鈴木 晶博 院長の独自取材記事
すずき歯科
(津市/津駅)
最終更新日:2024/08/07
津駅から徒歩5分ほど。三重県庁からもほど近く、行政機関も多いビル街の一角に「すずき歯科」はある。鈴木晶博院長が、地域との共生をコンセプトに同院を開業したのは1991年のこと。近隣の行政職員や会社勤めの人たちが多く通う。また、定年退職後も遠方から通い続ける患者が多いという。予防歯科に注力し、患者の半数がメンテナンスで通っている点も同院の特色。その分歯科衛生士の出番も多くなるが、鈴木院長は「人対人の診療」を第一に掲げ、スタッフが一つにまとまり患者と接している。地域医療への思いや後進の育成など、鈴木院長はユーモアも交えながらざっくばらんに語ってくれた。
(取材日2019年1月31日)
地域に溶け込み、共存するクリニック
最初に、この場所に開業された経緯を教えていただけますか?
この辺りは僕の地元なんです。僕は大学を卒業した後、大学院に進んで口腔外科を学びましたが、当時は大学院進学は少数派の時代。卒業後2~3年勤務医をして、開業するのが当たり前だったんです。ですから僕が実験や論文に時間を費やしている間に、次々と同級生は自分のクリニックを開業していきました。臨床医をめざす者として焦りを感じつつ、この道を選んだ以上、外来手術は同年代に負けないよう必死になりましたね。大学院を修了後は鈴鹿の病院に勤務したのですが、2年ほど勤めた頃に歯科が閉まることになったんです。開業のタイミングとしてもちょうどよく、地元でもあるこの地域と共存できるクリニックになれたら、と1991年に当院を立ち上げました。
地域の特色や、患者層について教えてください。
このエリアは津城の城下町で、僕の子どもの頃の印象とあまり変化は感じません。当院の近くには三重県庁はじめJA三重ビルや三重県警察本部、三重県漁業協同組合連合会などがあり、そちらにお勤めの20代から定年されるまでの働き盛りの世代がメインの患者層になります。ただ当院も開業から四半世紀以上たっていますから、患者さんの年齢層も上がっていますね。開業当初は20代30代の患者さんがメインでしたが、その方たちも年齢を重ねて今では定年間近に。長年通ってくださっていた方が、仕事を引退された後も通い続けてくださり、伊勢市や松阪市といった離れた場所からもいらっしゃいます。
クリニックを作る際にこだわった点はありますか?
地域に溶け込み、共存していくことが当院のコンセプト。当院に訪れる患者さんだけではなくて、地域にとってのシンボルになれたらという思いがあり、デザイナーさんには「この地域に来た人に道案内をする時に、目印になるような建物にしてほしい」とお願いし、デザイナーさんからの提案もあって、当院の周囲に街灯を設置しています。地域の人には明るい道を歩いてほしいですからね。内装に関しては、自分の体が大きいものですから、とにかく天井を高くして圧迫感を感じない設計をお願いしました。診察室は患者さんとスタッフの導線を分けるために配置にもこだわりました。一度改装もしていて、待合室を広くして、白と黒のモノトーンの配色から茶色と黄色の温かい雰囲気になりました。
地域医療や後進育成のためにプラスになることを考える
機器や設備のこだわりはいかがでしょうか?
新しいもの好きというわけではないのですが、設備投資に躊躇するタイプではないですね。機器のデジタル化はもちろん、衛生面では多種の滅菌器を導入し徹底しています。機器に関しては、やはり実際に使ってみなければわかりません。もちろん良いことばかりではないので、たくさん損もしています(笑)。けれどもそれを「損をした」と思って終わらせるのではなくて、社会に生まれてくる多くの設備機器の意義や特性を再考する機会を得たことは必ずプラスになると考えています。主役は患者さんであり、地域と共存していく中では経営の損得以外の部分を考える必要が大いにあると思いますね。
設備投資をすることで、さまざまな面でプラスになるのですね。
歯科医師として、地域医療に貢献することはもちろん、次の世代につなげるということも大きな使命だと思うのです。僕は今58歳ですが、新しい設備投資をしなくても今まで治療をしてきた実績があるわけですから、あえて新しいものを入れなくても治療はできるわけです。けれども医療は日々目まぐるしく進歩して、効率化もされています。「自分の時はこうだった」ではなくて、自分が新しい技術や治療にふれて、地域の患者さんに教えていただいたことを、次の世代の歯科医師や歯科衛生士に伝えていくことは義務だと思っています。そういった意味でも、新しい技術に投資することには価値があるんです。
どんな時に歯科医師としてのやりがいを感じますか?
僕はスタンダードな治療を行う普通の歯科医師です。それにもかかわらず、数ある歯科医院の中から当院を選んで来てくださることは歯科医師冥利に尽きるとしか言いようがありません。当院の歯科治療を求めて来てくださったからには、真摯に向き合って精いっぱい応えることが、歯科医師免許を持つ人間としての義務だと思っています。もちろん長年の診療の中ではうまくいかなかったこともあります。けれども大切なのは、その経験を次に生かすことです。それを続けていくことが大切なんだと、いつもスタッフに言っています。これは歯科だけではなくて、人生にも通じること。日々の仕事、歯科医療を通じて、いろんなことがスタッフに伝わってくれたらうれしいですね。
患者と人として通じ合うことが診療の大前提
診療で心がけていることを教えてください。
人が人を診る、ということですね。僕もスタッフも、そして患者さんも意思を持った人間です。自分が持っている能力の中で問題解決できる選択肢を、より誤解のないように伝えるためには、人と人として通じることが大切です。もちろん初対面の相手に対して、いきなり深いコミュニケーションを取るのは無理な話。それでもできる限り患者さんの心に近づくことを心がけています。僕はスタッフや患者さん、出会う人に恵まれてきました。何事もそうですが、一人では何もできません。同じベクトルを持ったスタッフとともに患者さんを診ていくのが理想です。それがチーム力で機械やマニュアルではできないことだと思います。
スタッフの皆さんとは普段どのように関わっていらっしゃいますか?
当院の患者さんの半数が予防やメンテナンスで来院されますから、歯科衛生士に恵まれたことは本当にありがたいです。当院では若手からベテランまで、さまざまな年代のスタッフが働いてくれています。スタッフをまとめるためというより、僕がスタッフたちのことが好きで自然とコミュニケーションを取っていますね。彼女たちのためにも、ここで学び、技量を上げてほしいと思いますが、当院のためとか、そういうことは望んでいません。当院で働いたことが、人生の中で何らかのプラスになってほしいと思っています。いつの日か当院で過ごした時間が幸せだったと思ってもらえたら、それは僕にとっても幸せです。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
壊れてから治すのではなく、壊れる前にケアをすることが大切です。ぜひかかりつけのお医者さんを決めて定期的にケアすることが健康を維持していくために最も重要だと思います。先ほどもお話ししましたが、歯科診療は歯科医師やスタッフと患者さんとが、人と人としてコミュニケーションを取ることが最も重要だと考えています。患者さんそれぞれに、ピッタリの歯科医院が存在するはずです。自分が治療を受ける上で納得のいく歯科医院をぜひ見つけていただきたいですね。私も、私とスタッフを信頼して通院してくださる患者さんたちをこれからも大切にしながら、地域に貢献していけたらと思っています。