長尾 優 院長の独自取材記事
長尾歯科医院
(大阪市住吉区/我孫子道駅)
最終更新日:2025/09/25
阪堺電軌阪堺線我孫子道駅から徒歩5分ほど。住吉区清水丘の住宅街に1954年に開院した「長尾歯科医院」。2代目院長として日々、忙しく診療を行う長尾優(ながお・ゆたか)院長を訪ねた。同じ歯科医師でありながら「父とは、職業がまったく違うように思います」と笑う理由は、斬新な診療ポリシーにもつながっている。インプラント治療はあえて行わず、歯周病、虫歯などの「病気」の治療に多くの時間を割く。「もう抜くしかない、治せない、と言われても、治療できる歯はいっぱいあります」と胸を張るのには、豊富な経験と実績があった。近代口腔外科研究会に所属し、飯塚哲夫歯科医師に師事。本当の歯科医療をめざす長尾院長に、歯周病治療のことから歯磨きの重要性、さらに今後の展望までをじっくりと聞いた。
(取材日2025年8月21日)
健康な状態を一生維持してもらうことをめざして
診療ポリシーをお聞かせください。

最も重視しているのは、病気を治すことです。ほとんどの歯科医院では、病気を治すことよりも見た目の美しさや、穴があれば埋めるなどの機能面に重きを置いているのではないでしょうか。また、歯がないところに義歯や詰め物、かぶせ物をすることにも重点があるように思います。しかし、お口の病気を本当の意味で治して、健康な状態を一生維持してもらえるようにすることが、私が一番やりたいことであり、やるべきことであるのです。お口の病気で最も多いのは歯周病と虫歯です。虫歯の治療においては、何度も治療をやり直しした結果、神経を抜かれたり、歯を抜かれたりすることもありますが、本当にきっちりと治療すれば、虫歯の治療は一度で済むはずです。もしも失敗し再治療となったなら、私はその原因をしっかりと究明し、二度とそうならないよう心がけます。
歯周病の患者さんも多いと伺っています。
そうですね。時間的に、歯周病治療に割く時間が一番多いと思います。来院される患者さんのほぼ100%が歯周病を患っているからです。私が知る限り、歯科医院に来院された成人患者さんは例外なく歯周病の症状を有していると思います。歯周病は、歯と歯茎の間にばい菌がたまってできる病気で、人が歯を失う主な原因です。つまり歯は老化や寿命で、なくなるわけではないのです。理論上、人の歯は100歳を超えても正常に機能するようにできているそうですが、多くの成人が歯周病にかかり、自分の歯をなくすリスクにさらされています。生涯自分の歯を守りたいなら、歯周病治療は必要不可欠だと考えています。歯周病の原因は歯の周りに付着した歯垢や歯石、ばい菌の塊ですから、これを徹底的に除去すれば、問題は解決につながるはずです。
歯周病の治療はどのように進めるのですか?

初診で来られた方には、簡単な検査を行います。プローブという器具を歯と歯茎の間に軽く入れ、その部分に出血があるかないかを調べる検査です。この段階で出血があれば、そこに炎症があるという証拠ですから、歯周病といえます。この検査で出血のない人は、実はほとんどいません。つまり、程度の差こそあれ、ほとんどの人が歯周病に罹患しているといえるのです。ですが先ほどもお話ししたように、歯周病は細菌を徹底的に除去することで、治療できる病気です。そのために当院が重要としているのが歯磨きです。歯石除去、歯茎の治療を行った上で、飯塚式刷掃法の歯磨きを指導しています。
歯周病治療に役立つ飯塚式刷掃法の歯磨きとは
飯塚式刷掃法とは、どのような歯磨きでしょうか?

近代口腔科学研究会を発足した飯塚哲夫先生発案の、歯周病治療に有用な歯の磨き方です。歯磨きは歯の表面を磨くだけでは意味がありません。歯と歯茎の間にある溝の中を磨いて、細菌などを除去することが大切です。歯ブラシの毛を歯茎に斜めに当て、毛先を溝の中に軽く滑り込ませたら、毛先が引っかかった状態で動かす、当てて入れて動かすことを繰り返せば、歯茎の炎症の改善が見込めます。私が近代口腔科学研究会を知ったのは、学生時代にさかのぼります。歯科の雑誌に掲載された特集記事を読み「歯科は一科で口腔科であるべきだ」という考え方に強く感銘を受けました。たまたま大阪であった講演会に参加したところ、全国から歯科医師の先生が来阪されていました。さらに皆さん毎月、埼玉の研究会に通っていると。それから私も通い続け、もう二十数年が経過しました。
インプラント治療をしないと決められているそうですね。
それも、当院のポリシーの一つなんです。「できない」ではなくて「しない」と決めています。それはインプラント自体がインプラント周囲炎という新たな病気を作ってしまうからです。そのためオーソドックスな方法として、歯が1本だけ抜けた場合は前後の歯を使ってブリッジを行います。何本もたくさん抜けてしまった場合は、取り外し式の入れ歯で対応ができます。健康な歯を削りたくないから、インプラントをする人もいるでしょうが、私は「健康な歯を削っても、入れた物が一生何もトラブルを起こさなければ、削っても構わない」と思うので、インプラントをお勧めする理由にはなりません。「取り外し式の入れ歯が合わない」という声も聞きますが、入れ歯が入れられない患者さんはごくごく少数です。調整もなく1回で済むとは限りませんが、ほとんどの場合は数回ほどの調整でよく噛めて、がたつかない入れ歯を作ることができます。
単に「歯科」ではなく、「口腔科」をめざしているそうですが「口腔科」とはどのような領域ですか?

口の中の疾患をきちんと診ることができる分野、というイメージです。歯科というと歯を抜いたり、抜いた部分に入れ歯を入れたりというイメージがあると思います。でも、それだけでは口の中の健康は守れません。口の中には歯があり、肉、骨、粘膜、舌もあり、小さな範囲にさまざまな器官が集合しています。単独の分野しかわからないのでは、口腔の健康をしっかりと取り戻す治療は難しいでしょう。もし抜歯を依頼されたとしても、本当に抜かないといけない歯かどうかを判断できる、総合的に診られるのが口腔科だと思って取り組んでいます。患者さんのためにできることをする、患者さんにとってメリットになる方法を選び、情熱を持って病気を治療するという気持ちを常に持っています。
本当の歯科医療とは病気を治すこと
こちらはお父さまから継承されたそうですね。子ども時代から歯科医師をめざされていたのですか?

1954年に父がここで開院し、私の生まれ育った場所です。けれど子ども時代の私にとって診察室は父の聖域でしたから、仕事をしている姿を日常的に見て育ったわけではありませんでした。そのせいか歯科医師という仕事への憧れや、父と同じ道に進もうという意識もなかったですね。けれど実際にこの仕事に就いてみると、手先を使う仕事も楽しいですし、学ぶことも面白く興味が持て、私にとても向いている仕事だなと思います。今も日々学ぶべきことがたくさんありますが、まったくストレスに感じませんし、大変だとも思いません。仕事が趣味のような感覚で楽しめているので、この道に進んだことは、とても良かったと思っています。
患者さんに理解してもらうために、心がけていることはありますか?
とにかく細かく詳しく丁寧に説明します。ご自分の現状を把握してもらうことから始めて、どのように治療していくかまで、お話しします。もちろん一番大切なことは、患者さんご本人の意思ですから、無理強いすることはしません。「どれだけ時間がかかっても完治させたい」と考える方から、「今悪いところをさっと抜いてくれたらそれでいい」と考える方まで、いろいろな患者さんがいらっしゃいます。「すぐに抜いてくれ」と希望する患者さんに対して「いや、私は抜きません」と追い返すようなことはありませんが、メリットとデメリット、より適切だと思う治療方法について、時間をかけて心を込めて説明をします。その上で患者さんが納得される方向性を決め、治療に向かうようにしています。
最後に読者へのメッセージをお願いいたします。

虫歯や歯周病は、放っておいて治る病気ではありませんので、少しでも異変を感じたらすぐに受診をお勧めします。「痛くなってから行こう」という考え方は、絶対にやめたほうがいいでしょう。私は今後も「すべきことをする」というスタンスを変えません。本当の意味で病気を治療し、皆さんが健康な状態を一生維持してもらえるようお手伝いをしていきたいと思っています。抜歯しかない、治せないと言われても諦めずにご相談ください。まだまだ治療できる歯はたくさんあると思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とは歯列矯正/5万5000~44万円、入れ歯治療/16万5000円~、かぶせ物/1歯7万7000円~、詰め物/1歯3万3000円~

