の治療は35年以上の経験がある父が多く対応するなど、治療内容によって役割を分けています。入れ歯に関しては、自分が持っていない引き出しを父はまだまだたくさん持っているなと感じます。時間のあるときにはそばで診療を見学させてもらったり、入れ歯の設計について相談したりしながら、日々学ばせてもらっています。家での親子関係とあまり変わらない距離感で仕事ができているのはありがたいことですね。お互いの得意分野を生かしながら、患者さんにとってより良い治療を提供していきたいと考えています。
「こちらから行かなければ」と始めた訪問診療
訪問診療を始められたきっかけを教えてください。

私はこの地域で生まれ育ちましたが、高齢化は確実に進んでいて、老々介護の状態で暮らしている方も少なくありません。当院は車がないと通いにくい場所ですが、免許を返納される方も増えています。おじいさんが軽トラックに奥さんを乗せて連れてきたり、患者さんが手押し車を軽トラックから自分で降ろして、ゆっくり歩いて来られたりする姿を見ていると、こちらから行かなければいけないなと感じたんです。訪問診療では、口腔ケアや歯周病の治療を続けることで、汚れや出血の減少や、歯茎の状態の改善をめざしています。その取り組みを介護者の方と一緒に続けていけることが、大きなやりがいになっています。やはり人生の最後まで楽しめるのは「食べること」だと思います。そこをお手伝いできたらという思いで取り組んでいます。
訪問診療について、外来診療と異なる点と大切にしている点を教えてください。
外来診療では、元の状態に戻すための治療を行うことが多いのですが、訪問診療では元の状態に戻すための治療よりも、今の状態をこれ以上悪くしないよう維持していくための治療が中心になります。基礎疾患をお持ちの方も多いですし、治療すること自体がご負担になる場合もあるので、どこまで行うかを患者さんやご家族と相談しながら進めています。例えば、認知症の方の場合などは、信頼関係を築かないとなかなか治療を受けていただけないこともあるので、まず仲良くなることを大切にしています。入院などをきっかけに歯科への通院が途絶え、口腔環境が悪化してしまう方は少なくありません。そうした方にも訪問診療で定期的に関わり、歯周病の治療や口腔ケアを続けることで、口腔環境の改善をめざせるのが訪問診療の大きな意義だと考えています。取り組みを重ねるたびに、訪問診療をやってよかったと感じますね。
外来診療では、どのようなことを大切にされていますか。

やはり虫歯や歯周病にならないことが一番大切だと考えていますので、予防を重視しています。早期発見だけでなく、病気になる前の段階から進行を防ぐことが大切です。口腔内のクリーニングでは、メンテナンス用のチェアすべてにエアポリッシングの機器を導入しており、風と水、微粒子のパウダーで歯の表面を傷つけにくい方法で汚れを落とすことができます。歯と歯の間など、ブラシでは届きにくい部分まで清掃できるため、効率の向上や処置時間の短縮にもつながっています。検診の間隔も、お口の状態に合わせて一人ひとり調整しており、毎月から半年に1回まで、適切な時期をご案内しています。
人生の最期まで、食べる喜びを支えたい
日々の診療で心がけていることを教えてください。

患者さんにはそれぞれ今までの人生がありますから、その方に合った治療を心がけています。歯科医院が怖いという方もいれば、全然平気という方もいますし、どんなに歯がグラグラしていても絶対に抜きたくないという方もいれば、悪い歯はまとめて抜いてほしいという方もいます。初めて来院された方には、急な痛みがない限り、まず資料をそろえて説明し、納得していただいてから治療を始めるようにしています。歯は抜いてしまったら元には戻りませんので、後悔を残さないためにも、しっかり理解して決心してもらうことが大切です。あと、私は柔道を続けてきたこともあって体が大きく、患者さんに圧迫感を与えてしまいがちなので、できるだけ優しく接することは常に意識しています。
今後、クリニックとしてどんなことに取り組んでいきたいと考えていますか。
訪問診療を必要とする方は、この先確実に増えていきます。訪問の枠を少しずつ広げながら、患者さんの人生の最期まで対応できる体制をつくっていくことが、今の一番大きな目標です。もちろん外来の治療も好きですから、父が現役のうちは予防を中心にしっかり続けて、定期的な検診やケアの大切さを伝えていきたいと思っています。忙しい毎日ではありますが、休みの日には木曽三川沿いを自転車で走ったり、子どもの頃から通っていた柔道の道場で中高生と一緒に練習をしたりもしています。体を動かすことで気持ちを切り替えて、また翌日からの診療に向かう。この地域の方々のお口の健康を、外来診療で診ている方も訪問診療で診ている方も含めて長く支え続けていければと思います。
読者へのメッセージをお願いいたします。

お口の中のことで気になることがあっても、「この程度で歯医者に行っていいのかな」とためらうこともあるかもしれません。ですが、そんなことはまったくありません。ちょっとした違和感のうちに見せていただければ、大がかりな治療をせずに済むことも多くあります。症状が大きくなる前に来ていただくことが一番大事だと、日々の診療を通じて実感しています。また、痛みがなくても定期的に検診を受け、ご自分のお口の状態を知っておくことも大切です。虫歯や歯周病になってから治療するよりも、なる前の段階で予防することをめざすほうが、良い結果につながります。お口のことでしたら、些細なことでも気軽にご相談ください。

