脇田 昇武 副院長の独自取材記事
玉垣歯科医院
(鈴鹿市/玉垣駅)
最終更新日:2023/10/31

伊勢鉄道玉垣駅から車で西へ約5分、大型スーパーや住宅が立ち並ぶ車通りの多い鈴鹿市南玉垣町に建つのが「玉垣歯科医院」だ。1987年に院長の脇田幹生先生が開業して以来、30年以上地域に根差した医療を提供。2022年に副院長の脇田昇武(しょうぶ)先生が中心となり、0歳から100歳まで診療できる歯科医院をめざしリニューアルオープンした。「口腔機能の低下を予防したい」という想いを持つ脇田副院長に、注力する訪問歯科診療のことを中心に詳しく聞いた。
(取材日2022年7月21日)
0~100歳まで未来を見据えた治療をめざす
2022年6月にリニューアルオープンされたそうですが、建物のこだわりポイントを教えてください。

以前の建物のベースを生かして、床も壁もリフォームしました。内装も外装もほぼすべて変えています。一から作り上げるというよりは、働く中で「ここがこうなっていたら良いのに」と感じるところを理想に近づけるようにしました。“歯科医院”の雰囲気を残しながら、どこまでおしゃれにするのかを考え、ご高齢者でも親しみやすく、若い方にも好かれそうな色合いを意識しています。院内は、明るくなるよう白を基調にして、窓も大きめに。患者さんが入りやすいよう外から中の雰囲気がわかるようにしています。特に、使用する白の色合いにはこだわっていて、外壁にもいろいろな白がある中で一番明るいものを選び、歯科医院らしく、かつ、おしゃれすぎない、清潔感と親しみやすさの両立をめざしました。
お子さんと使えるファミリーチェアも作られたそうですね。
私は、“0~100歳まで診療可能な歯科医院”をめざしています。小さな子どもから高齢者まで診たいので、バリアフリー、キッズスペース、ファミリーチェア、おむつ交換台は絶対に必要と考えました。待合室にしかキッズスペースがないと、一緒に来院した親御さんは、ご自身が治療をしている間にお子さんたちがどうしているか不安だと思います。治療中も目の届くところにお子さんがいたほうが安心して治療を受けられると思いますので、チェアの横にベビーサークルを用意しました。ほかにも良い方法がないかと検討中ではありますが、ベビーサークルを置いてみたところ、3~4歳くらいの子どもも遊んでくれています。
大学卒業後はどのような経験をされてきたのでしょうか?

愛知学院大学歯学部を卒業後、朝日大学歯科医療センターで研修を受け、その後名古屋市にあるすぎうら歯科クリニックで勤めることになりました。すぎうら歯科クリニックでは良い出会いがたくさんあり、そこで学んだことが私のベースになっています。とにかく働くことが楽しくて、やりがいも感じていたので、勤務時間が長くてもまったく苦痛に感じませんでした。すぎうら歯科クリニックでは、インプラント治療と義歯、訪問診療のことを学びましたね。1日に120~130人くらいの患者さんが来る歯科医院で、さまざまな経験を積みました。実践重視の歯科医院で、ポイントを教わりながらいろんな治療に臨むスタイルも私の肌に合っていて、どんどん知識と技術を吸収していきました。
認知症予防につなげるべく、「訪問予防歯科」に注力
訪問歯科診療に興味を持たれたきっかけはどのようなことだったのでしょうか?

私が大学2年生の時に祖父が誤嚥性肺炎で亡くなり、ちょうどその半年後くらいに授業で訪問歯科や摂食嚥下、誤嚥性肺炎のことを学びました。祖父がどのような状態だったのかを知り、私が何とかできたのかもしれないと思い、その時食い入るように話を聞いていました。祖父が入院していた時は、担当の医師から胃ろうを行うと言われ、それを受け止めましたが、祖父は口から食事がしたいという思いを持っていました。でも、食べるとすぐむせてしまい、つらそうにしていたのです。勉強をして、胃ろうをしても摂食嚥下のトレーニングができること、胃ろうをしたからもう食べられないわけではなく、まだ希望を持てると知りました。それからもずっと訪問歯科診療のことを幅広く勉強してきました。
訪問歯科診療に対して、特別な想いを持っていらっしゃるのですね。
訪問歯科診療は一般的に、歯周病や虫歯の予防・治療、入れ歯の対応などと認知されていると思いますが、実はそれだけではありません。摂食嚥下に問題が出てくる、食べるとむせてしまうという状態になる前に、口腔機能の低下を予防するのが訪問歯科診療のあるべき姿だと考えています。認知症や、全身の筋肉量が減少して筋力と身体機能が下がるサルコペニアの予防にも、歯科が関わるべきだと思うのです。奥歯の有無や臼歯部の咬合が認知症に影響しているとも考えられていますので、要介護の状態になる前に予防していく「訪問予防歯科」という考えを発信していきたいですね。「訪問予防歯科」は実践するのはとても大変ですし、結果がなかなか出ないこともありますが、ゆくゆくは歯科医師と歯科衛生士を増やして注力していきたいです。
患者さんと接する際に心がけていることを教えてください。

私の患者さんに対する接遇の見本になっているのは、すぎうら歯科クリニックで一緒に働いていた勤務医の先生です。とにかく物腰がやわらかく低姿勢な先生で、笑顔もすてきで患者さんの主訴をしっかり聞く方でした。患者さんにすごく共感される方で、患者さんを想って泣いていたこともありましたね。無理なことはしない先生だったので、その先生の治療しか受けられないという歯科恐怖症の患者さんもたくさんいたほどでした。そんな優しい先生を理想としていますので、私も腰は低いほうかと。その先生がご退職されてからは、私の治療を希望する歯科恐怖症の患者さんが増えました。患者さんの気持ちをよく聞き、治療中も患者さんの目線や体の動きをしっかり見て、痛みを我慢しているなと感じたら、手を止めたりお声がけをしたりしています。
超高齢社会を見据え、将来を考えた治療を提案する
歯科技工室があるのですね。

はい。最近では、歯科技工室がある歯科医院は、かなり少ないと思います。経験豊富な院長が金属の詰め物などを鋳造しているので、当院の詰め物は自由度が高いと思いますよ。義歯修理も得意としており、研磨する機械もありますので、ツヤもあります。義歯に関しても、院長が基本に忠実に、一つ一つチェックをして着実に作業を行い、その方に合った義歯作製を心がけています。院内に技工室があると、詰め物の微調整もすぐに行うことができます。
スタッフさんの教育方針を教えてください。
スタッフはリニューアルオープン前から勤務してくれている人が3人と、新しく雇用した歯科助手が1人、パートが2人います。教育方針は、スタッフそれぞれの良さや得意を伸ばしていってもらえたら良いと考えています。例えば、セルフケアに関心があってブラッシングの指導が得意という人、歯根の汚れを取るルートプレーニングが得意という人、訪問歯科が好きな人がいたとしたら、無理に足並みをそろえる必要はありません。いろんな得意を持ったスタッフがいて、みんなで情報を共有し、教え合うことで全体の力が上がると思うのです。それが当院の強みになり、患者さんへ還元されていくと良いですよね。
最後に読者の方へメッセージをお願いします。

昨今、お口の健康が基礎疾患や認知機能にも影響するという考えが広まってきていますが、奥歯が1本抜けたことが将来的に体へどんな影響を及ぼすのかということはまだまだ知らない方が多いです。超高齢社会となっている現在だからこそ、歯科は皆さんと生涯付き合っていけるとても大切な医療の分野だと思います。私は常々、将来を見据えた治療をしたいと考えています。治療方法を提案する判断材料になりますので、どんな細かいことでも小さな変化でも相談してほしいです。ほかにも「将来的にはインプラントを入れたいけれど、今は金銭的にできない」といったことも気軽に話していただければ、それを見据えた治療を行っていきます。皆さんの小さな悩み、変化、どうしていきたいかを相談してもらえたらうれしいです。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/35万円~