「発症=症状がある」ではない?
歯周病の基礎知識と治療の選択肢
玉垣歯科医院
(鈴鹿市/玉垣駅)
最終更新日:2024/11/13


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歯磨きをすると血が出る、歯茎がぶよぶよしたり歯がぐらついたりする、歯がしみるなど「口腔内のトラブル」といってもバリエーションは多岐にわたる。症状を自覚したのをきっかけに歯科医院を受診し、治療に進む人も少なくないだろうが、「玉垣歯科医院」の脇田昇武副院長は「お口の病気の大きな特徴は『自覚症状がない』こと」と指摘する。初期段階では生活に支障を来すようなトラブルは少なく、脇田副院長は「症状が現れることがすなわち病気の始まりではないからこそ、病気が進行しないよう症状がない段階からの治療介入が不可欠」と強調する。さらに「診療を通して個々の患者さんのそうなるに至った“ストーリー”を知ることが適切な治療の提案につながります」と続ける脇田副院長に、歯科疾患の基礎知識や治療を選択する上で重要な点などを聞いた。
(取材日2024年10月16日)
目次
さまざまな因子が複雑に絡み合う歯科疾患。かかりつけ医を持ち予防に意識を向けることが健康を守る一歩に
- Q罹患者数が多いとされる歯周病について教えてください。
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A
▲「自覚症状がないことが歯周病の大きな特徴」と話す脇田副院長
歯周病の主な原因は細菌感染で、世界で最も罹患率の高い感染症といわれています。ただ多くの人は感染症と聞くと風邪のように感染からほどなくして熱や咳といった自覚症状が現れるとイメージするかと思います。ですが歯周病の場合、初期段階では目立った症状がほとんどありません。たとえ細菌に感染していても、それを自覚することはすごく難しいんです。きちんと毎日歯磨きをしていて痛みや違和感がなかったとしても、歯周病に罹患している人は珍しくないですし、30代以降は罹患率もぐっと高くなります。また、歯周病は全体の歯周組織が罹患するというよりも、一部の歯だけ歯周病が進行してしまう部位特異性があるということが非常に厄介です。
- Q一部分だけ歯周病が進行するため、病気に気づきにくいのですね。
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A
▲定期的な診察やメンテナンスを受けることが大切
はい。また歯周病は生活習慣病としての側面が強く、さまざまな生活習慣や基礎疾患と相互に影響し合っている場合があります。例えば歯周病の一番のリスク因子とされるのが、加齢や喫煙習慣です。特に喫煙は血管収縮作用があり免疫機能にも影響するので、喫煙を続ける限り思ったような治療経過をたどりにくくなります。糖尿病などの生活習慣病とも関連しますし、最近では治療成績の不良に睡眠不足が関係することも明らかになりつつあり、生活習慣の見直しの重要性にも注目が集まっています。歯周病の進行の背景にある因子は本当にさまざまで複合的に絡み合っています。お口の病気はそもそもどんなものなのか、広く認知されることがすごく大切です。
- Q診察ではどのような点に注意を払っているのですか?
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A
▲丁寧なヒアリングで、患者一人ひとりに合わせた治療を提案する
まずは丁寧な聞き取りですね。服用しているお薬が治療に影響することもありますから、基礎疾患の治療でどのようなお薬を飲んでいるのかをお聞きします。若い方で、治療しても出血がなかなか改善しない場合には生活習慣についてお聞きすることも。あとは、常に「全体像を捉えること」を意識しています。例えば、歯磨きの状況を把握するために行う染め出しにしても、赤く染まった部分が必ずしも悪化しているとは限りません。磨けているけれど、その部分の歯周病が進行している場合もあります。背景にあるのは、歯の形態異常かもしれないですし、噛み合わせの問題かもしれない。あらゆる可能性を踏まえて診査し、治療やケアに生かしていきます。
- Q治療計画を立てる上で心がけていることを教えてください。
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A
▲ブラッシングの指導を行うことも
何においても重要なのは、10年、20年先を見据えることだと思っています。例えば虫歯治療の場合、多くの方は悪くなった部分を削って詰める治療を想像するでしょうが、それを行うタイミングと治療法もとても重要です。ごく初期の虫歯の場合、定期的なケアである程度進行を防ぐことが期待できます。詰め物は永久に維持できるものではありませんし、耐久年数を考慮し経過を見ながら、削って詰める治療をいつ、どのような方法で行うかの見極めが重要だと思っています。治療で用いる素材は何が適切なのかも、患者さんのお口の状況によって判断は異なります。もちろん、患者さんのご意向も踏まえて、より良い治療を提供することに努めています。
- Q保険と自費の選択も、患者さんは迷われてしまうかと思います。
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A
▲目立ったトラブルがなくても気軽に受診してほしいと話す
近年は保険診療の中でも、ダイレクトボンディングなど白い素材を使った治療の幅が広がっています。歯科金属アレルギーの問題もあり、金歯や銀歯よりも白い素材を選択される患者さんも増えていますね。自費治療の場合、強度や審美的にも優れたセラミックやジルコニアを使うケースも。金額的な部分も含めさまざまなメリット、デメリットがあります。金額に目が行きがちですが、大事なことは患者さんごとに口腔内の状態が違うということ。生活習慣や噛み合わせや治療歴などにより、ベターな選択肢が変わってきます。だからこそ、患者さん自身がより良い選択をできるようメリット・デメリットを提案することが私たちの重要な役割なんです。
自由診療費用の目安
自由診療とはセラミック治療/4万円~、ジルコニア治療/7万円~