鈴木 秀典 所長の独自取材記事
サンスター財団附属千里歯科診療所
(豊中市/千里中央駅)
最終更新日:2025/04/07

北大阪急行電鉄・千里中央駅から徒歩5分に位置する「サンスター歯科診療所」。院内に足を踏み入れると、清潔感のある落ち着いた空間が広がる。オーラルケアメーカーのグループ傘下の歯科医院として、研究開発と臨床現場をつなぐ役割を担う同クリニック。所長の鈴木秀典先生は「メインテナンス重視型の診療」と「研究も行う臨床機関」という2つのコンセプトを掲げ、高度な専門性を持つ歯科医師と歯科衛生士のチーム体制で多くの患者を迎える。医科歯科連携の実践に注目し、歯周病と糖尿病の関連性研究なども行う。口腔から全身の健康へとアプローチする考えも重視している。初診は3ヵ月待ちという背景には、患者の生涯にわたる健康を見据えた診療姿勢が関係していそうだ。地域医療における役割やこれからの展望について鈴木所長に話を聞いた。
(取材日2025年2月27日)
予防を重視した診療方針
クリニックの診療方針や理念について教えてください。

当クリニックには2つの大きなコンセプトがあります。1つ目は「メインテナンス重視型」であること。2つ目は「研究も行う臨床機関」であることです。メインテナンス重視型というと予防だけのイメージがありますが、メインテナンスで管理できる口腔環境に仕上げるには、高度な医療技術が必要です。当クリニックはオーラルケア企業の診療所であることから、研究機関の役割も担い、特に歯周病と糖尿病の関連性については早くから着目してきました。臨床データを蓄積して新しい知見の提供をめざすことも、公益的な使命だと考えています。当クリニックではプライバシーマークを取得し、研究目的であっても患者さんの個人情報を大切に扱っていますのでご安心ください。
どのような患者層が多いですか?
お子さまからご高齢の方まで幅広い年齢層の患者さんにお越しいただいています。現在、初診の患者さんは3ヵ月待ちという状況で、毎日多くの患者さんを診療しています。企業の運営という安心感から選んでくださる方も多いのではないでしょうか。特に多いのは、他院で「抜歯が必要」と言われた患者さんが来院されるケースですね。患者さんの全身状態を考えた上で、状況によっては抜歯せざるを得ないこともありますが、「管理しやすい口腔環境をつくりましょう」という観点から患者さんには説明し、残せる歯はきちんと残して管理していく方針を取っています。
診療において特にこだわっている点は?

メインテナンス重視型の診療所として、多くの患者さんがメインテナンスを受けています。これは全診療の約3分の1を占めています。歯科は病気でない方も通える診療科です。例えばおなかも痛くないし熱もないのに内科に行く人はいませんが、歯科は「痛いところはないけれど診てほしい」という予防の観点で健康な方にも開かれています。初診時には時間をかけた問診を行い、全身の健康状態、服用中の薬、通院中の医療機関など細かく確認します。患者さんの中には治療に関係ないと思って問診表に書かない方もいらっしゃいますが、歯と全身の健康状態は密接につながっていることを理解いただき、聞き取りを丁寧に行っているのです。
医科歯科連携と専門力を生かしたチーム医療
医科歯科連携においてどのような取り組みをしていますか?

歯周病と糖尿病の関連性については、早くから着目してきました。医科歯科連携が大事だと叫び続けても、社会の中での認識が追いついていない状況があったと思います。しかし近年状況が大きく変わってきました。ようやく内科の先生方を中心に「歯科と連携しないと改善をめざせない病気がある」という認識が広がってきました。例えば糖尿病患者さんが歯科にも通院する重要性が内科の医師からも伝えられるようになってきたのです。当クリニックでは、患者さんが通院している医療機関を確認し、診療情報を共有するようにしています。近隣の内科クリニックには啓発用パンフレットを提供するなど「迷ったらサンスター歯科診療所に相談してください」と言ってもらえるような信頼関係を構築し、地域のかかりつけ歯科クリニックになることをめざしています。
専門性の高いスタッフが集まり、チーム医療を実施しておられますね。
当クリニックには8人の歯科医師がいます。私自身は補綴治療を専門に行いますが、小児歯科や歯周病など各分野のスペシャリストがそろっています。「マルチタレントの60点よりも専門性の高い100点の仕事」を大切にしています。それぞれの専門分野で卓越した技術を持つ歯科医師が集まることで、クリニック全体としての診療の質が高まると考えているからです。歯科衛生士も多数在籍しており、企業の看板を背負っているという自信と誇りを持って働いてくれていますね。歯科衛生士の中には、患者さんの糖尿病セルフケアの支援に関する知識を習得したスタッフもいます。食事や生活習慣病、健康維持などに関する話題も、患者さんとのコミュニケーションに役立てています。
研究機関としてのクリニックの役割について教えてください。

企業の診療所として、治療を行うだけではなく、研究機関としての役割も担っています。患者さんの同意のもと、口腔内の状態や全身の健康データを収集・分析し、新たな知見を見出す取り組みを行っています。研究データは、社会の公器としての役割も意識しています。例えば、歯周病と糖尿病の関連性についての研究は、当クリニックで長期的に行ってきた取り組みの一つです。
「街の健康ステーション」をめざして
これまでの診療経験の中で特に印象に残っている出来事はありますか?

これまでの診療経験の中で特に印象に残っているのは、歯科治療を通じて患者さんの全身の健康に目を向けるきっかけを提供できたことです。例えば、歯周病の治療が思うように進まない場合、背景に糖尿病などの全身疾患が関係していることもあります。当クリニックでは、初診時の問診で全身の健康状態や服薬歴などを丁寧に確認し、必要に応じて他の医療機関と連携を図る体制を整えています。患者さんから「歯科に来て健康意識が変わった」と言っていただけることもあり、歯科が地域の健康を支える入り口になる可能性を感じる瞬間です。
今後クリニックとして挑戦したいことをお聞かせください。
今後の目標は、地域の医科歯科連携をさらに強化し、「街の健康ステーション」としての役割を果たすことです。近隣の内科クリニックとの連携を深め、「かかりつけ歯科クリニックがない場合はサンスターに相談してください」と言っていただけるような信頼関係を築いていきたいと考えています。また、メインテナンスの拡充も課題です。現在、多くの患者さんがメインテナンスを受けていますが、これをさらに拡大していきたいと考えています。理想としては、美容室やエステサロンに通うような感覚でクリニックにも来ていただけるような文化をつくっていきたいですね。さらに、口腔内の情報と全身の健康情報を連携させることで、より効果的な健康管理ができると考えています。例えば内科の医師が糖尿病の患者さんの食事指導を行う際、歯科の情報があれば「何が噛めるか」を考慮した有用性のある指導ができるでしょう。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

特に30代~40代の子育て世代の方々へ。お子さんの歯の健康には非常に熱心ですが、ぜひご自身の歯の健康にも同じように目を向けていただきたいと思います。当クリニックには「ファミリールーム」という親子や夫婦で同時に治療を受けられる診療室があります。60代、70代になって「やっと自分の時間ができたから」という頃には、すでに多くの問題が生じていることが少なくありません。歯周病は20歳前後で発症し、徐々に進行していきます。長期的な視点で定期メインテナンスを受けて、ご自身の口腔内を健康に保ちましょう。