進行が遅く見逃しがちな
摂食嚥下障害の治療
諏訪歯科医院
(大阪市中央区/淀屋橋駅)
最終更新日:2025/01/16


- 保険診療
「食べ物を認識した上で口に運び、咀嚼して飲み込む」という動作を、私たちは日々当たり前のように行っている。中には、おいしいものを食べることに喜びや生きがいを感じるという人もいるだろう。そうした「食べる」という一連の動作のどこかにトラブルが起きてしまうのが、摂食嚥下障害だ。「諏訪歯科医院」では、歯科医院での診療だけでなく訪問歯科診療においても、口腔機能の維持とともにこの摂食嚥下障害の治療に注力している。放置すれば食事の楽しみが奪われてしまうだけでなく、口腔や喉の機能、認知機能の低下の原因にもつながるという摂食嚥下障害。当院で訪問歯科診療を担当し、さまざまな指導や訓練を行い、安全性を重視した食事や誤嚥性肺炎の予防もめざしている伊東勇一郎先生に、詳しい話を聞いた。
(取材日2023年11月13日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q摂食嚥下障害とはどのような症状なのでしょうか。
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A
食べ物を認識して口へ運び、咀嚼して細かくした食べ物を舌でまとめて喉へ送り込み、ごくんと飲み込む、という摂食嚥下の過程のどこかでトラブルが起きている状態のことを摂食嚥下障害といいます。原因は、認知症で食べ物を認識できない、脳梗塞などによる嚥下機能の損傷の他に、オーラルフレイルと呼ばれる口腔機能の低下による口の乾燥や舌の運動障害、味覚異常など数多くあります。症状は、喉に唾液がたまりゴロゴロと音がする、食べ物が飲み込めず口の中にため込む、食事の量が減る、口をうまく閉じられないためによだれが出続ける、などさまざまです。
- Q症状を放置した場合のリスクを教えてください。
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A
噛めない、食べられない、むせるといった症状から低栄養、脱水、肺炎などにつながってしまう恐れがあります。まず誤嚥を防ぐために食べ物を飲み込みやすい形状に加工すると、栄養素が不足がちになるため、体重が減少したり、心身のフレイルを招いたりというリスクが考えられます。また、食べ物や唾液などが食道ではなく気道に入ってしまうと、口腔内の細菌なども一緒に肺に入ってしまい、誤嚥性肺炎が引き起こされてしまうケースも考えられます。さらに、適切な量が判断できずに食べ物を口に詰め込んでしまった場合には、窒息する危険性も否めません。
- Q日常生活で気をつけるべき点はありますか?
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A
食事中の姿勢や一口の量、食事のペース、食事の内容や形態に工夫が必要です。口腔ケアなどで口腔内を清潔に保ち、細菌を増やさないことも誤嚥性肺炎の予防に役立ちます。また、虫歯治療や歯周病治療、入れ歯のお手入れも、口腔機能の改善につながるでしょう。高齢者の摂食嚥下障害は徐々に進行するため、適切な治療を受けられていない方も少なくありません。「食が細くなった」「喉からいつも音がする」といった症状があれば、早めに歯科医院を受診することをお勧めします。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1本人や家族、スタッフから症状などをヒアリング
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歯科医院または訪問先の自宅や施設などで、まずは患者や家族、施設スタッフに話を聞く。困っている症状を中心に、患者の病歴、介護の状況、さらに日常生活の様子まで幅広く確認し、患者や介助者が主体的に取り組める治療や指導へとつなげる。
- 2検査とテストによる評価
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水や唾液をしっかり飲み込めるかどうかを確認する検査や、噛み合わせをはじめとした口腔内の診察を行う。普段の食事内容をしっかり確認した上で、実際の食事の様子を観察し、摂食嚥下のどの段階に問題があるのかを丁寧に探っていく。
- 3嚥下内視鏡で飲み込みを直接観察
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嚥下機能に問題が認められて、より詳しい検査が必要になった場合には、患者の希望に応じて嚥下内視鏡検査を実施。患者の鼻からファイバースコープを挿入し、実際に食べ物を飲み込む様子をモニターでリアルタイムに観察・評価する。
- 4嚥下摂食訓練や食事指導を実施
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むせにくく飲み込みやすい姿勢、一口の大きさ、ペースといった食事指導のほか、食事そのものの形態やとろみのつけ方などについてのアドバイスも実施。併せて口腔環境を改善するためのケアや入れ歯の調整から、会話や歌、口の体操など普段から口や舌を動かして嚥下摂食を改善するための訓練法も指導。
- 5継続的なサポート
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通院が困難な患者の場合は、定期的に訪問して摂食嚥下機能の変化を評価し、その時点の機能に合わせた指導や訓練を行いながら、安全性に配慮した楽しい食事の継続や一層の口腔環境改善を図る。