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丹羽 和賀美 院長の独自取材記事

和みのクリニック

(横浜市青葉区/あざみ野駅)

最終更新日:2023/03/14

丹羽和賀美院長 和みのクリニック main

エレガントなフレンチジョージアン様式の一軒家が目を引く「和みのクリニック」は、あざみ野駅から徒歩5分。バラで彩られるアーチから院内に入ると、そこは丹羽和賀美(にわ・わかみ)院長のセンスが光る空間だ。まるですてきな友人宅を訪れたようで院名のとおり気持ちが和む。待合室では患者同士の目線が合わないよう窓に向かって椅子を配しており、感染症対策のため受付人数を絞るなど、こまやかな配慮が随所に見られる。患者を思う姿勢は診療面でも同様で、「人と人の間の空気」を大切にした精神医療を提供し、運動療法としてヨガを組み合わせた自律訓練法も推進する。やわらかな笑顔で精力的に治療に取り組む丹羽院長に、診療にかける思いや人生哲学について語ってもらった。

(再取材日2014年6月5日/情報更新日2022年11月30日)

人と人の間の空気、非言語的コミュニケーションが大切

先生が診療において大事にしていることは何ですか?

丹羽和賀美院長 和みのクリニック1

精神医療では、「人と人の間の空気」がとても大事だと考えています。人間が持つ、他人との間の精神的な距離を「対人距離」と呼びますが、適度な対人距離は人により異なります。遠い人、近い人、近づいてもらえないと不安な人、逆に近づかれると怖いと感じる人と、さまざまです。ですから治療者として、その方にとっての適度な距離がどのくらいかを見極めながら接するように心がけています。精神医療というのはきちんと“面と向かって”、患者さんと私との間にある空気を互いに混ぜ合いながら共感を極めていく、非言語的コミュニケーションが大切だと思っています。

患者さんの症状で最近気になるものはありますか?

よく「うつ病が増えた」といわれますが、私としては極端には増えていないと思っています。マスコミも一般の方も、皆さんうつ病を誤解しているのではないでしょうか。そもそも、「うつ」の語源はギリシャ語の「メランコリア」で、体中に胆汁酸がたまって動けなくなった状態を意味します。本来のうつ病とは、意欲も感情も思考も体も全部止まってしまうようなもの。“電池切れ”の状態なので、まずは休んで充電すること、つまり充電器としての役割を果たす薬と十分な休養が必要なんですね。そうして回復に向かってきたら、患者さんによっては当院では自律訓練法を導入することもあります。

うつ病に対して一般に誤解があるとお考えなんですね。

丹羽和賀美院長 和みのクリニック2

ええ。今の日本では、「失意・死別」や「思いどおりに生きていけないから悔しい」とか「試合に負けた」「試験に落ちた」といった“悲しい”や“つらい”という負の感情までも、うつと勘違いしている方が多いようです。しかし、そうしたものは、ある意味当たり前の感情であり、正常悲哀反応としてうつ病とは区別しなければいけません。最近、特に多いと感じる“嘆き”は、文化が豊かになり過ぎたことで欲が増え、その欲が満たされない反動で生じているのではないでしょうか。ですから私は、欲を減らすことが生きやすくなるコツだと思っているんです。

ヨガを組み合わせた自律訓練法に注目

ヨガと精神医療の関係に注目されているとか。

丹羽和賀美院長 和みのクリニック3

10年以上前から、ヨガを組み合わせた自律訓練法に注目してきました。もともとヨガは自分の健康のために始めたのですが、精神医療に通じる大きな発見があり、これを運動療法の一環として導入したいと思ったのです。近年、精神医療ではすぐに薬を出すことが多いですが、私はそれに疑問を感じていました。もちろん、どうしても使わなくてはいけないときには使用しますが、薬を飲んだという安心感のほうが大きい場合もあり、休養や環境調整から入ったほうが良い場合があります。そこで、薬や精神療法以外の方法として、自分の内面と向き合うヨガを組み合わせた自律訓練法を取り入れることにしたのです。

具体的にどのような方に自律訓練法を行うのでしょうか?

そもそも人間には「随意神経」といって自分で動かせる神経と、自分では動かせない「不随意神経」があります。例えば、パニック障害や不安神経症などで受診される患者さんの場合、初めは「原因が思いあたらない」とおっしゃっていても、お話を伺っているうちに「そういえば過去にこんなことが……」と思い出されるケースがよくあります。つまり、無意識の葛藤のようなものが随意神経を動かして症状が起きていることが多いんですね。体の不調で検査をしても何も異常がないからと心療内科の受診を勧められた場合など、まずは会話のキャッチボールをしながら少しずつ心を開いてもらうと、このような無意識の葛藤が根っこにあることが徐々にわかってきます。自律訓練法は不安神経症・パニック障害・うつ病の軽快期などの患者さんに適していると考えています。

自律訓練法を行うことでどのような変化が期待できますか?

丹羽和賀美院長 和みのクリニック4

例えば電車の中で突然パニック発作が起こっても、「これは自分で起こしているのだから解除も自分でできる。大丈夫!」と、ご自身を落ち着かせられるようになることが期待できます。パニック発作では呼吸、特に吐く息が大切です。「吸う」ことは交感神経が優位になる興奮系、「吐く」ことは副交感神経が優位になる鎮静系なのですが、発作時は多くの方が不安のあまり息を口から大きく吸います。過呼吸症候群も同じで、どんどん口から吸うから苦しくなってしまうのですね。吸う前に全部吐き出し、肺を空っぽにして鼻からゆっくり吸えば、おなか、胸、背中まで十分に酸素を入れることができます。人間は力を入れること・息を吸うことは得意ですが、力を抜くこと・息を吐くことは苦手なもの。鍵となるのは力を抜くことと入れることのメリハリです。人生も同じで、いかに力を抜くかが肝心なのです。

人が持つ自己治癒力を伸ばし助けるのが医療の役割

男性と女性では診療方法も異なるのですか?

丹羽和賀美院長 和みのクリニック5

男と女は同じ人間=ホモサピエンスですが、脳の中や体の造り、ホルモンも違うし、全然違う動物だというのが私の考えです。昨今ジェンダーレスとかセクハラ、男女平等が声高に叫ばれていますが、男女異種平行・平衡・並行と考えており、こうした違いを踏まえ、女性と男性それぞれへの対応をおのずと変えているところはあるでしょう。私は神経内科の医師としてキャリアをスタートさせましたが、専門は精神病理学という哲学に近い分野です。内科と精神科、両方の視点から診ていることも診療方法に影響していると思います。医学には科学的に割りきれる部分と、割りきれない部分があって、医学=科学ではないと思うのです。人と人のあいだが精神医療には大事ですし、切っても切り離せない心と体を両側から診ることが必要ではないでしょうか。「男と女」「医学と科学」「心と体」など、“対比”と“融合”が私の実践する医療の特質なのかなと考えています。

丁寧に患者さんと向き合っておられるのですね。

真剣に病気で悩んでいる患者さんに寄り添っていきたいと常に思っています。先ほどふれたように“嘆き”や“嫌だ”という感情を病気だと思い受診される方もいますが、人生相談のような悩み事は病気とは異なるものです。本来なら、病気でなければ保険診療として治療することはできませんが、不健康な状態として対応しています。精神科医はカウンセラーともちょっと違うということをご理解いただけたらと願っています。また、診断書やお薬が欲しいと言われるケースがあるのですが、患者さんの希望どおりに何でも対応する医師が真に良い医療者とは思っていません。より良い適した道があるはずです。今後も本当に病気で悩んでいる患者さんのために、協力し合いながら一緒にゴールをめざしていきたいと考えています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

丹羽和賀美院長 和みのクリニック6

人間には自己治癒力があり、その力を伸ばすことも医療では大事だと考えています。体の病気は医師が治すのではなく、患者さんがもともと持っていた力を発揮できるようにするもので、心の病についても自分で治す力を持っている人を助けるという発想で診療していかなければと考えています。私は小・中学生の頃クラス中から外されて苦しんだ経験から、「いったい人の心ってどうなっているんだろう?」と思い、精神科の医師をめざしました。そして実際に精神科医になって患者さんを診るうち、いつの間にか生きやすくなっていたんですね。ですからこれからも患者さんから学びつつ、得られたものは世の中に還元していきたいと思います。また、コロナ禍になる前は世界中の海でダイビングをしたり、さまざまなことをしてきましたが、そうした旅の中で気づいた言葉にならなさそうなことを言語化し、書き続けることをライフワークとして取り組んでいきたいと思っています。

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