水野博之先生の独自取材記事

水野歯科医院

(堺市北区／堺市駅)

最終更新日：2023/12/22

JR阪和線堺市駅の東側に広がる落ち着いた住宅街、その一角にあるのが「水野歯科医院」だ。趣のある建物の周囲や、診察室に面した中庭には、手入れの行き届いた美しい緑があふれる。優しい笑顔が印象的な水野博之先生は、父が開業した同院で2016年から診療に従事。得意とするインプラント治療や口腔外科などの診療技術を背景に、歯科医師主体ではなく患者の思いに寄り添った診療がしたいと語る。予約制だが、歯科技工士も常駐し義歯の修理など応急処置にもスピーディーに対応。また予防にも以前から力を入れており、定期的に通う患者も多い。「患者さんの人生が最もハッピーになる治療を提供したいです」と意気込む水野先生に、理想とする診療のあり方や、力を入れる治療について詳しく聞いた。

（取材日2018年5月16日／更新日2023年月5月12日）

リニューアルとともに新たな診療体制をスタート
治療方針は患者の希望に寄り添って決定
「勇気を出して相談」が笑顔への第一歩

リニューアルとともに新たな診療体制をスタート

2016年にこちらで勤務し始めたそうですね。院内はゆったりとした雰囲気が印象的です。

当院は1977年に父が開業した歯科医院です。僕は大阪歯科大学を卒業後、大阪府内のクリニックに勤務し、東京医科歯科大学で口腔外科を学んで、首都圏では一般治療やインプラント治療に携わっていました。その後、生まれ育った地域に貢献するため2016年にこちらへ戻ったわけです。当院の建物は「森の中にある歯科医院」というコンセプトで、僕が小学生の頃に建てられました。周囲には多くの草花が植えられ、中庭もあります。僕が戻った時にリニューアルしましたが、中庭の木々は大きく育って、四季折々の表情を見せてくれていましたので、外観や自然はそのまま残しました。院内は、患者さんとスタッフが直接お話しできるよう、受付にあったガラスの仕切りを外し、トイレも親子で入れる広くてモダンな内装に変更。また、カウンセリングルームも新設しました。

診察時間などのクリニックの特徴や、どのような患者さんが来られているか教えてください。

患者さんの多くは父の代から通ってくださっている方で、60代以上が6割以上を占めます。ご高齢になると、朝から夕方までの間に受診されることが多いですから、リニューアルを機に昼休憩をなくして、診療時間を9時から18時30分までにしました。また同時に、お一人あたり30分の予約制に変更。これにより、特定の時間帯に患者さんが集中することを避けられて、お一人お一人を丁寧に診療できるようになったと感じています。診療の際は、今は難しいですがマスクを外して口元を見せてお話しするのが理想。「真実は口から」という言葉があるように、何か伝える際に口元が見えないのは失礼だと考えているからです。また「治療の主役は患者さんで、私たちはお手伝いをする役割」という思いを込め、スタッフのクラブを黒に統一しています。

インプラント治療や、前歯の部分矯正もされているそうですね。

はい。入れ歯は生まれ持った歯の5分の1以下の力でしか噛むことができないといわれているので、食事の内容にどうしても制限が出てしまいます。一方、インプラントはしっかりと噛むことが望めます。また、周囲の歯を削る必要がなく、負担が少なく済むこともメリットです。さらにインプラントで総入れ歯を固定する施術であれば、従来の入れ歯よりずっと噛みやすくすることが見込めますから、患者さんの満足度も高いと考えています。自分の両親が総入れ歯になったら、してあげたいと思っているほどです。高齢になればなるほど食の楽しみが大きくなると思うので、噛める状態の維持が重要になるでしょう。一方、前歯の歯列矯正は、笑ったときの口元に悩む女性からのご要望が多い治療です。上下の前歯6本なら治療期間は約半年が目安。全体を矯正するよりも短期間で、費用を抑えて治療でき、長年のコンプレックス解消につながります。

治療方針は患者の希望に寄り添って決定

治療方針を決める際には、何を大事にしていますか？

インプラントや部分矯正も含めて、患者さんのニーズにふさわしい治療方法を提示することです。歯科医師の立場から見れば、完成度の高い治療法と思えるものはあります。ですが、治療を受けた歯を使って生活するのは患者さんご自身。つまり、治療の主人公は患者さんです。だからこそ、私から現在の状況や考えられる治療の選択肢についてはお伝えしますが、治療方法や治療のゴールは患者さんに決めていただくように心がけています。例えばインプラントや全顎矯正はお勧めできる治療の一つですが、まとまった費用や治療期間が必要です。当院で前歯の部分矯正を実施しているのは、「矯正はしたいけれどなかなか踏み切れない」という方のニーズに応えたいからです。部分矯正ではマウスピース型装置を使った夜間のケアが必要になりますが、このようなアフターメンテナンスの重要性もきちんと伝えて、ご希望に近い治療方法を探していきます。

そのためには、患者さんとの意見のすり合わせが重要になりますね。

そうですね。そのためにカウンセリングルームを設けました。初診では、まずスタッフが問診とカウンセリングをして、「過去に歯科で嫌な経験をしたことがないか」といったこともお聞きしています。その後、診察台では一通りの検査と診察をした上で、再度カウンセリングルームに移っていただき、僕が患者さんと正面から向き合ってお話しします。これから何回も、何ヵ月も続く治療だからこそ、最初にきちんと話し合う時間を確保して、患者さんが必要とする治療を明らかにしておきたいのです。

歯を失ったときに、インプラント治療以外にはどのような選択肢がありますか？

入れ歯やブリッジ、そして「歯牙移植」という選択肢もあります。歯牙移植とは、噛み合わせの都合で機能していない歯や親知らずを、歯を失った部分に移植する治療法です。当院ではインプラント治療に力を入れていますが、患者さんによっては歯の生体を生かす歯牙移植のほうが適している場合もあるので、状態に応じてご提案しています。インプラントとの違いは、歯と骨をつなぐ歯根膜が残るので、噛む感触が得られること。費用も抑えられます。一方で、移植歯が定着しないといったリスクもあるため、適応するかの見極めが大切。当院では僕が口腔外科を専門にしてきた経験を生かして、しっかり判断します。

「勇気を出して相談」が笑顔への第一歩

歯周外科にも注力されているそうですね。

歯周病は中度以上に悪化すると外科的処置が必要になるため、当院ではフラップ手術や歯槽骨再生手術を行っています。フラップ手術は歯茎を切開して奥深くの歯垢を除去し、浅くなった歯周ポケットを戻すことが目的。歯槽骨再生手術は、後退した歯肉や歯槽骨などの歯周組織の再生をめざします。高度な技術が必要ですが、痩せた歯肉を厚くするための処置も可能です。下がった歯茎やしみる症状が気になる方はご相談ください。とはいえ、歯周病は軽度の段階でケアするに越したことはありません。特に、インプラント治療後は歯周病のリスクがありますから、定期メンテナンスに欠かさず通っていただけたらと思います。

勤務医時代を経て同院に来られて、ご自身の中で変化したことはありますか？

勤務医時代は治療のスペシャリストであれば良かったですが、ここで働き始めてからは、患者さんのお気持ちをくみ取って治療する重要性を痛感しています。長年お付き合いしていける関係だからこそ、患者さんのお人柄やご要望に寄り添いたいですね。また、口腔外科が専門だった僕がインプラントに関わるようになったのは、患者さんの喜びや笑顔にふれ、それまでになかった感情を抱いたからです。父に「人助けができる仕事だよ」と言われて歯科医師を志しましたが、それが実感できた瞬間だったかもしれません。幸いにも患者さんの多くは定期メンテナンスに通ってくれていますが、皆さんの「噛める」「笑える」喜びが長く保てるよう、ニーズに合った診療を提供していきたいと強く願っています。

最後に、読者にメッセージをお願いします。

お口の悩みがあれば、年齢にかかわらず、勇気を出して相談の一歩を踏み出しましょう。歯の健康は心身の健康や人間関係にも影響すると考えています。僕が経験したインプラント治療の最高齢は80代半ばの方で「入れ歯だと噛み切れない、食事が楽しくない」という悩みから決断され、治療させていただきました。僕から治療内容を指定することはなく、患者さんのご希望をお聞きして、ご希望に合う治療を提供します。また地域の特性から、在宅歯科診療も必要と感じ今後実施していきたいと考えていますので、安心してご相談いただきたいと思います。